何故か今でも「ジンバブエ」で検索する人がよくいらっしゃるこのブログです。

以前書いたの。
ジンバブエはあれからどうなったのか : Timesteps
ジンバブエのハイパーインフレで、とうとう「垓」という単位が見えた : Timesteps
ジンバブエのハイパーインフレに変化の兆し? : Timesteps
ジンバブエのハイパーインフレはそれから収まったのか : Timesteps
2009年初頭あたりのジンバブエの動きまとめ : Timesteps

最後にジンバブエについて前に書いたのがだいぶ前になってしまったので、改めてそれからどうなったかが気になる頃でしょう。そういうわけで、今年1月以降ジンバブエはどうなっているのか、ちょいと書いてみようと思います。
250 Million Dollars
250 Million Dollars / ZeroOne



ジンバブエドルのインフレ停止、というか流通停止


前回書いた今年1月からもインフレはどんどん進行してゆきました。それの対策として、2009年2月2日、政府は1兆ジンバブエ・ドルが新1ジンバブエ・ドルになる12桁のデノミネーションを実施しました。ちなみにその前にデノミが行われたのは約半年前の20008年8月(10桁切り捨て)。それを考えると、どれだけ急速にインフレが進行していたかがわかるでしょう。

Zimbabwe removes 12 zeros from currency - CNN.com

そうなると、このまままたインフレが続いて数字の限界に挑め! と期待されていた方には何ですが、このあたりでインフレ率が動かなくなりました。しかしこれはデノミの効果があったのではありません。
その理由は、それより数日前の1月29日にジンバブエ政府がそれまで公式には禁止されていたアメリカドルとランド(南アフリカの通貨)の国内流通を公式に認めたからです(とはいえ、それまでも事実上はそれらが使われ、ジンバブエドルは使われることはほとんどなかったようですが)。そして2月には、公務員の給与もアメリカドルとなります。

これの意味するところは、ジンバブエドルは事実上流通しなくなり、通貨としての効果を失ってしまったということなのですよね。取引もなければインフレも起こらないわけで、数字上は収束したようになったと思われます。ただ、通貨の発行というのは、その国の政府の重要な権限の一つですから、それをジンバブエは失っていると言えるでしょう。  そして、インフレ率の測定自体の意味がなくなってしまったために、その測定が行われなくなりました。

■参考:超インフレ下のジンバブエ、ドル建て物価が下落 現地通貨による測定は中止 国際ニュース : AFPBB News


ちなみに最近、ジンバブエ中央銀行の人がイグ・ノーベル賞の数学賞を受賞しました。受賞理由は『1から100兆ドルという幅広い額面の紙幣を発行することにより国民に「大きな数」を理解させた』からだそうです。まあたしかに日本でも今後量子力学などでもない限りなかなかお目にかかれなさそうな単位の漢字を目にさせてもらいましたしね。


政治の混乱は一応収束したが……


政治においては、大統領と対立する野党が大統領選挙で対立しますが弾圧され、国内が争乱状態になっていたというのを前までに書きました。しかしその収束を計るため、2009年2月11日、連立政権が樹立し野党MDC(民主変革運動)議長のモーガン・ツァンギライが首相に就任したため独裁体制にひとまず区切りがついた形となります。ただ、それまで独裁を続けたムカベ大統領はそのまま大統領の座に居座り続けました。

しかしその後、このツァンギライ首相の車にトラックが衝突、夫人が死亡するという事件が起こりました。真相は未だ不明です。

ジンバブエ首相の車にトラックが衝突、自身は軽傷も夫人が死亡 写真2枚 国際ニュース : AFPBB News
ジンバブエ首相の交通事故で独立捜査を要求、野党MDC 写真3枚 国際ニュース : AFPBB News

それでも一応、ここ半年は激しい争乱は影を潜めていたようです(ただ、相変わらず国際的な経済制裁は続いていましたが)。


また何かが起きるのか


最近のムカベ大統領の発言。
ニューヨーク(CNN) アフリカ南部ジンバブエのムガベ大統領(85)は24日、CNNのアマンプール特派員とのインタビューで、国際社会から批判が集中する同国の経済政策を擁護し、「帝国主義」に抵抗する「アフリカの英雄」を自称するなど、米国や欧州との対決姿勢をあらためてあらわにした。
白人所有の農園を強制収用して非難を浴びた土地改革をめぐっては、「白人はわれわれから土地を取り上げ、不法占拠していた。それが本来の持ち主に返されたのだ。アフリカ国家にとって画期的な改革だ」と、血気盛んな口調で語った。 08年大統領選後の混乱や、今年から連立を組んだ野党との不協和音についても一切の責任を否定し、「帝国主義者の指図で政権を手放すことはあり得ない」と強調。また「どの国でも、選挙が常に順調に行われるわけではない。わが国で順調でなかったというなら、ブッシュ(前米大統領)の1期目に何が起きたか見てみればいい」と、米国を批判した。ただ、11年に予定される次回大統領選に出馬するのかとの問いには回答を避けた。

■CNN.co.jp:ジンバブエ大統領、米欧の制裁を非難 CNNインタビュー ※リンク切れ

ある意味相変わらずなのであまり驚きませんが。

そして今、連立政権になり首相となったツァンギライ首相が、副農相の拘束に抗議して、連立解消の動きを見せています。

■ジンバブエ:連立政権危機、首相が解消示唆 テロ容疑、副農相再拘束に抗議 - 毎日jp ※リンク切れ

ここで連立が解消され、また野党と大統領側が争うことになると、また争乱状態になりかねないため、緊迫した事態となっているようです。
ちなみにこのツァンギライ首相、今年アメリカのオバマ大統領が受賞したノーベル平和賞の候補に挙がっていたということです。


ご存じの方も多いと思われますが、ジンバブエは2010年にワールドカップが行われる南アフリカ共和国の隣に位置しています。政情が不安定になればただでさえあまり治安が良くないと言われ問題視されている南アフリカでのワールドカップに、更なる悪影響を及ぼす可能性も否定できません。それに何より戦乱になれば犠牲者が出てしまうので、この問題が無事収束されることを願います。


■参考:ジンバブエ - Wikipedia
■参考:ジンバブエ・ドル - Wikipedia


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2010年のジンバブエはどうなっているのか : Timesteps