2006年10月、芸能方面でちょっとしたニュースが各方面を賑わせました。それは大御所マンガ家、松本零士氏の著作から、人気男性アーティスト槇原敬之氏が歌詞を盗用したという騒動。
2人とも有名人ということもあり、この話題は一時期ワイドショーとかがかなりとりあげていたように思います。

これは後に裁判沙汰にもなりますが、裁判がらみの話題でよくあるように、審理が長引いている間に多くの人にとっては忘れられてしまっていることでしょう。
というわけで、今日はこれについて書いてみようと思います。
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事件の経緯


まず、この事件の経緯から。槇原氏は作詞・作曲家として他者にも音楽を提供していますが、そのうちCHEMISTRYに提供した楽曲『約束の場所』の歌詞の一部に対し、松本氏が自分の有名作品『銀河鉄道999』のセリフの盗用であると主張。それをワイドショーや雑誌などで発言したことから始まります。
それに対し槇原氏は、『銀河鉄道999』は個人的趣味で読んだことが無く、歌詞は全くのオリジナルであると真っ向から反論します。しかしそれに対して松本氏は「10年間講演などでこの言葉を幾度も語った」として、盗作の疑いを否定しません。

そしてお互いの意見は食い違い、2007年3月22日、槇原氏は松本氏に対し、盗作を主張する部分に対し証拠を示して欲しいという著作権侵害不存在確認等請求を東京地裁に起こしました。同時にそれが示せなかった場合、2,200万円の損害賠償請求も行うとしました。
この額は、前述の『約束の場所』が使われたCM(クノールのものらしい)が打ち切りになったことからの損害というもののようです。
この経緯は、検索かけたらまとめWikiが見つかりましたので、詳しくはこちらで。

槇原敬之が松本零士「銀河鉄道999」のフレーズを盗作!? まとめWiki - トップページ


問題の部分


上のサイトによると、問題となった部分は、
■ 松本零士 「銀河鉄道999」 エターナル編第1話 (1996年初出) ほか → 「時間は夢を裏切らない 夢も時間を (決して) 裏切ってはならない」 ■ ケミストリー 「約束の場所」 (作詞・作曲/槇原敬之) (2006年) → 「夢は時間を裏切らない 時間も夢を決して裏切らない」 → 「未来は夢を裏切らない」 (CD帯)

とのこと。

これが本当に盗作だったのかというのは、本人しかわかりません。ただ、、『銀河鉄道999』を個人的趣味で読んでいないという主張も頷けます。私もけっこうマンガ読みのわりに、『銀河鉄道999』を原作で読んだこと、最終回とか部分的にしかないのですよね。
ただ、同じフレーズがCMで流れていて、そこで広まった可能性も指摘されています。

個人的な意見になりますが、盗作の可能性も完全否定はできませんが、単語が「夢」「時間」「裏切らない」の3つのみで構成されているので、偶然似てしまう可能性は十分にあり得るとも思えます。ただ、どちらにせよ、これは本人しか、いや、もしかすると本人でも証明は出来ないでしょう。


松本零士氏の著作権意識


しかし何故、そこまで松本氏は厳しい態度に出たのか。もちろん性格もあるかもしれませんが、立場的にそうせざるを得ない部分もあったのかもしれません。それは松本氏は漫画家であると同時に、日本漫画家協会著作権部責任者やコンピュータソフトウェア著作権協会理事でもあるということ。つまりこの問題にしても、職務上から敏感だったとも考えられます(逆に敏感だったからそのような役職になったとも言えますが)。
あと、著作権の期限延長問題でも、延長肯定派の立場で発言されることが多いようです。ただ、許可を得れば比較的寛容だそうです。たしかに999パロディは見ますし(特に車掌=999の車掌さんというのはお約束になっているような)。

ちなみにこの裁判の前にも『宇宙戦艦ヤマト』の著作権に関しての裁判が起こされています(控訴審中に法廷和解)。

■参考:2007年を斬る: 著作権延長論に物申す:NBonline(日経ビジネス オンライン)
■参考:松本零士 - Wikipedia


裁判のそれから


その裁判ですが、第1回口頭弁論が2008年7月7日に行われました。

■「約束の場所」の歌詞は盗用か 槇原VS松本、法廷で対決 - MSN産経ニュース ※リンク切れ
槇原さんは、盗用を全面的に否定。「松本さんが泥棒扱いをするので不愉快になった」と提訴の動機を語った。  一方、松本さんは「セリフは私の座右の銘で大切な言葉」とし、「言葉の前後を入れ替えただけで、セリフを見た可能性が極めて大きい」とした。

ここでも見解は真っ向から対立していたようです。


そして和解へ


このまま判決まで行くのかと思いきや、最近のニュースでこのような情報が。

『999訴訟』松本零士と和解した槇原敬之の影に謎の占い師 : 日刊サイゾー

今月15日に行われた第2回口頭弁論において、双方は弁論を行わず、11月7日に和解の手続きに入ることが決定したとのこと。占い師云々の部分はソース的にそれほど信頼できるものではないですが、和解に向かっているのは確かなようです。好意的に見れば、お二人とも創作者ですし、煩わしい裁判にかかわっている時間よりも、本業に従事したかったのかもしれません。

ともあれ、お二方には余計なもめ事よりも、それぞれの創作で頑張っていただきたいと思いますのは、それぞれのファンの思うところではないかと。