掲示板というのは、2000年代前後にはネットコミュニケーションの手段として一番大きなものだったと思います。そして2chやMegaBBSのような大型のものではなくて、個人サイトでも必ずと言ってよいほど掲示板が置かれていました。それは今で言うところのブログを設置する感覚と似ているところがあったかもしれません。

さて、そんな掲示板でもいちいちCGIを組んで設置する人は少数派で、多くの人は「レンタル掲示板」というものを使っていました。つまりとあるサービスに申し込んで、自分用の掲示板を借りるというサービスですね。これもまさしく今のレンタルブログと同じ感じ。有名なところとしてはteacupなどがありましたね。

しかしこのレンタル掲示板サービスの中に、ちょっと変わったものがありました。その名前は「-宙」というもの。
Toshiba Libretto 50CT
Toshiba Libretto 50CT / Jon_Callow_Images



独特の世界が魅力だった掲示板「-宙」


「-宙」は普通のものとはいろいろな点でかけ離れていました。一番大きかったのは、その世界観と、防人と呼ばれる人工無脳の存在など、「変化すること」でしょうね(つか、今回調べてあの人口無能に名前があったのを初めて知ったような)。

まず、この掲示板は名前の通り「宇宙」に見立てられています。そして掲示板は「星」とみなし、その世界観の中で掲示板を楽しむという感じ。独特な点はさらにあり、書き込み時間がその「-宙」の暦に変化したり、「食」と呼ばれる書き込めない日があったりしたのです(これはサーバ負荷の軽減のためだったとか)。

そして、最もおもしろい点は、この掲示板が変化することにあります。たとえばこの掲示板にはたまに人口無能が勝手に書き込みを行ったりしますし、書き込み数や訪問者数などに応じて、星(掲示板)が変化して機能が増えたりするといった要素があり、ただ書き込むだけのものではなかったのですよ。ブログペットみたいなものを、掲示板でやっている感じでしょうか(というか、宙のほうがはるかに先だけれども)。他にもユーザーを楽しませるいろいろな機能がありました。

これらに掲示板としての実用性があるか、と言われると、殆どは無駄でしょう。しかし、そういった無駄なところがこの宙の魅力だったのですよね。この頃のサービスって、ボトムメールとか、実用性を追い求めるよりも遊び心に溢れたサービスがけっこうあったのですよね。私が行っていたページにも、宙を設置していた人はそれなりにいました。なんだかあの頃はのんびりとした独特な空気がホームページにもあったよなあ……。

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開発したのは企業ではなく、個人の集まり


これを最初に運営していたのは、企業ではなく早稲田大学の学生が集まった「宙プロ」という集団。ここが1999年から、サービスを始めました。
しかし、これが話題になり、利用者が増加したことから、当時の個人レベルで持ちうるサーバとスタッフの人数からは限界が来てしまいます。しかし、そのうちに楽天がサービスとして、この「-宙」を導入。その後「-宙」はInfoseek内のサービスとして生き続けることになります。


掲示板の縮小と「-宙」の終了


しかし2006年2月に大規模なサーバ障害が発生し、2月23日からサービスを長期停止して、同年4月5日にサービスの復旧を断念。同年7月3日をもってサービスを終了したとのこと。私にとっても知らない間に終わっていた感じです。

とはいえ、この時代になると、掲示板は機能しなくなってきていたのですよね。というのはブログに移り変わってきたというのもありますし、掲示板が宣伝スパムスクリプトによって、まめに管理していないとすぐにスパムで埋まってしまうようになったというのもあるでしょう。これも時代の流れなのでしょうか。


ネット上のコミュニケーションは永遠


ただ、ネットでの文章によるコミュニケーションはブログなどに受け継がれていますし、「-宙」のような形のものも、前述の「ブログペット」などの技術に受け継がれています。掲示板という形が無くなっても、そこで培われてきたコミュニケーションは未だ健在なのではないでしょうか。
そして宙プロは、新しいプロジェクトを立ち上げていたようです。

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■参考:掲示板的コトバ宇宙「-宙」 - Wikipedia