日本でアナログの衛星放送が開始されたのは1989年、そしてその2年後の1991年、WOWOWが民間で衛星放送を開始しました。

そしてその時同時に、同じチャンネルのPCM音声を使用してラジオ放送を行う衛星デジタル音楽放送であるセント・ギガも開局しました。実際には視聴したことはなくても、名前くらいは聞いたことのある人はそれなりにいらっしゃるのではないでしょうか。それこそCSが始まる前は、新聞のテレビ欄にも載ってましたしね。
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セント・ギガ~音の潮流


これは非常に特殊なラジオ放送で、タイム・テーブルならぬタイド・テーブル(潮の干満と月の運行を基準とする)に則った、先鋭的な編成であり、時報なし・ニュースなし・DJなし・トークなしというスタイルは「音の潮流」と言われていました。説明は難しいのですが、有線放送みたいな感じですが、それとは微妙に違う感じを受けるものでした。


衛星デジタル音楽放送(株)経営不振、それから


では、現在それはどうなっているのか、ご存じの方は少ないかもしれません。まあ結論から言えば、現在は「セント・ギガ」はなくなっています。

  ■セント・ギガって今どうなってるの?(セント・ギガ・フォーエバーさん)  ※リンク切れ
セント・ギガ(衛星デジタル音楽放送(株))は経営不振から、2003年3月「(株) ワイヤービー」という会社に吸収合併、4月からは「クラブコスモ」というステーションネームで放送を続けていたのですが、この会社は早々にセントギガ事業の売却を決定、同年10月からWINJという会社に引き継がれることになりました。ところが、クラブコスモからWINJに移行直後の03年10月中旬にワイヤービーは倒産してしまいます。これらのドタバタで、クラブコスモ(ワイヤービー)に代金を払ったのにスクランブルが解除されない、あるいは解約したのに返金されない、といったトラブルも発生していたようです。

BSデジタルに完全移行のため、2005年3月31日午後10時をもって、アナログ(BS5ch独立音声)放送を終了しました。05年5月10日以降は、BSデジタル(333CH)のみで放送されています。


この頃には、セント・ギガは「WINJ333」という名前に変わっていました。


放送休止まで


その後、スクランブルなし、ほとんど再放送という流れが続いた後、ホームページも更新されなくなります。そして2006年10月の追記。
 
9月からはEPG(電子番組表)も表示されなくなりました。9月中旬以降は無音状態が数時間続く日もあり、いよいよ総務省が調査に乗り出しました。9/29にはNHKのニュースでも取り上げられ、このままの状態が続くと放送免許の取り消しもあり得るようです。 現場のスタッフは何とか放送を維持しようと、ボランティア状態で頑張っていますが、資金難という本質的な問題が解決しない限り、いつまでこの状態が続くのかは誰にも分からないようです。

……泣けてきます。ただ、以下のリンク先を見ると、もうこれより前の時点で放送としては死んでいたのかもしれません。

 ■危機に瀕するBSデジタルラジオ ※リンク切れ
だが、問題は、引き継いだWINJの経営陣は、放送局を安く買い取って高く売り抜くためのマネーゲームの手駒としか考えていなかったと思われる点にある。  新規加入者獲得やスポンサー獲得のための積極的な営業はほとんど行われず、有料課金システムの構築もされずに実質的なノンスクランブル放送=無料放送が行われていた。このような状況でCMもなく聴取料収入もないのだから、事業として成り立つはずのないことは自明のことであったといえよう。


そして2006年11月1日より来年1月31日まで、放送休止が決定しました。


放送終了


しかしその1月31日になっても再開せず、幾度かの放送休止延長を経た上、2007年11月14日、電波監理審議会が放送法第54条の24第2項に基づき、委託放送事業者の認定取り消しを決定、放送終了となりました。

デジタル移行問題で揺れている影で、こうやってひっそりと終了したものもあったのですね。でも、こんな壮絶な展開になっているとは思いませんでした。たしかにセント・ギガは特殊な局だったのかもしれません。
でも、テレビ離れが避ければれている昨今、CSや地方局、下手をすればキー局でも、こんなことが起こらないとは限らないでしょう。

■参考:セント・ギガ - Wikipedia