本日4月1日はエイプリルフールです。おそらく今年もあちこちのサイトでそれ系のネタ企画が行われているのでしょう。
しかしネット上におけるこのようなエイプリルフール企画というのは結構前からあったにもかかわらず、その規模や内容はネットの広がり、発展に伴ってだいぶ変わってきた気がします、
そこで今日は、インターネット上のエイプリルフールの歴史について、軽く振り返ってみようと思います。


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インターネット以前


日本でインターネットが本格的に普及したのは1990年代後半からですが、それ以前でも今のインターネットにおけるエイプリルフール企画に繋がるような文化は存在しました。
パソコン雑誌の月刊アスキーにおいては、1981年よりすでにエイプリルフール近日発売号のおまけ的なものとして、ネタ記事を集めた『年刊AhSKI!!』というものが発行されていました。
ちなみに下の写真は自宅にあったもので、1999年に出された復刻総集編。

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また、パソコン通信などでも書き込みなどで成立する軽い企画的なものは存在していたと思われます(このへんデータがないので記憶にある方はネットのどこかに書き留めて頂けると助かります)。


インターネット黎明期(1990年代後半)


日本でインターネットが普及し始めてきた1990年代後半。1996年の4月1日には、Yahoo!Japanがスタートしました。
この頃はまだ56KもしくはISDNといった電話回線が通信の主体で、画像を一枚表示させるのにも時間がかかったような時代でした(しかもテレホーダイじゃなければ従量課金)。
しかし、文字ベースでのエイプリルフールネタというものは既に存在しており、1997年にはすでにIT系企業サイトのimpress Watchにおいてネタページが設置されていたようです。これは以後、毎年恒例となってゆきます。

PC うおっち Title Page

ただ、この頃は企業でエイプリルフールを大々的に行うところはあまりなく、むしろあったら「企業がエイプリルフールネタをやってる!」と注目された感じでした。その時に行って企業は、インターネットやパソコンに強いメディア。それと当時人気が出て来たパソコンゲームの会社、とりわけ美少女ゲーム(エロゲー)の会社でもエイプリルフールに積極的に参加するところが見られました。これも同じくパソコンと密接な関係にあったところと比較的自由な空気故、そういったものが出やすい環境にあったからでしょう。

そして個人サイトでもこのような企画は行われていました。当時はテキストサイト、それと個人ニュースサイトがそれらの企画をやっていた感じです。
以下は現在発掘出来たもの。

●1999年4月1日エイプリルフール記事
1999/04/01 « 変人窟過去ログ倉庫(HJKLOG)

(2000年代に入りますが)有名なのは「ちゆ12歳」のエイプリルフール恒例企画でしょう。

バーチャルネットアイドル・ちゆ12歳「ちゆニュース - 平成13年04月」

これはその後、昨年に至るまで続けていたというのが特筆すべき点です(今年は更新するのかしら。2/14更新がなかったし)。


インターネット発展期(2000年代)



win2000-vmware / CesarCardoso


IT革命と言われたのは2000年前後、この頃からインターネットは広まりを見せてきます。
2000年代に入りしばらく経つと個人はもちろん各種企業サイトもエイプリルフール企画をやるところが珍しくなくなり、それまでの意表をついたエイプリルフールネタというより、期待されるものとなっていた感じです。
以下は2004年当時の企業サイトにおけるまとめ。1日限定なので特設ページを用意していない限りリンク先にネタは残ってないです。サイトや企業自体ないところもあるし。

エイプリルフールを楽しもう! 4月1日ネタ特集

そこで話題となったメーカーが、ゲーム会社のアイレム。
すでに1998年からエイプリルフール企画を始めていた同社ですが、この年の『どきどきすいこでん』は一般の企業がここまで手かけたものをやるというのは珍しく、話題となります。それからもエイプリルフールの名物として名前が挙がるようになります。ただし2011年でゲーム事業から事実上の撤退、その後は元社員が移籍したグランゼーラに引き継がれました。

ITmedia Games:アイレムHPにて恒例のエイプリルフール企画が開催――今年のネタは何なのか?

また、2005年頃からは円谷プロもエイプリルフール企画に力を入れ、名物的存在になります。

円谷プロのエイプリルフールネタまとめ 2005~2010年 - NAVER まとめ

ただ、2000年代後半になると、これらにおける素材面や技術面などでのインフレが進んでしまい、かつて主流だった個人が自分のサイトでテキストベースで行うようなものは少なくなった、というか目立たなくなってしまった感があります。


2011年


それからもどんどん規模を拡大してゆき、すっかり恒例となり、毎年4月1日にはそのネタがまとめられるようになります。
しかし、2011年は、エイプリルフールの20日前に起こった東日本大震災のため、その企画を自粛するところもかなりあったようです。

サイトでのエイプリルフール「ネタ」 今年は自粛の企業も - ライブドアニュース


そして今年


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そして今年になります。おそらく去年同様、大量のサイトでネタが投下されているのでしょう。
参考までに去年のまとめ

エイプリルフールに便乗しているサイトまとめ2015年版 - GIGAZINE

※追記:今年のです。
今年も来ちゃった! 2016年エイプリルフールまとめ - ねとらぼ

しかし、ここに至るまでにすっかり大きな組織のものだけが目立つようになってしまい、その中でも素材的、技術的インフレが進んでいる感じです。まあGoogleとか本気でやれば、規模的な面では誰もかなわないですし。

Googleのエイプリルフールが今年も本気! Googleマップで「パックマン」が遊べるぞ! - ねとらぼ
2000年から2006年までのGoogleのエイプリルフールネタ一覧 | POP*POP

あと、個人的な印象ですが、一部に疲労感が見える感じもします。さすがにもう10年以上やっている上、インフレが進んでいるので作り手もかなり厳しいところがあるのではないでしょうか。

エイプリルフールといっても嘘をついたりそのための冗談を言うのが義務ではないので、惰性で無理に作るようなことはせず、楽しいと思える範囲でするのが一番ではないでしょうか。

■関連:今のネットにおけるエイプリルフール企画について考える - 空気を読まない中杜カズサ