「google八分」という言葉をご存じでしょうか。
これはかなりのシェアを持つ検索エンジン、Googleのデータベースから何らかの都合ではじかれ、検索結果に出なくなる現象を指します。
検索エンジンは現在ではサイトを知る方法として非常に有力な手段ですので、そこの表示されないとなると、一種の検閲行為にも当たるのではないか、と物議を醸しています。
これが日本で広く知られるようになったひとつの事件があります。それが「悪徳商法?マニアックス」が、株式会社ウェディングに訴訟を起こされた一連の流れ。
ひどく汚れたノートパソコンのキーボード|フリー写真素材ぱくたそ
悪徳商法?マニアックスは、日本のインターネットではわりと歴史が古く、1997年頃から存在しました。そこの掲示板では、悪徳商法に対しての告発などが行われ、その手のものに困ったユーザー、予防したいユーザーが調べたいときにによく読まれていました。当初は悪徳商法の告発を目的としながらも、ややアングラ的な感じ(犯罪的な意味ではなく、昔の2ch的な感じという意味で)を漂わせている面もありました。それは、管理人のbeyond氏が、正体不明の人物みたいな感じを漂わせていたこともそのひとつでしょう。
さて、このサイト、名前が出てきた会社にとっては(それが悪徳かどうか問わずに)たまったものではないので、削除要請がかなりあったようです。
しかしある時、ここ(正確には、同氏の運営する匿名掲示板(仮))に悪徳商法と書かれたブライダル会社が、削除要請を行ってきました。
■株式会社ウェディングに関する情報を募集しています(2003年12月13日) ※リンク切れ
ここによると、
とのこと。そこでここ(悪徳商法?マニアックス)に載せたことで、検索順位が一気に上がり、「株式会社ウェディング」で検索すると、悪マニが上の方になるという事態になりました。
しかし、同じ悪マニの記事。
■「株式会社ウェディング」の検索結果について(2003年12月29日) ※リンク切れ
そして年明けて新年。
■google の検索結果から削除されました(2004年1月6日)
■googleから、削除された理由(わけ)(2004年1月15日)
■Google Japanがクレームのあった検索対象を結果から除外(スラッシュドット)
ここに、「Google八分」が認識されました。と同時に、この周辺が非常に騒がしくなります。まず、ウェディング社の削除要請などが盛んになります。
■株式会社ウェディングがはてなダイアリーに圧力?(スラッシュドット)
そしてとうとう、悪マニの管理人が訴えられてしまいました。
■株式会社ウェディングが「匿名掲示板(仮)」を名誉毀損で提訴(スラッシュドット)
■株式会社ウェディングが、匿名掲示板(仮)に6,000万円請求 (2004年3月1日)
数日後、名誉毀損容疑で刑事告発も受け、家宅捜査を受けます。
■匿名掲示板(仮)が、家宅捜索されました(2004年3月11日)
しかし、さすがにこれを素人つぶしの請求金額(6,000万円)含め、横暴と感じた人は多く、多くのネットユーザーがこれに抗議の意を示します。そして以下はそんな時にまとめられたもの。
■カウントダウン・ウェディング・まにあっくす ※リンク切れ
※同社が、自作自演サイトを用意して、自社を褒め称えるサイトを作っていたことから出来たもの。それとこの件を避難するサイトの順位を比較していた。
■angelicanalの日記
これにより、逆にウェディング社がマイナスイメージで大きくネットに広がることとなります。
その折、とうとう今まで正体が謎だったbeyond氏が実名を公表します。
■管理人Beyond の実名を公開します(2004年3月11日)
今まで正体が謎であったBeyond氏が実名を公表したことを『教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書』には「あのBeyond氏が、という点に時代を感じた」と書かれています。
同時に、「悪マニBeyond氏と一緒に、ウェディング問題を考える会」が結成されます。これの委員には、紀藤正樹弁護士、まぐまぐの深水英一郎氏、山口貴士弁護士などがおり、話題となりました。
4月12日、同社から告訴の取り下げが行われました。
■株式会社ウェディングが、訴訟を取り下げました(2004年4月12日)
しかし、取り下げの場合は被告人の同意もなければいけないのですが、それをBeyond氏がしなかったために、続行。
■取り下げの不同意書(2004年4月25日)
その後同社が再度請求できない「請求放棄」を行ったために、この件は終了となりました。
■株式会社ウェディングが、請求放棄を行いました(2004年6月2日)
そして刑事事件も不起訴となり、この件は一応終了しました。
余談ですが、この間にWinny作者47氏が、著作権法違反ほう助の疑いで逮捕されています(5/10)。このあたり、インターネットの歴史で激動の春だったのかもしれません。
その後、「悪マニBeyond氏と一緒に、ウェディング問題を考える会」は2005年2月26日をもって「インターネット上の表現の自由を考える会」に名称変更(今でも活動があるのかは不明)。
そして株式会社ウェディングは社名を変えたため、今ではその名前は存在しません。そしてBeyond氏は、google八分対策のソフトを作って、IPAが採択した未踏ソフトウェア創造事業に選ばれたりしています。
■グーグル八分発見システムが未到プロジェクトで採択(スラッシュドット)
しかし、Google八分はまだ解除されておらず、「悪徳商法」「株式会社ウェディング」で検索しても、元となったページは表示されず、Google八分を示す「Google 宛に送られた法的要請に応じ、このページから 1 件の検索結果を除外しました。ご希望の場合は、ChillingEffects.org を除外するに至ったクレームを確認できます」が表示されます。ただし同氏のアンテナページ悪マニ.netは表示されます。
ただ、ある程度ニュースになり、ほかのサイト(ニュースサイトなど)で紹介されたサイトがgoogle八分となっても、それを完全に隠蔽することは不可能なのですよね。というのは、たとえその本サイトが一番上に来なくても、1ページ目に、それを消化した関連サイトが上がってくる可能性が大きいからです。たとえばそれがはてなブクマで注目された場合、そのはてブページとか、ニュースサイトのその記事を紹介した日とか。となると、結局はそこからgoogle八分となったページに辿れますから、ほとんど解決にはならないはずです。実際、悪徳商法?マニアックスも、その関連サイトやリンクサイトが上位に来てしまうのですよね。
その上、google八分されたことが判明した場合、ネット界隈で騒ぎになる可能性も高いので余計話が広がる可能性もあります。ついでに、googleの関連検索は遠慮なしに一番調べられているものが出てきますので、そこでもより目立つ可能性があります。
最近でも、google八分の話はたまに聞きますが、上のような意味で、すでにそういった規制は、googleなど検索エンジンでも不可能になっているような気がします。
この事件はインターネットの問題について、いろいろなところで考えさせられた気がします。その面では収穫があったのではないでしょうか。
これはかなりのシェアを持つ検索エンジン、Googleのデータベースから何らかの都合ではじかれ、検索結果に出なくなる現象を指します。
検索エンジンは現在ではサイトを知る方法として非常に有力な手段ですので、そこの表示されないとなると、一種の検閲行為にも当たるのではないか、と物議を醸しています。
これが日本で広く知られるようになったひとつの事件があります。それが「悪徳商法?マニアックス」が、株式会社ウェディングに訴訟を起こされた一連の流れ。
ひどく汚れたノートパソコンのキーボード|フリー写真素材ぱくたそ
事の起こり
悪徳商法?マニアックスは、日本のインターネットではわりと歴史が古く、1997年頃から存在しました。そこの掲示板では、悪徳商法に対しての告発などが行われ、その手のものに困ったユーザー、予防したいユーザーが調べたいときにによく読まれていました。当初は悪徳商法の告発を目的としながらも、ややアングラ的な感じ(犯罪的な意味ではなく、昔の2ch的な感じという意味で)を漂わせている面もありました。それは、管理人のbeyond氏が、正体不明の人物みたいな感じを漂わせていたこともそのひとつでしょう。
さて、このサイト、名前が出てきた会社にとっては(それが悪徳かどうか問わずに)たまったものではないので、削除要請がかなりあったようです。
しかしある時、ここ(正確には、同氏の運営する匿名掲示板(仮))に悪徳商法と書かれたブライダル会社が、削除要請を行ってきました。
■株式会社ウェディングに関する情報を募集しています(2003年12月13日) ※リンク切れ
ここによると、
11月27日にウェディングより削除要請が来ました。 それに対し、「法人の削除要請は公開で」「掲示板が嫌なら、自社サイトに公開質問状を」と返答したところ、「訴訟をもって糾弾すると共に、捜査関係機関に 申告し、被疑者を訴追する」と言う返事を貰うとともに、プロバイダに対し当方の契約者情報を開示せよと言う「発信者情報開示依頼書」が届きました。
とのこと。そこでここ(悪徳商法?マニアックス)に載せたことで、検索順位が一気に上がり、「株式会社ウェディング」で検索すると、悪マニが上の方になるという事態になりました。
しかし、同じ悪マニの記事。
■「株式会社ウェディング」の検索結果について(2003年12月29日) ※リンク切れ
googleで、キーワード「株式会社ウェディング」にて検索すると、27日頃までは当サイトのトピックスが2番目に表示されていたのですが、28日になると無くなっていました。どうも、トピックス自体が検索できなくなったようです。何故なんでしょうね?
Google八分
そして年明けて新年。
■google の検索結果から削除されました(2004年1月6日)
■googleから、削除された理由(わけ)(2004年1月15日)
■Google Japanがクレームのあった検索対象を結果から除外(スラッシュドット)
ここに、「Google八分」が認識されました。と同時に、この周辺が非常に騒がしくなります。まず、ウェディング社の削除要請などが盛んになります。
■株式会社ウェディングがはてなダイアリーに圧力?(スラッシュドット)
訴訟
そしてとうとう、悪マニの管理人が訴えられてしまいました。
■株式会社ウェディングが「匿名掲示板(仮)」を名誉毀損で提訴(スラッシュドット)
■株式会社ウェディングが、匿名掲示板(仮)に6,000万円請求 (2004年3月1日)
数日後、名誉毀損容疑で刑事告発も受け、家宅捜査を受けます。
■匿名掲示板(仮)が、家宅捜索されました(2004年3月11日)
ネットでの動き
しかし、さすがにこれを素人つぶしの請求金額(6,000万円)含め、横暴と感じた人は多く、多くのネットユーザーがこれに抗議の意を示します。そして以下はそんな時にまとめられたもの。
■カウントダウン・ウェディング・まにあっくす ※リンク切れ
※同社が、自作自演サイトを用意して、自社を褒め称えるサイトを作っていたことから出来たもの。それとこの件を避難するサイトの順位を比較していた。
■angelicanalの日記
これにより、逆にウェディング社がマイナスイメージで大きくネットに広がることとなります。
その折、とうとう今まで正体が謎だったbeyond氏が実名を公表します。
■管理人Beyond の実名を公開します(2004年3月11日)
今まで正体が謎であったBeyond氏が実名を公表したことを『教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書』には「あのBeyond氏が、という点に時代を感じた」と書かれています。
同時に、「悪マニBeyond氏と一緒に、ウェディング問題を考える会」が結成されます。これの委員には、紀藤正樹弁護士、まぐまぐの深水英一郎氏、山口貴士弁護士などがおり、話題となりました。
告訴取り下げ~請求放棄
4月12日、同社から告訴の取り下げが行われました。
■株式会社ウェディングが、訴訟を取り下げました(2004年4月12日)
しかし、取り下げの場合は被告人の同意もなければいけないのですが、それをBeyond氏がしなかったために、続行。
■取り下げの不同意書(2004年4月25日)
その後同社が再度請求できない「請求放棄」を行ったために、この件は終了となりました。
■株式会社ウェディングが、請求放棄を行いました(2004年6月2日)
そして刑事事件も不起訴となり、この件は一応終了しました。
余談ですが、この間にWinny作者47氏が、著作権法違反ほう助の疑いで逮捕されています(5/10)。このあたり、インターネットの歴史で激動の春だったのかもしれません。
その後
その後、「悪マニBeyond氏と一緒に、ウェディング問題を考える会」は2005年2月26日をもって「インターネット上の表現の自由を考える会」に名称変更(今でも活動があるのかは不明)。
そして株式会社ウェディングは社名を変えたため、今ではその名前は存在しません。そしてBeyond氏は、google八分対策のソフトを作って、IPAが採択した未踏ソフトウェア創造事業に選ばれたりしています。
■グーグル八分発見システムが未到プロジェクトで採択(スラッシュドット)
しかし、Google八分はまだ解除されておらず、「悪徳商法」「株式会社ウェディング」で検索しても、元となったページは表示されず、Google八分を示す「Google 宛に送られた法的要請に応じ、このページから 1 件の検索結果を除外しました。ご希望の場合は、ChillingEffects.org を除外するに至ったクレームを確認できます」が表示されます。ただし同氏のアンテナページ悪マニ.netは表示されます。
終わりに
ただ、ある程度ニュースになり、ほかのサイト(ニュースサイトなど)で紹介されたサイトがgoogle八分となっても、それを完全に隠蔽することは不可能なのですよね。というのは、たとえその本サイトが一番上に来なくても、1ページ目に、それを消化した関連サイトが上がってくる可能性が大きいからです。たとえばそれがはてなブクマで注目された場合、そのはてブページとか、ニュースサイトのその記事を紹介した日とか。となると、結局はそこからgoogle八分となったページに辿れますから、ほとんど解決にはならないはずです。実際、悪徳商法?マニアックスも、その関連サイトやリンクサイトが上位に来てしまうのですよね。
その上、google八分されたことが判明した場合、ネット界隈で騒ぎになる可能性も高いので余計話が広がる可能性もあります。ついでに、googleの関連検索は遠慮なしに一番調べられているものが出てきますので、そこでもより目立つ可能性があります。
最近でも、google八分の話はたまに聞きますが、上のような意味で、すでにそういった規制は、googleなど検索エンジンでも不可能になっているような気がします。
この事件はインターネットの問題について、いろいろなところで考えさせられた気がします。その面では収穫があったのではないでしょうか。