2017年現在、秋葉原には数多くのショップがあり、その中にはゲームを販売するショップや同人誌を販売するショップも複数存在します。ゲームソフトならソフマップなど、同人誌取扱店ならメロンブックス、とらのあな、コミックZIN、まんだらけなど。
しかし、2000年代にそれらに加えて、或いはそれら以前より秋葉原で有名なゲーム&同人誌取扱いのショップが存在していました。
そのショップの名前は「メッセサンオー」。
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1980年代から存在した秋葉原のショップ


「メッセサンオー」は秋葉原の電気街に存在したショップで、前身は三桜無線という、当時(1980年代)の秋葉原ではよくある電器店でした。それが後に三桜と改称して、1980年代後半のスーパーファミコン、メガドライブPCエンジンなどがゲームの主流だった時代にはコンシューマゲームソフトやPCソフトを取り扱っていたようです。
その三桜が1990年に「メッセサンオー」と改名。当初はゲーム(コンシューマとPCゲーム)が主な取扱いでしたが、そのうち同人ゲームや同人誌、そして海外のゲーム(洋ゲー)も取り扱うようになります。

また、同社の運営する「OVERTOP」という名前のDOS/Vパーツショップもこの頃開店しました。
日本においてインターネットが普及するよりも前の時代の話となります。


珍しいゲームの取扱い


メッセサンオーがその存在感を示すようになってきたのは、1990年代の後半から(これは私の印象が強いですが)。
メッセサンオーは前述の通りゲームを取り扱っていましたが、ここが有名だったのは販売方法や取扱品がかなり特徴的だったのがあります。ゲーム業界も1990年代に入ると流通が整備され、取り扱うものが画一的になっていましたが、ここでは非常に特徴的なものの取扱いが度々ありました。
代表的なところとしては、PCエンジン最後のソフトと言われる「デッド・オブ・ザ・ブレイン 1&2」(18禁)の限定販売など(これはソフマップでも販売されていました)。そのせいかこのソフトは現在ではプレミアがついています。
また、2007年にはすでに新規リリースが途絶えていたドリームキャストのプレミアソフトとなっていた『ボーダーダウン』が再販売されたことも話題となりました。ちなみに自分はその時に別ブログで記事を書いて、購入しました。
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名作STG『ボーダーダウン』、サントラと一緒にまさかの店舗限定再版! | ゲームミュージックなブログ

飛び抜けたところでは、ゲームハードの箱だけをティッシュ箱にと称して売っていて、当時ネタにされていました。
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(サムシング吉松『セガのゲームは世界いちぃぃぃ!』P48より)

個人的には、あまり流通していなかったり限定販売だったゲームのサウンドトラックを販売していたので(セガ、CAVEなど)それでかなりお世話になりました。また、本店の2階では当時では珍しかったメーカーのグッズ取扱いのコーナーが設けられ、テレカなどを販売していました。
あとここには名物店長がいた時期があり、当時のゲーム雑誌などで連載を持っていたりしました。

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非常に特徴的な特典


またゲームを買うとついてくる特典が特徴的だったのも大きいです。
この頃の秋葉原では新作ゲームを買うと「特典」として製品とは別にグッズがついてくることがよくありました(これは諸般の事情で大きな値引きが出来なかったのもあるかもしれません)。それの多くは当時まだかなり利用されていたテレホンカードやポスターといったものでしたが、中にはかなり特徴的なグッズが制作される場合もありました。それが特に目立っていたのが、ソフマップとこのメッセサンオー。
特に顕著だったのは2000年前後のPC美少女ゲーム(エロゲー)の特典。このあたりでLeaf,KeyといったブランドをはじめとしてPC美少女ゲームが流行したのは以前も書きました。

■参考:2000年前後、Leaf・Keyのゲームがインターネットに及ぼした影響 : Timesteps

そこでそれらを扱うショップも増えたのですが、特に目立っていたのがここの特典。対抗するソフマップと並んでその商品群はかなりの存在感を示していました。
代表的なところでは、『Kanon』特典の超巨大ポスターや『まじかるアンティーク』特典の等身大ポップなど。むしろあれで採算とれてたのかしらと思うくらいのものがかなり。
ちなみに自分の持っていたものはなかったかと昔の写真を探したところ、こんなのが。
@kanonCL02
これはたしかドリームキャスト版『Kanon』発売時の巨大目覚まし時計。ちなみに高さ30cmくらい。

これらを求めて、木曜日(コンシューマゲーム発売日)、もしくは金曜日(PC美少女ゲー発売日)に朝から、有名作・人気作の場合には夜から行列が出来るというのが恒例になっていました。


男性向け同人誌に力を入れていた


そしてゲームのほかに特徴的だったのは同人誌の取扱い。1990年代も後半になると、1990年代前半の有害コミック運動の余波もそれなりに治まってきたせいか、同人誌を取り扱う店舗も増えてきました。たとえば男性向けでは1994年に秋葉原に誕生し、最初同人誌の古書店だった「コミックとらのあな」が新刊同人誌の委託を扱うようになるなど。

■参考:1990年代の有害コミック運動はそれからどうなったのか : Timesteps

そしてメッセサンオーも1990年代半ばから同人ソフトや同人誌を取り扱うようになるのですが、その当時はそういった新刊を扱うショップが少なかったのもあり、かなり目立つ存在でした。
その存在がかなり強く出て来たのか、前述のLeaf・Keyブームが同人誌でも到来していた2000年前後。特に、現在ではFateシリーズなどで有名なTYPE-MOONが同人サークルだった時代に同人ソフト『月姫』を出したあたり。
ここではこのソフトをかなりプッシュしていて、独自の同人誌も出していました。トップ画像の『月姫草紙』はメッセサンオーが編集して出した同人誌で、当時としてはショップが直接出すものは珍しかったように記憶しています。

あと、ネットがまだあまり普及していない90年代からインターネットを利用して自社サイトより発信をしており、当時流行していたWebコミックなどを掲載していました。


中古ゲーム販売店トレーダー設立


ちなみにメッセサンオーでは1990年代には中古ソフトの買取、販売も行っていましたが、1990年代後半に中古ソフト廃止運動や中古ソフト裁判が起こります。その影響で1999年頃、中古ソフトの販売を中止します。
しかしそことjは別に、「TRADER(トレーダー)」という中古専門のショップを作り、そこで中古の買取、販売を行います。
そこでは最新のものからレトロゲーまでの高価買取り価格のものを記したチラシなどを店頭で配布していました(これは今でもありますが)。

■参考:中古ゲームソフト裁判はそれからどうなったのか(前編・裁判開始まで) : Timesteps
■参考:中古ゲームソフト裁判はそれからどうなったのか(後編・最高裁判決とその後) : Timesteps

ただ、DOS/VパーツショップのOVERTOPは、2005年2月に閉店してしまいました。

メッセサンオー、「OVERTOP」を2月末に閉店


顧客情報漏洩事件と店舗の閉鎖


2000年代後半になると、ネットを含めて対立するゲーム販売業の増加とゲーム市場の頭打ち、さらに男性向け新刊同人誌、同人ソフト取扱店も急増したことにより、新作ゲーム販売店としてかつてのような存在感はなくなってしまいます。
そして2010年4月1日、同社PC通販における住所、氏名、メールアドレスや電話番号などの顧客情報が検索エンジンから閲覧可能になってしまうという情報漏洩事件が発生してしまいます。

メッセサンオー、PCゲーム通販の顧客情報がネットで流出 -INTERNET Watch Watch

その後、漏洩の影響があったかは不明ですが、同人誌店舗と海外洋ゲー取扱の店舗は2010年5月に閉鎖となります。

[拡大画像]5月30日閉店を告知したメッセサンオー同人誌館の様子 - AKIBA PC Hotline!


トレーダーとの合併により名称消滅


そして2012年1月16日に、かつて中古取扱部門を分離した株式会社トレーダーを存続会社として合併することになります。
その後もメッセサンオーという名前での店舗は運営されていましたが、2012年1月14日をもって閉店。

メッセサンオー:アキバの老舗ゲーム店が閉店 22年の歴史に幕 ゲーム市場冷え込みで - MANTANWEB(まんたんウェブ)

同店舗はトレーダーの一店舗として営業していましたが、2013年ごろにもとあった場所での運営は終了。かつて本店のあったところは、現在はPCショップになっています。

ただトレーダーとしては、現在でも秋葉原に数店舗、新宿で一店舗を展開し、主に中古ゲームソフト販売の店として営業が続いています。

トレーダー: 秋葉原・新宿のゲーム、ブルーレイ、DVD ショップ - 買取と販売


秋葉原もだいぶ変わったと改めて感じる


今回、このメッセサンオー以外にも過去15年くらいの秋葉原についていろいろ調べたのですが、やはり相当変わったことを実感します。PCパーツ販売の店舗はなくなったり、メイド喫茶やそのジャンルの店が増えたり減ったり。本当に変化が激しい街だなと感じます。

また10年後に見ると、秋葉原の文化も光景もきっとまた変わっているのでしょう。