以前、警視庁が行ったという「警視庁が行った戦前戦後100大事件アンケート」について書いてゆき、10位から6位までを書きました。
■警視庁が行った戦前戦後100大事件アンケート(前編) : Timesteps
そして今回、5位から1位までの後編になります。
……と、しれっと始められませんよね。何せ前に書いたのが4月ですから。すみません、途中ブランクが空いたせいで、こちらの後編を作るのをすっかり忘れていました。過去記事を整理していて気づき、慌てて書きました。
というわけで、改めて。まあ先に言っておくともう有名大事件ばかりなので、予想のつく方も多いかと思います。
Police Car / Dick Thomas Johnson
昭和天皇が崩御され、現在の天皇陛下が即位された時の一連の式典です。
日本にとっても昭和が終わり、平成という時代が始まる一大契機でした。
この時は都内でも厳戒態勢が敷かれていました。当然その警備で総動員されたのが警視庁だったが故にこの順位となるでしょう。
記憶に残る限り、その警備体制はかなりのものでした。今だとそこまで、ということもないでしょうが、25年前の当時はまだ昭和から平成の移り変わりの時代で、この機会に事件を起こしかねない人物がいたと目していたせいかもしれません。しかしもう四半世紀前か……。
当時子どもだった私としては、テレビがどのチャンネルを回してもこの大喪の礼や即位の礼といった皇室絡みのことだけやっていたのを思い出します(故にここからレンタルビデオ屋が発展したという噂もあるくらいで)。
ちなみに今上天皇陛下はご自分の式については簡素な葬式や火葬を望まれており、宮内庁もそれに従う方針とのこと。
■400年ぶり「火葬」両陛下の思いとは… | 日テレNEWS24
人が死なない(あくまで直接的には、ですが)事件においては戦後最大のものと言える事件。その手際の完璧さ、その後の金銭の使われたルートが全く掴めないことなどから、何度もドラマや小説の題材になりました。
事件の規模、知名度も上位に来た理由でしょうが、何よりも「逮捕出来なかった」という点が大きいでしょう。それの原因はいろいろな物が言われますが、初期に事件を甘く見すぎて初動を誤り、大量消費社会の中、時間の流れで証拠を次々と見失ってしまったという反省があるのかもしれません。
ちなみにこの事件では、犯人と間違われて報道された人に対する報道被害も発生しています。
■日本における報道被害の歴史 : Timesteps
■参考:三億円事件 - Wikipedia
トップバリュ カップヌードル / Norio.NAKAYAMA
おそらく上位に入ると思っていたものですが、ここで入りました。
長野県のあさま山荘に人質をとって立て籠もった連合赤軍に対して、警視庁と長野県警が突入&救出を試みたというもの。激しい攻略策件や銃撃戦は、当時の映像の他、何度も映画やドラマ化されているのでご存じの方も多いと思われます。象徴的なのは鉄球、あと寒さをしのぐためのカップラーメン。
しかし、ただでさえ衝撃的な突入シーンに加え、国民に更に衝撃を与えたのは、その後の捜索の結果でしょう。この連合赤軍がキャンプを行っていた妙義山の山岳ベースにおいて、「総括」における事実上の大量殺人(12名+別の場所で2名)が行われ、そして多数の死体が山中に埋められていたこと。この大量殺人だけでも、戦後類を見ないほどでした。この発覚により、ただでさえ衰退気味だった新左翼運動に対する国民の支持はどん底に落ち、運動は衰退してゆくことになります。
■参考:連合赤軍あさま山荘事件
警察側のアンケートとして見た場合は、あさま山荘事件において警察官二名が銃撃により殉職しているのが事件後30年以上経った今もアンケートでも上位に入る大きな要因でしょう。
ただ、警察にとってもうひとつ忘れられないであろうことは、この事件の犯人の一部がその後クアラルンプールのアメリカ大使館占拠事件の超法規的処置により国外に脱出し、司法による裁きを与えられていないことがあるでしょう(ちなみに残りの主犯の3人は、公判前に自殺、数年前に病死、現在も死刑囚として収監中)。実際「あさま山荘はまだ終わっていない」と思っている人もいるようです。
あと、ここでも人質の女性が立てこもり当時、まるで犯人と懇意にしていたような報道をされて攻撃されるという、報道被害が発生しています。
最近では山本直樹氏がイブニング誌上において、この一連の運動を題材にした『レッド』を連載中。ちなみに2014年末時点では、ちょうど連載で総括による大量殺人が始まっており、緊張が高まっているところです。
レッド(1) (KCデラックス イブニング )
余談ですが、鉄球で破壊されたように思えたあさま山荘は、その後も修理されて使われていたようです。現在もあさま山荘は存在し、一時期デザイン会社が買い取ったあと、今は中国の企業が所有しているようです。
IMG_4581 / OKAMOTOAtusi
事件ではなく災害ですが、当然上位に来たという感じ。もうこれについては説明は不要でしょう。
この時はまさに非常事態で、自衛隊から各地の警察消防などあらゆる組織が総動員体制でした。
ただ、この影響はまだ現在進行形と言えるので、客観的に振り返ってみるにはまだ時間がかかると思います。
Tokyo Cityscape - 30 / Kabacchi
これについてはもう予想通りに結果かもしれません。一位は1995年に発生した、オウム真理教事件でした。
東京直下、しかも官庁街で起きた大規模テロ事件ということで、警視庁のみならず東京都の、いや全国の警察から消防隊、医者、自衛隊などなど数え切れない人が総動員されたのは、20年経ってもリアルタイムで味わった人はその衝撃を消すことはできないでしょう。
しかも、地下鉄サリン事件以外に、坂本弁護士事件、松本サリン事件、公証役場殺人事件などなどひとつでも重大事件に数えられるようなものが束になっているのですから、当然の結果と思われます。
おそらく治安面、警察面に関しても、この1995年以来大きく変わったところというのは多数有るのではないでしょうか。駅のゴミボックスとか当時警戒のために撤去されてから、いまだにあまり復活してませんし(まあこれは911が起きて海外のテロ防止の面が強いでしょうが)
そして前編の6位でも登場した、長年指名手配されていた3名が2012年に逮捕されたことで、やっと一区切りとなったのも大きいでしょう。
せっかくなので、10位以下もざっと見てゆきます。
傾向として警視庁警察官、つまり東京を中心とした警官へのアンケートということで、警察官が被害に遭った事件が上位に来る傾向があるようです。前回のエントリーで練馬区中村北二丁目アパート内強盗殺人事件について書いた折、それより以前に近くで起きた「中村橋派出所警察官殺害事件」にも少し触れましたが(練馬区中村北二丁目アパート内強盗殺人事件はそれからどうなったか : Timesteps)、それが19位と上位に上がっておりました(個人的には実家近くだったのでそのくらい上位ですが)。
同様に東村山署旭が丘派出所警察官殺害事件も13位、立川署警察官による拳銃使用殺人事件が11位、板橋署宮本警部殉職(これは2008年、自殺者を助けて事故死した事故)が15位と高め。
あと、目立つ事件ではグリコ・森永事件が27位、日航機御巣鷹山墜落事故が25位、三里塚闘争が26位、女子高生コンクリート詰め殺人事件が24位など。これらは全国の警察アンケートだったら、もっと上位になりそうな感じはあります。
対して経済犯罪事件は低め。やはり人が死んでいるような事件で、記憶に新しいもののほうが上に来ていますね。当然と言えば当然かもしれませんが。
さて(途中間が相当開いてしまいましたが)ざっと見て来ました。警察の側から見た戦後事件史の資料の一つとして貴重なものだと思えます。
このようなアンケートは戦後事件史的に貴重なので、警視庁管内のみならず、全国でやってほしい感じもします。
■警視庁が行った戦前戦後100大事件アンケート(前編) : Timesteps
そして今回、5位から1位までの後編になります。
……と、しれっと始められませんよね。何せ前に書いたのが4月ですから。すみません、途中ブランクが空いたせいで、こちらの後編を作るのをすっかり忘れていました。過去記事を整理していて気づき、慌てて書きました。
というわけで、改めて。まあ先に言っておくともう有名大事件ばかりなので、予想のつく方も多いかと思います。
Police Car / Dick Thomas Johnson
5位・大喪の礼/即位の礼・大嘗祭
昭和天皇が崩御され、現在の天皇陛下が即位された時の一連の式典です。
日本にとっても昭和が終わり、平成という時代が始まる一大契機でした。
この時は都内でも厳戒態勢が敷かれていました。当然その警備で総動員されたのが警視庁だったが故にこの順位となるでしょう。
記憶に残る限り、その警備体制はかなりのものでした。今だとそこまで、ということもないでしょうが、25年前の当時はまだ昭和から平成の移り変わりの時代で、この機会に事件を起こしかねない人物がいたと目していたせいかもしれません。しかしもう四半世紀前か……。
当時子どもだった私としては、テレビがどのチャンネルを回してもこの大喪の礼や即位の礼といった皇室絡みのことだけやっていたのを思い出します(故にここからレンタルビデオ屋が発展したという噂もあるくらいで)。
ちなみに今上天皇陛下はご自分の式については簡素な葬式や火葬を望まれており、宮内庁もそれに従う方針とのこと。
■400年ぶり「火葬」両陛下の思いとは… | 日テレNEWS24
4位・三億円事件
人が死なない(あくまで直接的には、ですが)事件においては戦後最大のものと言える事件。その手際の完璧さ、その後の金銭の使われたルートが全く掴めないことなどから、何度もドラマや小説の題材になりました。
事件の規模、知名度も上位に来た理由でしょうが、何よりも「逮捕出来なかった」という点が大きいでしょう。それの原因はいろいろな物が言われますが、初期に事件を甘く見すぎて初動を誤り、大量消費社会の中、時間の流れで証拠を次々と見失ってしまったという反省があるのかもしれません。
ちなみにこの事件では、犯人と間違われて報道された人に対する報道被害も発生しています。
■日本における報道被害の歴史 : Timesteps
■参考:三億円事件 - Wikipedia
3位・あさま山荘事件
トップバリュ カップヌードル / Norio.NAKAYAMA
おそらく上位に入ると思っていたものですが、ここで入りました。
長野県のあさま山荘に人質をとって立て籠もった連合赤軍に対して、警視庁と長野県警が突入&救出を試みたというもの。激しい攻略策件や銃撃戦は、当時の映像の他、何度も映画やドラマ化されているのでご存じの方も多いと思われます。象徴的なのは鉄球、あと寒さをしのぐためのカップラーメン。
しかし、ただでさえ衝撃的な突入シーンに加え、国民に更に衝撃を与えたのは、その後の捜索の結果でしょう。この連合赤軍がキャンプを行っていた妙義山の山岳ベースにおいて、「総括」における事実上の大量殺人(12名+別の場所で2名)が行われ、そして多数の死体が山中に埋められていたこと。この大量殺人だけでも、戦後類を見ないほどでした。この発覚により、ただでさえ衰退気味だった新左翼運動に対する国民の支持はどん底に落ち、運動は衰退してゆくことになります。
■参考:連合赤軍あさま山荘事件
警察側のアンケートとして見た場合は、あさま山荘事件において警察官二名が銃撃により殉職しているのが事件後30年以上経った今もアンケートでも上位に入る大きな要因でしょう。
ただ、警察にとってもうひとつ忘れられないであろうことは、この事件の犯人の一部がその後クアラルンプールのアメリカ大使館占拠事件の超法規的処置により国外に脱出し、司法による裁きを与えられていないことがあるでしょう(ちなみに残りの主犯の3人は、公判前に自殺、数年前に病死、現在も死刑囚として収監中)。実際「あさま山荘はまだ終わっていない」と思っている人もいるようです。
あと、ここでも人質の女性が立てこもり当時、まるで犯人と懇意にしていたような報道をされて攻撃されるという、報道被害が発生しています。
最近では山本直樹氏がイブニング誌上において、この一連の運動を題材にした『レッド』を連載中。ちなみに2014年末時点では、ちょうど連載で総括による大量殺人が始まっており、緊張が高まっているところです。
レッド(1) (KCデラックス イブニング )
余談ですが、鉄球で破壊されたように思えたあさま山荘は、その後も修理されて使われていたようです。現在もあさま山荘は存在し、一時期デザイン会社が買い取ったあと、今は中国の企業が所有しているようです。
2位・東日本大震災
IMG_4581 / OKAMOTOAtusi
事件ではなく災害ですが、当然上位に来たという感じ。もうこれについては説明は不要でしょう。
この時はまさに非常事態で、自衛隊から各地の警察消防などあらゆる組織が総動員体制でした。
ただ、この影響はまだ現在進行形と言えるので、客観的に振り返ってみるにはまだ時間がかかると思います。
1位・オウム真理教事件
Tokyo Cityscape - 30 / Kabacchi
これについてはもう予想通りに結果かもしれません。一位は1995年に発生した、オウム真理教事件でした。
東京直下、しかも官庁街で起きた大規模テロ事件ということで、警視庁のみならず東京都の、いや全国の警察から消防隊、医者、自衛隊などなど数え切れない人が総動員されたのは、20年経ってもリアルタイムで味わった人はその衝撃を消すことはできないでしょう。
しかも、地下鉄サリン事件以外に、坂本弁護士事件、松本サリン事件、公証役場殺人事件などなどひとつでも重大事件に数えられるようなものが束になっているのですから、当然の結果と思われます。
おそらく治安面、警察面に関しても、この1995年以来大きく変わったところというのは多数有るのではないでしょうか。駅のゴミボックスとか当時警戒のために撤去されてから、いまだにあまり復活してませんし(まあこれは911が起きて海外のテロ防止の面が強いでしょうが)
そして前編の6位でも登場した、長年指名手配されていた3名が2012年に逮捕されたことで、やっと一区切りとなったのも大きいでしょう。
10位以下の注目
せっかくなので、10位以下もざっと見てゆきます。
傾向として警視庁警察官、つまり東京を中心とした警官へのアンケートということで、警察官が被害に遭った事件が上位に来る傾向があるようです。前回のエントリーで練馬区中村北二丁目アパート内強盗殺人事件について書いた折、それより以前に近くで起きた「中村橋派出所警察官殺害事件」にも少し触れましたが(練馬区中村北二丁目アパート内強盗殺人事件はそれからどうなったか : Timesteps)、それが19位と上位に上がっておりました(個人的には実家近くだったのでそのくらい上位ですが)。
同様に東村山署旭が丘派出所警察官殺害事件も13位、立川署警察官による拳銃使用殺人事件が11位、板橋署宮本警部殉職(これは2008年、自殺者を助けて事故死した事故)が15位と高め。
あと、目立つ事件ではグリコ・森永事件が27位、日航機御巣鷹山墜落事故が25位、三里塚闘争が26位、女子高生コンクリート詰め殺人事件が24位など。これらは全国の警察アンケートだったら、もっと上位になりそうな感じはあります。
対して経済犯罪事件は低め。やはり人が死んでいるような事件で、記憶に新しいもののほうが上に来ていますね。当然と言えば当然かもしれませんが。
さて(途中間が相当開いてしまいましたが)ざっと見て来ました。警察の側から見た戦後事件史の資料の一つとして貴重なものだと思えます。
このようなアンケートは戦後事件史的に貴重なので、警視庁管内のみならず、全国でやってほしい感じもします。
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