このようなニュースが。

2ちゃんねるがひろゆきから謎の会社「PACKET MONSTER INC.」に譲渡完了、その正体を探る - GIGAZINE

これについては以下でちょっと触れているので、そちらをご参照ください。

2ちゃんねるの海外企業譲渡のメリットは何か。そして何が変わるのか - 空気を読まない中杜カズサ

というわけなので、せっかくですから今日は過去に2ちゃんねるで起こった事件から。
2ch MONA.
2ch MONA. / MIKI Yoshihito (´・ω・)


アスキーアート文化は古くから存在した


ネットを利用していると、よく文字で構成された絵、すなわちアスキーアート(以下AA)を見かけることがあります。その中には1行の顔文字はもちろん複数行を使ったものも多数存在します。
この文字で絵を示すという文化は80年代のパソコン通信時代からあるもので、古くはワイデス40(原型は=■●)でしょうか。
しかしインターネット普及期、掲示板も広がるににつれてもっと複雑な、複数行を使った文字絵、すなわちAAが誕生してきました。
そしてインターネットにおいて2ちゃんねるやあめぞう、あやしぃわーるどなど掲示板が大量発生した時代に、これらのAA文化はかなりの盛り上がりを見せました。そしてその中から派生して、「モナー」「モララー」「ギコ猫」といったキャラクター的性質を持つものも誕生します。  それぞれは作者不詳となっており、だいたいの生息場所しかわかっていません(それも諸説あり定まっていない)。

■参考:アスキーアート - Wikipedia


多数登場したアスキーアート作品


2000年代始めには、このようなAAを使ったものが2ちゃんねるなどで大流行し、1スレのみのイラストではなく、中には大長編を作る人まで現れました。そしてキャラクターも新しく生まれたり派生したり、また時事のものを取り入れたりでどんどん増加してゆきます。
このAAの作品群というのは非常に多岐にわたり、長編も作られました。また、この時代はちょうどフラッシュの全盛期と重なるのですが、ここでAAを使った作品、もしくはAAをイラスト化した作品も非常に多く現れました。有名なところでは「しぃのうた」「2ちゃんねる大王」などなど。

■参考:2ch全AAイラスト化計画
■参考:(新)モララーのビデオ棚

■参考:



ギコ猫商標登録問題


さて、このようなAA全盛期であった2002年3月12日、2ちゃんねるで突然話題になってことがあります。それはAAの中でも有名なもののひとつ、ギコ猫が2ちゃんねると関係ない企業に商標登録をされたということが明るみになったからです。出願したのはおもちゃメーカーのタカラ。そしてAA板を中心にして、このことが騒動となります。それに対する反対AAやフラッシュも作られました。
その後ひろゆき氏がタカラへ質問状を送る等したことで、6月3日に商標登録出願は取り下げられたとのこと。

しかし、この事件で「AAの権利は誰にある」的なことが表面化することになります。その結果、AAを2ちゃんねるで商標登録するとかさまざまな案がなされましたが、結局法律上の難しさからか、その実現に至らないまま時が過ぎてゆきます。あと当時の2chの共同運営者だった山本一郎氏の会社イレギュラーズアンドパートナーズが商標登録出願していたようですが、最終的には拒絶査定となったようです。

この後も、ちょっとした権利問題などがありましたが、その後はこの事件の影響からか登録をする人もおらずに、時は流れてゆきました。


のまネコ商標登録問題


そして数年後の2005年、この時にPya!で公開されたとあるフラッシュが話題となります。それは洋楽とイラスト化されたAAを組み合わせたMAD。



このフラッシュと同時に歌もブームとなり、この歌い手が来日したりまでします。しかし、ここで一つの問題が起きます。
9月1日、そのCD発売元のエイベックスが、そのフラッシュで使われていたAAを「のまネコ」として商法登録したのですが、これは実質モナー。つまりまたもやAAキャラが商法登録されたと話題になりました。それは前にも増して複雑な要素があるのですが、細かい経緯は以下に詳しいです。

のまネコ問題 - Wikipedia

それからAAには影響はなく、現在に至ります。


何故、AAの商標登録は行われたのか


企業の側から見れば、実はそれに対しての商売をするにあたりそれがほかで商標登録をしていない場合に商標登録をするということはさほど不自然なことではありません。というのは権利を独占するためというよりは、そうしないと商品を発売した時に悪意の第三者が商標を登録し、使用料をその企業に迫る可能性が高いので。まあサブマリン特許とちょっと似ているような感じ。つまり自己防衛のために商標登録をしないと安心して商品化が出来ないわけで、するのはある意味当然と言えます。

ただ、それが自社で開発したものならよかったのですが、AAの場合話が変わります。それはAAがネットを使用する人の共有財産という思想があったからではないかと。それに対して(たとえ企業として独占する意思はなくても)商標という形で手を出すことは、ユーザーからすれば今まで同様自由に使えなくなるということを非常に危惧していたために、あのような抵抗になったという面はあると思います。ですので企業側の悪意というよりは、ネットが発展期で、その意識というものが企業側にわかっていなかった人が多かったことによるものと思えます。

ちなみに現在、初音ミクや東方キャラなんてのも同じようにネットで広く使われていますが、こちらは比較的広範囲で商品化されたりもしています。これは著作権の在処(クリプトンやZUN氏)がはっきりしていて、且つその人が二次創作においては大幅な面で自由ということを公言しているから両立できるのでしょう。その点AAキャラというのは誰が作ったかわからない(しかも何回も改良されているので、それを追うことはほぼ不可能)という特殊なものだったわけですね。


AAキャラの変遷


しかし現在、モナーやギコ猫といったAAの使用される頻度はかなり減りました(顔はよく使われますが)。ただ、AA自体はそこそこ使われており、やる夫はどの板でもまだ見ますし。そして、ニコニコ動画でもあの形式にもかかわらず職人が複数行を使ったAAを貼り付けることさえあります。  
おそらくやる夫もそのうち過去のものとなるでしょうが(実際このエントリーを最初に書いた2009年に比べて、修正している現在の2015年じゃかなり見なくなりましたし。「やる夫で学ぶシリーズ」も減ったしね)、顔文字含め新しいAAは生み出され、掲示板がある限り、いや、文字で示すところがネット上である限り、何らかの形で出てくるのでしょう。