「ヤフオク」といえばYahoo!オークションのこと。これはすでにネットオークションの代名詞ともなっており、ネットにそれほど詳しくない人で知るものとなっています。

さて、ヤフオクは現在、出品量10円や、落札時に5%のお金がかかりますし、個人認証も必要ですが、以前出来た当時はこれらはなく、無料だったことはご存じでしょうか。それは途中から有料となったわけですが、その時には利用者の間でちょっとした騒ぎがありました。今日はその出来事を中心に、ヤフオクの歴史を辿ってみようと思います。
ヤフオク!ドーム
ヤフオク!ドーム / keyaki



カオスだったヤフオク無料時代


ヤフオクのサービスがYahoo!の中で始まったのは、1999年9月28日。この頃は一切の出品にも落札にも手数料がかからず、本人確認もいりませんでした。さらにユーザーと落札者の連絡方法は殆どの場合メールアドレスでしたし、配送手段でも今みたいな匿名サービスなどはありませんでした。なんいうか、本当に「取引をする場所を提供するだけ」という、それまでも少しは存在した取引掲示板をシステム化したようなものだったわけなんですよね。

ちなみに当時は出来たばかりというのもあり、なかなか今では見られないカオスなものがありました。欲しいものを請求する「逆オークション」なんてのはよく行われていましたし、今で言うところの人力検索(Q&A)のように使う人もいました。それにネタ出品も見受けられましたね。中でも「ザク売ります」は有名です。

■参考:Yahoo!オークション - ザク売ります(傷あり)

しかし、当時からオークション詐欺みたいなものはあり、「あまり高価なものは買うな」「現物写真のないものは買うな」ということはよく言われていました(故に私はここに出品するため、初のデジカメを買いました。マルチメディアカードとかいう今では見なくなった企画のメモリだったような。おまけに吸い出すのがシリアルポートに繋げてとか面倒でね)。

また、本当に送ってくるのかどうかわかりませんが、かなり違法の匂いのするものも出品されていたりしました。そんなカオスなところもあったのですが、当時はなかなか手に入らなかったものが安く出品されていたりして、わりと楽しかったですね。私もこの時に手に入れたサントラやグッズなどがわりとあったりします。

そして次第にヤフオクの便利さに評判も広まり、ユーザーが増加してゆきました。ただ、当時はサーバが激重になることもよくあり、マダテレホーダイもあったころですから、終了時間が11時?12時だったりすると、繋がらなくてそのまま終了しているといったパターンもありました(それを利用してスナイプしていた人もいるし)。


1回目の有料化


しかし2001年5月28日、Yahoo!はそれまで無料だったヤフオクの有料化に踏み切ります。かかる費用は月額280円。これはこの頃になるとだんたん顕在化してきた詐欺などの犯罪行為を防止するための本人確認ということでした。

Yahoo!オークション、有料化は5月28日朝から

ちなみにこの時にその決済に必要だったのがクレジットカードか指定された2つの銀行(ジャパンネット銀行、富士銀行エムタウン支店)だったのですが、この時ジャパンネット銀行に加入した人が増えました(口座維持手数料開始まで)。

で、この時のいきなりの有料化に、ヤフオクをやめてどこかほかのオークションサービスに移ろう、という声が上がり始めました。その候補としてアメリカでは最大手のネットオークションeBayや、ビッダーズ、エキサイトオークションなどがありましたが、個人確認の需要もあったし金額もそれほどではなかったため、有料化スタート直後は出品数を減らしたものの、その後は徐々に復活してゆきました。


出品料&落札システム利用料導入と出品者の移転騒ぎ


そして2002年3月31日、外資系らしい決断の早さででイーベイジャパンが日本から撤退します。

イーベイジャパン、3月末をもって日本での営業活動を終了

その発表の直後、Yahoo!はヤフオクを2002年4月15日より前述の月額に加えて、ひとつの出品あたり10円の出品料と、落札時に落札金額の3%を落札システム利用料として課金するという発表がなされました。

「Yahoo!オークション」にシステム利用料を導入?出品者への従量課金を開始

イーベイ撤退後のいきなり出品ごとに課金するという行為に対して、それまでのユーザーで怒る人が続出しました。そして、ヤフオクの出品をやめて、ほかに移ろうという動きまで起き始めます。

この時候補になったのは、各種プロバイダのポータルサイトと連動していた「ビッダーズ」、それに無料の「WANTEDオークション」「ぐるぐるオークション」等でした。楽天オークションがないのは記憶が曖昧ですが、当時業者向けだけだったからかな?

※2016年1月9日追記
WANTED AUCTION ! オークションは2015年11月15までサービスを続けていましたが、突如の障害で復旧不可能につき終了しました。

そして出品料開始後、これらに移行する出品者が現れ、またこの時点で出品を止めてしまった人も出てきたために、出品の総数はかなり減少しました(約420万件から6月には約230万件と半減したとのこと)。


しかしその後もトップを独走するヤフオク


しかし、しばらく経つとヤフオクに復帰する人が増え、結局ヤフオクトップの座は代わりませんでした(多少移ったブログと平行してやっている人がいたくらいかな)。

結局ヤフオクで収まってしまったのには理由があります。まず、ネットオークションが一般的となり、ヤフオクがもう巨大な市場となってしまっていたこと。このネットオークションというのは、出品数が多いところに落札希望者が集まり、また落札希望者が多いところのほうがオークションの性質上高く売れる可能性が高いので出品者が集まるものとなっています。故に出品者が移っても、それがよほど大量でない限りは落札者も留まるので、移動が起きないのですね。

さらに移動出来たとしても大きな問題があります。それはこの時点ですでにかなりの利用者がいたヤフオクのアクセス負荷を担えることが出来なかったのですよね(実際ヤフオクの課金理由の一つは、それまでに費やしてきたサーバのもとをとるためというのも噂されましたし)。故に、かなり広まってしまったネットオークションを出来るのは、すでにヤフオクしかなかったということでしょうね。

その後、ヤフオクは2006年5月に落札時の徴収金額を5%に上げましたが、その時点ではもう移転の波はそれほど大きくなりませんでした。

ヤフー、オークション手数料5%に値上げ、システム面の増強図る | ネット | マイコミジャーナル


現在のネットオークション


現在ですが、やはりヤフオクのトップは代わりませんが、システムなどいろいろなものが実装されたりしています(好評のもの、不評のもの両方ありますが)。メアド取引はもう過去の遺物になってしまいましたね。
ヤフオクの他にはビッダーズや楽天オークション、それに携帯における各キャリアのオークションなんてのがありますが、やはりヤフオクのシェアがダントツです(※2016/1/9追記:今ならケータイスマホ向けのメルカリなどの特化型もありますけど)。
さらにかつて敵だったイーベイとは、提携を組むことになりました。

イチローグッズを買うもよし、MANGAを売るもよし--ヤフオクとeBayが相互乗り入れ:ニュース - CNET Japan


なんかヤフオクの独占も、そしてネットオークションの市場も固まってしまった感じで今の需要があるし、よほどこの存在を脅かすようなサービスが出てこない限りは、このまま安定して続くのかなあと思います。ただ、個人的には今までの10年の間にあらゆるものが出尽くしてしまって、どんな珍しいものでも相場が固まってしまった感じがあり、そのへんのおもしろみがなくなっちゃったかなあと思います。サントラも価値があるのは本当に専門店のショーケースで売っているような値段でしか出品してないし(でもって回転寿司←落札ナシで回り続ける出品物の通称)。なのでここ数年は全然やってません。

たしかに安全、安心に使えるのが一番いいですが、あのカオスな時代を知っている自分は、そういうのも懐かしいと思ってしまうわけです。


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参考

インターネットオークション - Wikipedia
Yahoo!オークション - Wikipedia
「オークファン」