私は20年前くらいはエヴァブームの影響もあってアニメをよく見ていました。当時は深夜帯のアニメというのはほとんどなく、コナンとかファミリー向けを除けば多くはテレビ東京系で6時台にやっているものでした。

で、その時間帯、非常によく見かけるCMというのがありました。それはセガ系のCM(せがた三四郎とかね)、角川系のCM(まあアニメの権利元なことが多かったし)、そして「代々木アニメーション学院」(現在の代アニ)のCM。 

しかし2006年12月に以下のようなニュースが流れました。

ITmedia News:「代アニ」運営会社、民事再生申し立て

これは上のアニメなど代アニをよく知っていた世代の人間にとっては衝撃的な事件でした。この前後にもいろいろあったのですが、今日はそのへんについて書いてみようと思います。

※2009年3月に書いた文章に、2014年12月20日、その後のことも含め追記修正しました。
代々木駅
代々木駅 / marumeganechan



幅広い広告展開で知名度を上げた代々木アニメーション学院


まず、代アニを簡単に説明。1978年5月25日映像作家大矢敏行氏によって「代々木アニメーション学院」が設立されました。名前の通りアニメの制作者や声優などを養成を目的に作られたものでしたが、次第にゲームなど他のものも含んだマルチメディア系の学校となっていきます。
ちなみにここは専門学校のように思われがちですが、どうやら種別としては「無認可校」であり専修学校ではないとのこと(故に定期券などは学割がきかないらしいです)。

さて、ここの学園を有名にしたのは先述のようにその広報展開がかなり幅広かったから。昔はアニメの時間帯にこのCMが流れるのはもちろん、アニメ系、ゲーム系の雑誌には必ずと言っていいほど、代アニの広告が入っていました。故に、アニメ専門学校と言えば代アニというくらい、有名な存在でした。

そして、実際にこの学校に通っていた人で、プロになった業界の人というのは非常に大勢います(卒業したとは限りません。この業界全般に言えることですが、途中で仕事が出来るとそのままプロになって抜けてしまう場合も非常に多いようなので)。

■参考:代々木アニメーション学院 - Wikipedia


90年代の代々木文化


私は受験時に代々木にある代々木ゼミナールに通っていたために、代々木周辺をよく利用していました。当時の代々木駅には掲示板に一枚の白い大きな紙が毎日貼ってあり、そこに代アニ生などが落書きのようにイラストを描き込んでいくのが名物となっていました。インターネットの全く普及していなかった時代のコミュニケーション手段でしたね。
私の場合は当時ゲーセンに勉強そっちのけで行っていたのですが(おい)、代々木のゲーセンにあったコミュニケーションノートにも、やけにイラストが満載だったのが印象的でした。あと、掲示板にハガキ大のイラストが大量に貼っていたような。

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100%以上の就職率?


ただ、この当時の代アニ、評判は必ずしもよくはありませんでした。
まずここのコピーには90年代は必ずと言っていいほど高い就職率が書かれていました。そして時には100%を越えるものまで表示され、それを見た人からはどうやって計算したらそんな数字が出てくるのかと噂されたものでした。
これは噂レベルですが、どうやらひとりが複数から内定をもらったらそれを2人分として勘定したが故に100%越えを出していたという話。また、アニメやゲーム業界外の就職(アルバイト)でも就職率としてカウントしたり、はてはちょっとバイトした程度でも就職とカウントしたりと行ったことが行われていたという話です。ただ、現在ではこういった形での公表は行われてはいないようです。

紛らわしい数値を大々的に公表したことは問題があると思いますが、この業界、実質的な就職率は大半の学校は高くはないのです。そしてそれはこの手の学校ばかりを責められない面もあります。
。実際に行っていたわけではないので詳しくはわかりませんが、話を聞く限りどうも趣味系の専門学校の場合、そこに入ったことに満足してしまってプロになるための努力をしないで遊びほうけてしまう人がいるという話を聞きます。そういう努力をしない人を雇う度胸のある会社はアニメやゲーム会社に限らず存在しないでしょう。

ちなみにこの手の専門学校の実態について語ると、ネットでは必ず出てくるのが『オールナイトライブ』の『ゲーム専門学校から見た風景』ですね(ここでは詳しはく言及しませんが)。

オールナイトライブ (5) (Beam comix)

もちろん前述のようにやる気のあった人はちゃんとデビューして実績を重ねていて、プロになっている人もいますし、実際私の知っている人でも代アニ卒業できちんと仕事をしている人がいます。つまり、大切なのは学校で自分がその行動で何を得るかということで、入っただけで、黙ってて将来の仕事が保証されるようなところなんてどこにもないということですね。つか、一番大変なのはむしろプロになってからなのでしょうが。

まあ、この手の学校はその実態をちゃんと説明はしてから入学を募ってもらいたいというのはありますけど。


公正取引委員会からの排除命令


代アニはこのように、アニメ専門学校としては有名な存在となりました。そして全国各地に学校を作ってゆき、拡大して行きます。2002年頃にはアニメ学部に毎年500名ほどの入学者がいたとのこと。しかし、その代アニは2006年に大きく動きます(当時の生徒数は全国で約6000人くらいだったとのこと)。

まず、2月に笑点でおなじみの三遊亭楽太郎氏(現6代目三遊亭圓楽氏)が学園長に就任することが発表されます。もちろん実質経営というより広告的立場が強い就任だったのですが。これは伊集院光のラジオでもネタにされていたような。

楽太郎が「代アニ」学院長に就任へ

しかし、この学園長就任からわずか後、公正取引委員会から排除命令が下ります。

これは、募集要項などで「入学辞退者には学費を返還」としながらも、59万~65万円を納付させた人が辞退した場合にキャンセル料などの名目でうち22万円を返還しなかったことが景品表示法違反に当たるとされたようです。これにより、信用が低下します。


社長解任にまつわる事件


そして2006年12月、最初に触れたように、とうとう民事再生法の適用となるのですが、その民事再生法適用の数日前、いろいろな動きがあったようです。
まず、代アニの運営元、株式会社代々木ライブアニメイションにおいて、経営陣の刷新があり、それまでの経営者であった大矢敏行氏が辞任します。経営不振についての引責辞任をさせられた形のようです。

しかし、それと前後して、来年度の代アニ入学予定者に対して手紙が届けられます。それは入学金の振込先を「学校法人大矢学園」にしろというもの。これには理事長である三遊亭楽太郎氏の名前と印章が押されていたということです。しかし、代々木ライブアニメイションはこの人を退任させようとしていたところであり、寝耳に水の話。
これは、辞任が避けられなくなった大矢氏が、自分の管理する口座に金を振り込ませようとした詐欺であるという疑いがかけられました。楽太郎氏も無断で名前を使われたということで声明を発表し、この先に振り込まないようにとの警告が出されました。

livedoor ニュース - 学費振込詐欺で揺れる名門「代々木アニメ学院」


民事再生法適用


そして12月6日、負債総額22億円で代々木ライブアニメイションは民事再生手続きに入ります。
これだけの負債が出た出た理由として、競合他社の台頭による生徒獲得競争の激化(少子化の影響もあるでしょうね)、広告費の増大、それと手形の濫発なども挙がっています。ちなみに会見では、現経営陣により前社長大矢氏への非難がかなり挙がったそうです。
あと、こんなのがありました。

ネット版 アニメレポート : アニメ制作体制の変遷 その10


そして再建へ


その後2007年8月14日付けで東京地方裁判所にて民事再生計画の認可決定が出されたとのこと。
そして再建手続きに入りますが、リップルウッド・ホールディングスが再建支援を行うことになった。
あと、一時期「代アニ」に名前変えたはずなのに「代々木アニメーション学院」に戻ってますね。一応見た限りでは、通常通りに業務が行われているようです。<

※2014/12/21追記
その後2014年6月17日、代々木アニメーション学院は旅館、温泉テーマパークなどを経営する大江戸温泉物語株式会社のグループ企業となりました。
現在はそこで両者がコラボで制作したアニメCMなどが公開されています。



代々木アニメーション学院が大江戸温泉物語のグループ企業に


 

学校に入学する時は下調べをよくしてから


ここでは代アニのことについて書きましたが、こういった学校が潰れる事例は他にも起こっています。例えば英会話学校のNOVAがありますね。それと留学仲介会社「ゲートウェイ21」が破綻した問題なんてのもありました。

英会話教室のNOVAはあれからどうなったのか - Timesteps

学校は、気をつけないと授業料を払っても潰れてしまう可能性というのがあるわけです。ですのでいずれの学校でもそこに入学しようとするときには、しっかりとその状態を調べることは大切でしょう。