先日、HDDの中身を整理していたら、なんか懐かしい拡張子のファイルを見つけました。それは「.rm」というもの。なんかのインターネットラジオのファイルでした。

現在ではほとんど見かけることがないため、ここ数年でPCを始めた人では、見たことのない方もいらっしゃるかもしれません。しかしこれは2000年以前からインターネットをしている人なら、ある程度の人はあの青いアイコンを覚えていらっしゃると思います。というわけで、今日はそのお話と、それは今どうなったかについて。
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Screenshot0026 / Piutus



インターネット初期に存在感を発揮したプレイヤー


この「.rm」というのは、コーデックの拡張子です。したがってこれは音声、動画ファイルで使われていました。開発したのはアメリカのリアルネットワークス社。その歴史は古く、Windows95発売とほぼ同時期の1995年4月に登場しており、私がインターネットを始めた時には既に存在していました。そして主にRealPlayerというもので再生出来るRealVideo・RealAudioに使われました。

当時(1990年代後半)のPCのスペック、それにネットの環境では今と比べてかなり低いものでした。ちなみに私が学生時代に親から借金して買ったNEC-98NXのパソコンは、ノーマルペンティアムで、HDDの容量も1Gちょっと程度でした。それでも当時は「わあ、ついにギガなんて単位が出たんだ」って言われていましたが。で、通信のほうもダイヤルアップの56Kbpsが当たり前で、ISDNの64Kでも速いと言われていたくらいです。で、ここからテレホーダイ時代の思い出を語りたくなるところですがそれは我慢して、ともかくハードのスペック的にも通信速度的にも動画をそう簡単に見られる環境ではなかったのですよね。そんな時代からRealPlayerはありました(というか、たぶんWindowsで主に使われていた動画プレイヤーは、他にはWindowsディフォルトのMedia Player、macのQuicktime playerくらいしかなかった気もしますが。

このrm形式が普及したのは、その特性にあります。前述のようにマシンスペックも低く、通信速度も遅い人が多かったのですが、これはかなり低いビットレートでもうまく再生されるように作られていたのです。それ故に初期はかなり使われていた形式であり、とりわけストリーミングではこの形式のみというところもありました。故にRealPlayerもWindows Media Playerと共にWindowsユーザーではPCの中にある人が多かったように思えます。


RealPlayerの酷評


しかし、このプレイヤーに対するインターネットユーザーの評判はインターネット初期はともかく、中期にさしかかるころには正直あまりよいものではありませんでした。
理由はいくつかあります。まず、このプレイヤーには無料版と有料版があり、やはり殆どの人は見られればいい無料版を選んでいたのですが、それ故に無料版をダウンロードできるところが非常にわかりにくくなっていたこと。で、油断しているとすぐに有償版の期間制限トライアル版としてインストールされてしまうことです。それ故に、どうやったら無償版をうまくインストールできるかという解説まで生まれました。
さらに、挙動が重いことに加え、時折妙な挙動をすることから、これがスパイウェアでは?という噂が流れました。

このへんは、配布元の経営状態と関係があるとも噂されましたが、正確なところは不明です。
しかし、時が経つと他にもフロントエンドの動画プレイヤーが生まれてきたこともあり、PCに詳しい人はなるべくこのプレイヤーの使用を避けるようになってゆきます(自分はわりと長い間真空波動研というのを使ってました)。  ちなみに一時期(Win98時代)、Windows Media Playerでもrmファイルが再生出来るようになっていましたが、後に解消され、WMP上での再生は出来なくなったようです。

■参考:RealMedia - Wikipedia


Quicktime Player


少しだけ話が逸れますが、先にちょっと触れたAppleのQuicktime Player及び、そこで再生可能な動画形式のmovファイルの話。これもインターネットのわりと初期から存在した形式です。
ただ、Macではともかく、Windowsでは正直あまり使われる形式ではありませんでした。それは当初からQuicktime Playerをインストールすると、Windowsでの関連づけやスタートメニューでいろいろ起こるためあまり好まれていなかったのですね(ちなみに似た問題は今でもあります)。
しかし、近年iTuneなどApple製品が大幅に普及したことにより、それで使用されているQuicktime Playerもよく目にするようになりました。


RealPlayerの衰退


2000年あたりになると、PCのスペック及び通信環境が大幅に向上してゆき、低ビットレートではなくてもそれなりの容量のファイルを配信できるようになり、rmの利点が失われてゆきます。さらに競争相手となる各種コーデックが発達してきました。とりわけMPEGやWindows Media Audio(wma)が急速に普及してきたことにより、だんだんとrm形式のファイルは見かけなくなりました。そしてDivXが普及するあたりでは、ほとんど見かけなくなりましたね。それでもストリーミング形式としては2000年代中頃までわりと見かけていたのですが、現在Windows Media Playerが対応していない現在ではこちらもほとんど見ることがなくなっています。


RealDVDの販売と訴訟


その後、Real Playerの開発元であるリアルネットワークスは、動画プレイヤー以外にもいろいろと乗り出します。そして2004年にはRealPlayer Music Store という音楽配信サービスを開始します。しかし先発してスタートしていたiTunes Music Store(現iTunes Store)が隆盛を極めているのに比べてあまり存在感はないように感じます。

米リアル、社運を賭けた新プログラムと音楽ダウンロードサービス発表 - CNET Japan

あと、2008年9月には、「RealDVD」を発売しました。これは著作権保護された市販DVD-Videoをハードディスクなどにコピーできるソフトウェアであり、フリーソフトではなく大手から出た事で話題となりました。

米RealNetworksがDVDコピーソフト「RealDVD」を発表へ | ネット | マイコミジャーナル

しかし直後に米国の映画業界団体MPAAから訴えられ、そこで当初は対立姿勢を見せたものの、最終的には米地方裁判所が差し止め命令を下し、それを受け入れました。

リアルネットワークス、DVDコピーソフト「RealDVD」の販売差し止めを受け入れ - CNET Japan
■参考:リアルネットワークス - Wikipedia


リアル対マイクロソフトの裁判


ちなみに前述のRealPlayer Music Storeのリリースよりちょっと前の2003年12月、同社はマイクロソフトに訴訟を起こしています。それは、「要不要を問わずWindowsユーザーにMicrosoftのメディアプレイヤーを強制的に提供し、独占的立場を悪用してPCメーカーによる競合メディアプレイヤーのインストールを制限した」という理由によります。それで10億ドルの損害賠償提起がなされますが、最終的には音楽戦略強化を目指す包括提携をすることで和解。リアル側にはマイクロソフトから4億6000万ドルの現金を支払いと、3億100万ドルの現金を投入しての楽曲、ゲーム事業をサポートがなされました。

■参考:リアルとマイクロソフト、独禁法裁判で和解 - CNET Japan


今も存在するRealPlayer


そして2014年現在でも、RealPlayerは存在します。

RealPlayer (RealPlayer Cloud) 公式サイト

以下は2010年のリアルプレイヤーのチュートリアル動画。


最近はクラウドサービスにも注力しているようです。
ちなみに無料版はある場所がわかりやすくなっていますので。

日本のインターネットの歴史がもう20年近くになろうとしている今、消えてったものも多い中、時々は思い出そうかなと。