先日、草津白根山において噴火が発生。一名の犠牲者、それに重傷者一名を含む複数の怪我人が出る痛ましい災害となりました。2018年1月25日現在でも火山はまだ噴火活動中であり、引き続き警戒が必要な事態となっております。

草津白根山、水蒸気噴火の可能性 今後も噴火の恐れ:朝日新聞デジタル

さて、この噴火のニュースを見て、数年前、同じように火山が噴火したことを思い出したもいらっしゃるのではないでしょうか。それは2014年、中部地方の高峰、御嶽山で発生し、多数の犠牲者を出した、「御嶽山噴火」。


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非常に険しい場所に存在している御嶽山


2014年の噴火が起きた御嶽山は、長野県と岐阜県の県境、飛騨山脈の延長線上に位置しており、その標高は3,067mの高峰。



その山岳は険しく、木曽御岳山頂ほか、三岳黒沢字の石室、御岳山山頂、覚明堂、行場小屋、金剛堂、二ノ池小屋、湯川温泉といった登山ルートにあるところが、郵便配達が不可能な地域と定められている「交通困難地」に指定されています。
交通困難値は全国各所にあるので、詳細は以下を。

■参考:日本の秘境とも言える場所「交通困難地」 - 空気を読まない中杜カズサ

それ故に景観は絶景であり、夏場は人気の登山地となっておりました。

しかし、この山は活火山であり、1979年に規模の大きい噴火が発生して以降、数年おきに小規模噴火や微動など、火山活動がありました。

■参考:気象庁 | 御嶽山 有史以降の火山活動


2014年9月27日、御嶽山噴火


そして2014年9月27日の11時52分、突如噴火が発生。
前述の通りそれまでも断続的な火山活動はありましたが、この時の噴火警戒レベルは予報レベルの1。それ故に登山客も多く、火口近くにも登山客はいたほどです。

しかし、いきなりの水蒸気爆発により、その後間もなく火砕流が発生。以下はそこに居合せ、生還した登山客が撮影した映像。噴火直後から非常に多くの注目が集まりました。

その動画も含めた、その後のBBCの映像。


動画の通り、一気に火砕流が押し寄せ、噴石、そして火山灰が降り注ぎます。それら、特に降り注ぐ噴石を避けるために緊急下山した人のほか、山小屋などに避難して取り残された人(重傷者含む)が出ます。
その後消防隊や警察の救助活動に加え、自衛隊が災害派遣要請に基づき救助派遣。東京消防庁など他府県からも救助支援が開始され、多くの人数を動員しての救助活動となります。
しかし、前述のように交通の難所であることや、まだ噴火の兆候があったことなどから、救助活動は困難を極めることになります。

そして10月になっても、1000人体制での捜索活動が続きますが、このあたりは冬山になるのも早く、10月15日には初冠雪。そして10月16日、これ以上の捜索は二次災害の恐れがあるとして、捜索打ち切りとなります。

この時点までに判明した死者の人数は57名(のち一名増えて58名)、行方不明者は6名(のち発見で5名に)、負傷者は重傷者29名、軽症40名。戦後最悪の火山災害の犠牲者となりました。

【第40報】御嶽山の火山活動に係る被害状況等について(pdf)


被害拡大の要因


何故、これだけの犠牲者を出してしまったかというのは、様々な要因が挙げられています。
まず噴火が非常に急であったこと。それまで火山警戒レベルは1であり、登山シーズンもあって登山も普通に行われていたことから、多数の人が巻き込まれることとなってしまいました。火山警戒レベルについては、後に上げなかったのは適切だったのかと指摘されることになります。
また、犠牲要因の多くは噴火による噴石によるものでしたが、それを避けることの出来る施設(山小屋やシェルターなど)が不足していたことも挙げられています。

しかしもうひとつ、「噴火時の撮影による逃げ遅れ」というものも指摘されています。つまり、災害時の撮影をするために、逃げ遅れて噴石の直撃を負ってしまったというもの。これは東日本大震災の津波でも指摘されていましたし、緊急時の撮影の危険性が改めて顕在化することとなりました。

■(archive)御嶽山噴火:頭部や首に噴石、即死20人…検視の医師 - 毎日新聞

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様々な被害


このように、非常に多数の犠牲者を出す痛ましい災害となった御嶽山噴火ですが、被害は人的なものだけで留まりません。
まず、火山灰による影響が大きく、道路、交通機関への影響、それに近隣の農場灰が降りそそいだことによる被害があります。
そして、噴火直後から入山規制が行われ、観光など周辺の経済にも影響を及ぼすことになります。

ちなみに、ネット上で「民主党政権時に行われた事業仕分けで御嶽山の観測強化の対処から外されたことにより被害が拡大した」との情報が流れましたが、その事実はなくデマであったのですが、政治家の拡散もあり広まることになりました(後に訂正される)。

■参考:御嶽山被害拡大は「火山観測」仕分けた民主党のせい? 早とちりで「仕分け人」勝間氏がとばっちり : J-CASTニュース
■参考:片山さつき氏が陳謝「事実誤認に基づく発信」 御嶽山の常時監視「事業仕分けで外れた」としたツイートに【UPDATE】


2015年の捜索再開と終了、そしてその後


2015年6月、一旦停止していた捜索が再開され、まず調査隊が火山の状況を確認。そして噴火直後以来レベル3に引き上げられ、入山規制状態となっていた噴火警戒レベルを2に引き下げ、一部の入山規制が解除されました(火口周辺はまだ自規制続行)。
その後7月には9ヶ月半ぶりに捜索再開。そして行方不明となっていた人のうち、1人の遺体を収容。しかし8月、行方不明者5名を残したまま、すべての捜索活動が終了となりました。



以下は、2016年の噴火から2年が経った時に報じられた、御嶽山の現状。
噴火から2年 御嶽山はいま|けさのクローズアップ|NHKニュース おはよう日本


2017年には犠牲者5人の遺族が、国と長野県に対して総額1億5千万円の損害賠償を求める訴えを起こしました(その後負傷者2名も原告団に加わる)。
御嶽山噴火災害で遺族が国と長野県を提訴 「国は警戒レベル上げず」「県は地震計の故障を放置」 - 産経ニュース


そして噴火から三年目になる2017年9月26日にも、慰霊祭が行われました。
しかし、行方不明の5人はいまだ見つからないままです。遺族らの会では、ドローンで不明者の捜索を行い捜査も行われたとのこと。
御嶽山噴火3年:悲しみ今も 遺族ら慰霊祭 - 毎日新聞
御嶽山噴火3年:「ドローン」で不明者の捜索 - 毎日新聞


現在の御嶽山


その後、2017年8月に、噴火警戒レベルは2から1に引き下げられました。ただ、自治体毎に立ち入り制限が行われています(おおむね火口から約1km程度)。
また、噴火直後の避難先としてニュース映像にも度々出て来た山小屋は、山頂のものは取り壊してシェルターに建替える工事が進んでいるようです。

また、見た目では先の地図を航空写真にして頂けるとわかるように、噴火による火山灰の灰色も残り、噴火当時の爪痕を残しています。
ですが、3年が経ちあちこちの復旧も進んでいるようで、夏場はロープウェイも動作し、立入禁止区域以外では登山も可能となっています。
以下、実際に噴火後の御嶽山を登山した方の動画。



現在の火山活動の公的な情報は以下の通り。

火山活動の状況


かつての噴火災害からの教訓を


このような噴火が起こった3年半後の2018年、今度は草津白根山で同じように水蒸気噴火が起こり、犠牲となる方が出てしまいました。
火山の動きというのは突然で、且つ非常に被害が大きくなるものです。そしてこの日本において、何時でも起こり得るものです。そのために、これらの教訓を生かし、噴火という巨大な自然現象の前でも、少しでも人的被害を食い止められるような蓄積が重要でしょう。

またこの御嶽山も、そして草津白根山も、今後も経済、観光面での被害が残る可能性があるので、観光的支援なども継続的な注目も必要となるでしょう。