このブログではライブドアに移転してくる前、すなわち今から5年以上前によく採りあげていたものがあります。それはアフリカのジンバブエにおけるハイパーインフレについてのこと。
以下がそれらについて書いたものの一部になります。
■ジンバブエはあれからどうなったのか : Timesteps
■ジンバブエのハイパーインフレで、とうとう「垓」という単位が見えた : Timesteps
■2009年初頭あたりのジンバブエの動きまとめ : Timesteps
■2009年のジンバブエはどうなっているのか : Timesteps
■2010年のジンバブエはどうなっているのか : Timesteps
さて、もう最後に書いてから5年以上経ちますが、ではジンバブエのハイパーインフレはどうなったのか、そして通貨制度はどうなっているのか、それについて書いてゆこうと思います。
250 Million Dollars / ZeroOne
Fifty Billion Dollars / ZeroOne
まず、2009年迄のエントリーを読んで頂けると、ジンバブエがとんでもないハイパーインフレに見舞われていたことがわかると思います。
そこでも書いたように、ハイパーインフレが進んだのは2008年前後。
2008年5月に1億と2億5000万の額面のジンバブエ・ドル札が発行された後(相場は1ドル=2億5600万ジンバブエ・ドル)、10桁切り捨てられるというデノミネーションが行われたにもかかわらずインフレーは進み、8月のデノミ時点では500ドル札が最上限だったものが、9月には2万ドル紙幣、11月には100万ドル紙幣、12月には1億ドル紙幣、さらに5億ドル紙幣、そして年末には100億ドル紙幣が発行されます。
さらに2009年1月に入ると、12日に500億ドル紙幣、さらには1月16日に兆に突入し、最大で100兆ドル紙幣まで発行されました。
年間インフレ率は約2億3000万%。
しかし2009年初頭から法定通貨がアメリカドル、南アフリカランド、EUのユーロ、イギリスポンド、そしてボツワナのプラになりました。事実上それら、特に米ドルやランドで決済が行われるようになり、ジンバブエドルはすでに貨幣としての力は失われていたといいます。
そして2009年2月には12桁のデノミが行われ、1兆ジンバブエドル=新1ジンバブエドルとなりました。
さらにこのあたりから公的な賃金支払いも米ドルで行われるようになり、公式流通が停止します。
さらには同年4月、無期限発行停止が発表されました。
つまり最大では100兆ドル札だったということになります。もちろん放置しておけばさらに上の桁も見られたかもしれませんが。
これが以前までのエントリーでだいたい書いたところです
では、ジンバブエドルはその後どうなったのか。
まず2014年2月、法定通貨を先に挙げた5通貨に加え、中国の人民元、インドのルピー、オーストラリアドル、そして日本円を加えた9通貨とすることになりました。
そして2014年12月、ジンバブエ政府は債券に裏付けられている「ボンドコイン」というものを鋳造、発行します。しかし当然のごとくその通貨に対する信用はなく、使用を拒否する例が続出し、路上で受け取りを拒否する相手と怒鳴りあう事態が起きているようです。
■ジンバブエが独自コイン発行、国民はそっぽ | Reuters
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One Million Dollars / barbourians
なんと2015年には公式に通貨としての廃止が決定されました。
まあ事実上発行も流通も停止しており、国内は米ドルとランドが流通通貨となっていたので無理もないですが。
その後2015年6月から回収が開始されました
ちなみにレートは17.5京ジンバブエドル→5米ドル。大半は実物通貨ではなく、銀行口座内でのもののようです。
■ジンバブエが自国通貨を廃止、17.5京ドルを5米ドルに交換 | Reuters
2010年のエントリーで、中国がジンバブエに接近しているということに触れました。これは中国はアフリカ諸国への援助を加速しているためです。
とりわけジンバブエは人道問題などで欧米諸国と対立し、EUからも経済制裁を受けている関係上、逆に手をさしのべている中国との経済協力関係が深くなっていることにあります。
その影響のためか、2015年12月、ジンバブエにおける9種の法定通貨のうち、中国人民元を2016年より本格的に流通させることが決まりました。どうやら法定通貨の中でも現在の主流は米ドルですが、中国人民元をそれに加えて流通させるという方針のようです。
そして中国がジンバブエに対して持つ4000万ドルの債権について放棄する方針を明らかにしました。
■CNN.co.jp : ジンバブエ、人民元を「通貨」に 中国は48億円の債権放棄
余談になりますが、2015年10月に、中国の孔子平和賞がムカベ大統領に贈られるとなったというニュースが流れました。ただしこれはムカベ大統領の辞退でお流れになりましたが。
■中国の孔子平和賞にジンバブエ大統領、創設者が理由語る 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
■【中国・孔子平和賞】ジンバブエの独裁者・ムガベ大統領までも受賞辞退… - 産経ニュース
Victoria Falls, Zimbabwe, 12:31 / Christiaan Triebert
さすがにハイパーインフレの時ほどではないですが、経済は上向きとは言いがたい状況にあるようです。これは欧米諸国による経済制裁の影響も大きいでしょう。
2013年ですが、公務員給与を支払ったことで、国庫金の残高は217ドルになるという、経済の貧困状況が語られていました
■国庫残高1万9700円、ジンバブエ財務相が公表 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
前述したように、中国が経済的関係を強めていますが、その政策が今後どうなるかというのが大きな注目点です。これは中国国内の経済状況なども深く影響するものと思われます。
ちなみにムカベ大統領は今年で92歳。現状で世界最高齢の国家元首とされています。
ただ、今までジンバブエで独裁政治を敷き続けてきたものの、さすがに年齢による政治活動の停滞が予想されます。その折ジンバブエの権力はどこが、誰が持つことになるのでしょうか。そしてその時に何かが起こるのでしょうか。
中東はもちろん、アフリカ北部もかなり動乱が続いている昨今ですが、ここも動向を大いに注目する必要があるでしょう。
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★2016/12/3追記
2016年11月28日より、1000万米ドル相当の「ボンドノート」を輸出業者向けに発行。これは並行通貨で、輸出拡大と深刻な現金不足(ジンバブエでは米ドルが流出してかなり乏しくなっている模様)の緩和を図るための打開策なのですが、これが裏目に出てハイパーインフレの再来を招く危険性があると報じられました。
このボンドノートに対しては信頼性はかなり低いのですが(それはまあ今までの歴史が歴史なので)、銀行口座にドルで預けたのに、ボンドノートを受け取るよう無理強いしてくるなど不満が高まっているようです。
■ジンバブエ、ハイパーインフレの悪夢再来か 深刻なドル不足で並行通貨導入、怒れる市民のデモも | JBpress(日本ビジネスプレス)
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★2017/12/6追記
そしてとうとう2017年11月21日、37年間ジンバブエを統治したムガベ大統領が、事実上軍のクーデターによる辞任となりました。
■ジンバブエで何が起きているのか 政変の背景 - BBCニュース
■ジンバブエのムガベ大統領が辞任、37年間の統治に幕
さらにもうひとつ、こんなニュースも。一度通貨で話題になったら今度は仮想通貨と。まあ仮想通貨のほうがかつての国内通貨よりも信用出来るからかもしれませんが。
■CNN.co.jp : ビットコイン、ジンバブエで価格急騰 国際相場の2倍
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ほか参考
■ジンバブエ基礎データ | 外務省
■ジンバブエ・ドル - Wikipedia
以下がそれらについて書いたものの一部になります。
■ジンバブエはあれからどうなったのか : Timesteps
■ジンバブエのハイパーインフレで、とうとう「垓」という単位が見えた : Timesteps
■2009年初頭あたりのジンバブエの動きまとめ : Timesteps
■2009年のジンバブエはどうなっているのか : Timesteps
■2010年のジンバブエはどうなっているのか : Timesteps
さて、もう最後に書いてから5年以上経ちますが、ではジンバブエのハイパーインフレはどうなったのか、そして通貨制度はどうなっているのか、それについて書いてゆこうと思います。
250 Million Dollars / ZeroOne
2008年頃のジンバブエのハイパーインフレ
Fifty Billion Dollars / ZeroOne
まず、2009年迄のエントリーを読んで頂けると、ジンバブエがとんでもないハイパーインフレに見舞われていたことがわかると思います。
そこでも書いたように、ハイパーインフレが進んだのは2008年前後。
2008年5月に1億と2億5000万の額面のジンバブエ・ドル札が発行された後(相場は1ドル=2億5600万ジンバブエ・ドル)、10桁切り捨てられるというデノミネーションが行われたにもかかわらずインフレーは進み、8月のデノミ時点では500ドル札が最上限だったものが、9月には2万ドル紙幣、11月には100万ドル紙幣、12月には1億ドル紙幣、さらに5億ドル紙幣、そして年末には100億ドル紙幣が発行されます。
さらに2009年1月に入ると、12日に500億ドル紙幣、さらには1月16日に兆に突入し、最大で100兆ドル紙幣まで発行されました。
年間インフレ率は約2億3000万%。
しかし2009年初頭から法定通貨がアメリカドル、南アフリカランド、EUのユーロ、イギリスポンド、そしてボツワナのプラになりました。事実上それら、特に米ドルやランドで決済が行われるようになり、ジンバブエドルはすでに貨幣としての力は失われていたといいます。
そして2009年2月には12桁のデノミが行われ、1兆ジンバブエドル=新1ジンバブエドルとなりました。
さらにこのあたりから公的な賃金支払いも米ドルで行われるようになり、公式流通が停止します。
さらには同年4月、無期限発行停止が発表されました。
つまり最大では100兆ドル札だったということになります。もちろん放置しておけばさらに上の桁も見られたかもしれませんが。
これが以前までのエントリーでだいたい書いたところです
2010年代前半のジンバブエ通貨
では、ジンバブエドルはその後どうなったのか。
まず2014年2月、法定通貨を先に挙げた5通貨に加え、中国の人民元、インドのルピー、オーストラリアドル、そして日本円を加えた9通貨とすることになりました。
そして2014年12月、ジンバブエ政府は債券に裏付けられている「ボンドコイン」というものを鋳造、発行します。しかし当然のごとくその通貨に対する信用はなく、使用を拒否する例が続出し、路上で受け取りを拒否する相手と怒鳴りあう事態が起きているようです。
■ジンバブエが独自コイン発行、国民はそっぽ | Reuters
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ジンバブエドル、廃止
One Million Dollars / barbourians
なんと2015年には公式に通貨としての廃止が決定されました。
まあ事実上発行も流通も停止しており、国内は米ドルとランドが流通通貨となっていたので無理もないですが。
その後2015年6月から回収が開始されました
ちなみにレートは17.5京ジンバブエドル→5米ドル。大半は実物通貨ではなく、銀行口座内でのもののようです。
■ジンバブエが自国通貨を廃止、17.5京ドルを5米ドルに交換 | Reuters
中国との経済関係強化
2010年のエントリーで、中国がジンバブエに接近しているということに触れました。これは中国はアフリカ諸国への援助を加速しているためです。
とりわけジンバブエは人道問題などで欧米諸国と対立し、EUからも経済制裁を受けている関係上、逆に手をさしのべている中国との経済協力関係が深くなっていることにあります。
その影響のためか、2015年12月、ジンバブエにおける9種の法定通貨のうち、中国人民元を2016年より本格的に流通させることが決まりました。どうやら法定通貨の中でも現在の主流は米ドルですが、中国人民元をそれに加えて流通させるという方針のようです。
そして中国がジンバブエに対して持つ4000万ドルの債権について放棄する方針を明らかにしました。
■CNN.co.jp : ジンバブエ、人民元を「通貨」に 中国は48億円の債権放棄
余談になりますが、2015年10月に、中国の孔子平和賞がムカベ大統領に贈られるとなったというニュースが流れました。ただしこれはムカベ大統領の辞退でお流れになりましたが。
■中国の孔子平和賞にジンバブエ大統領、創設者が理由語る 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
■【中国・孔子平和賞】ジンバブエの独裁者・ムガベ大統領までも受賞辞退… - 産経ニュース
これからジンバブエはどうなるのか
Victoria Falls, Zimbabwe, 12:31 / Christiaan Triebert
さすがにハイパーインフレの時ほどではないですが、経済は上向きとは言いがたい状況にあるようです。これは欧米諸国による経済制裁の影響も大きいでしょう。
2013年ですが、公務員給与を支払ったことで、国庫金の残高は217ドルになるという、経済の貧困状況が語られていました
■国庫残高1万9700円、ジンバブエ財務相が公表 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
前述したように、中国が経済的関係を強めていますが、その政策が今後どうなるかというのが大きな注目点です。これは中国国内の経済状況なども深く影響するものと思われます。
ちなみにムカベ大統領は今年で92歳。現状で世界最高齢の国家元首とされています。
ただ、今までジンバブエで独裁政治を敷き続けてきたものの、さすがに年齢による政治活動の停滞が予想されます。その折ジンバブエの権力はどこが、誰が持つことになるのでしょうか。そしてその時に何かが起こるのでしょうか。
中東はもちろん、アフリカ北部もかなり動乱が続いている昨今ですが、ここも動向を大いに注目する必要があるでしょう。
//----------------------------
★2016/12/3追記
2016年11月28日より、1000万米ドル相当の「ボンドノート」を輸出業者向けに発行。これは並行通貨で、輸出拡大と深刻な現金不足(ジンバブエでは米ドルが流出してかなり乏しくなっている模様)の緩和を図るための打開策なのですが、これが裏目に出てハイパーインフレの再来を招く危険性があると報じられました。
このボンドノートに対しては信頼性はかなり低いのですが(それはまあ今までの歴史が歴史なので)、銀行口座にドルで預けたのに、ボンドノートを受け取るよう無理強いしてくるなど不満が高まっているようです。
■ジンバブエ、ハイパーインフレの悪夢再来か 深刻なドル不足で並行通貨導入、怒れる市民のデモも | JBpress(日本ビジネスプレス)
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★2017/12/6追記
そしてとうとう2017年11月21日、37年間ジンバブエを統治したムガベ大統領が、事実上軍のクーデターによる辞任となりました。
■ジンバブエで何が起きているのか 政変の背景 - BBCニュース
■ジンバブエのムガベ大統領が辞任、37年間の統治に幕
さらにもうひとつ、こんなニュースも。一度通貨で話題になったら今度は仮想通貨と。まあ仮想通貨のほうがかつての国内通貨よりも信用出来るからかもしれませんが。
■CNN.co.jp : ビットコイン、ジンバブエで価格急騰 国際相場の2倍
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ほか参考
■ジンバブエ基礎データ | 外務省
■ジンバブエ・ドル - Wikipedia