『文藝春秋』の2014年4月号に、非常に興味深い記事が載っていました。それは「警視庁現役5万人が選んだ100大事件」というもの。これは、警視庁が創立140周年を記念して、全職員5万人にアンケートをとり、事前に選ばれた100の事件の中から3つを理由つきで選ぶという方法で選ばれたものです。

主に警視庁の事件(つまりは東京都)に関するものを中心として事前に選ばれているものであり、今まで起きた全事件が対象ではないのですが、戦前戦後を通して警察官の目線でどんな事件が重大事件として記憶に残っているかという調査はこれまで聞いたことがなかったので、これはとても貴重なデータであり、興味が湧きました。

そこでここではそのうち記事でもクローズアップされていた上位10位の事件について、どんな事件だったかを軽く説明しつつクローズアップしたいと思います。
警視庁
警視庁 / atgw



10位・八王子スーパー強盗殺人事件


Mount Takao
Mount Takao / Dick Thomas Johnson


1995年7月30日、東京都八王子市のスーパーマーケットの女性スタッフ3人(うち女子高校生2名)が殺害された事件。事件の凶悪性、特に一般人に対して銃が向けられたということから非常に大きな話題となりました。しかし現在もまだ未解決なままであり、代表的な未解決事件のひとつとなっています。

2010年の刑事訴訟法改正により、凶悪事件の公訴時効が撤廃されたため、現在もなお捜査中です(公訴時効撤廃の経緯についてはあとでもうちょっと)。

去年末、カナダにいた中国籍の男が何らかの事情を知っている可能性があると、旅券法違反で事情聴取を受けたようですが、それ以後新しい情報は入ってきておりません。


■参考:八王子・スーパー「ナンペイ」店員射殺事件
■参考:八王子スーパー強盗殺人事件 - Wikipedia


9位・西南の役


西郷隆盛
西郷隆盛 / alberth2


明治初期、1977年に発生した士族の反乱。起こしたのは西郷隆盛を中心とした薩摩藩士族。相次ぐ不平士族の武力反乱のうちでも最大の反乱となりました。約30,000人の薩摩士族に対して、政府鎮圧軍は約70,000人を導入。豪の剣術を誇る薩摩藩士に対して、政府軍も抜刀隊などの精鋭、それと最新式の銃などによって応戦。
結果的に双方とも6,000人超の死者を出しつつ、明治新政府が圧倒してゆき、勝利。西郷隆盛は「晋どん、もう、ここでよか」の言葉を最期に自決します。

このあたりの歴史は、江戸末期からの流れもあって相当興味深いのですが、今日は歴史語りではないので割愛します(実は本文、筆の勢いに任せてあまりにもエピソードを書きすぎてしまったためにごそっと削りました)。

■参考:西南戦争 - Wikipedia


このアンケートをみて「え?」と思った方も多いでしょう。私も思いました。知名度は高くても、ニュースなどより歴史教科書で知った方のほうがはるかに多いものですからね。
ここでこれが出て来た理由は、警視庁においての最初の大事件という、歴史的意味合いが強いでしょう。警視庁は1874年に設立され、一時西南戦争前後に東京警視本署と名前を変えつつも今まで続いている組織ですのでこの事件が創設したての頃の最初にして最大の重大事件、となるわけですね

余談としては当時の警視庁には「藤田五郎」と名を変えた旧新撰組三番隊隊長齋藤一が所属しており、西南戦争にも参加し、結構活躍したとの話(他にも元新撰組が何名も参加)。マンガ『るろうに剣心』での齋藤一像は大半創作と思われますが、警視庁に所属していたというところは史実となります。


8位・秋葉原無差別殺傷事件


秋葉原無差別殺傷事件から2年、献花台には多くの花
秋葉原無差別殺傷事件から2年、献花台には多くの花 / fukapon


2008年(平成20年)6月8日、歩行者天国最中の秋葉原にて、突如青信号を横断中の歩行者5人をはね飛ばし、その後運転していた加藤智大(当時25歳)が、持っていたダガーで通行人を次々と攻撃。結果警察官が駆けつける10分程度の間に、トラックの衝突とナイフでの殺傷により7名が死亡、10名が負傷の大惨事となりました。

記憶に残っている方も多い事件でしょう。私も当時秋葉原で勤務していた知り合い数人から、現場近くにいたという情報を聞きました。
ちなみにアンケートにある警察官のコメントに、「現場に到着し、上司への第一報を「戦争の現場です」と言った記億がある」というものがあったのがとても印象的でした。当時の報道を思い出します。

この事件としては、日曜日の歩行者天国でいきなり大量殺人が起きたこと、犯行以前にネットの掲示板で予告めいた投稿がされていたことが話題となりました(ついでにオタクの町と言われる秋葉原で起き、被害に遭ったにもかかわらず、何故かオタク的なものが攻撃される報道なども)。


これ以後、秋葉原の歩行者天国は休止されてしまったままになっていました(とはいえこればかりではなく、他のマナー的なことなども問題になっていや矢先だったのもあるのですが)が、2011年に復活します。
あと、秋葉原での刃物類の持ち歩きにかなり過敏になっており、事件後は男性がよく職務質問を受けた、ちょっとしたカッター程度のものでも、事情聴取を受けたといった旨の話題がよくありました。

事件が発生した6月8日には、毎年事件現場に花が添えられていました。

千代田区ホームページ - 秋葉原献花
■参考:秋葉原通り魔事件 - Wikipedia


7位・世田谷一家殺害事件


2000年の大晦日、世田谷区上祖師谷において、夫婦と子どもの一家4人が刃物で殺されているという事件が発生。子どもはまだ8歳と6歳という年齢。20世紀最後の日の残虐な犯行に世間の注目が集まります。

しかし、捜査は難航。手がかりとなるものは出てくるのですが、有力な証拠と結びつかないまま迷宮入り状態となってしまいます。
その後断片的な情報(犯人か国外に潜んでいるなど)が、週刊誌などから流れてくることはたまにあるのですが、残念ながらそれが本当かは不明であり、そして犯人逮捕に結びついてはいません。

事件の詳細は以下に詳しいです。

世田谷一家惨殺事件 - 無限回廊

年末にはこの事件のニュースが流れており、去年末も同様でもう13年目となります。


この事件の被害者遺族である方が2009年、ほかの事件遺族の方と協力して殺人事件被害者遺族の会である「宙の会(そらのかい)」を結成。公訴時効の撤廃を求めてゆきます。その結果。2010年に、重大事件の公訴時効廃止などを盛り込んだ改正刑事訴訟法が成立することとなりました。故に現在も時効は存在せず、捜査は続いています。

現在も懸賞金付で有力な情報が募集されていますので、その募集詳細が書いてあるリンクを以下に。

上祖師谷三丁目一家4人強盗殺人事件 :警視庁


実は自分、これがラインクインしていたことにほっとしました。というのは事件発生からもう13年が経ち、世間のみならず警視庁でも風化してきているのではないかと思っていたからです。さらに未解決事件でもあり、アンケートに入りにくいものであるかもしれないので。しかしこれだけ忘れずに注目を集めているということが、まだ事件解決に向く意思が強いと確認したので、是非真犯人を見つけ出してほしいものです。

■参考:世田谷一家殺害事件 - Wikipedia


6位・オウム真理教事件特別手配3人の逮捕


指名手配
指名手配 / solo_time


1995年の地下鉄サリン事件の時に指名手配されたオウム真理教のメンバーの大半が逮捕されましたが、そのうち3人が未逮捕のままの状態で、15年以上が過ぎ去りました。

しかし2011年大晦日、いきなり時が動き出します。

まず、容疑者の一人であった平田信被告が2011年大晦日にいきなり警察に出頭。
その後2012年3月、容疑者の一人である菊地直子被告が神奈川県に住んでいるという情報が寄せられ、逮捕。
そのからの関係者の供述などにより、地下鉄サリン事件や目黒公証役場事務長の監禁致死事件で特別手配されていた高橋克也容疑者の居場所の捜査が行われ、ニュースで注目されます。そして2012年6月に蒲田の漫画喫茶からの通報で逮捕されることになりました。

オウム高橋克也容疑者を逮捕 逃亡生活17年  :日本経済新聞

上の写真のように、手配書の常連となっていたにもかかわらず一向に捕まる気配がなかったので、世間では、もうすでに(ことによってはオウム事件直後に)死亡しているのではないかという推測も結構多数になっていた時のいきなりの進展だったので、世の中を驚かせました。

現在3人の公判が行われておりますが、その中では死刑が確定した元オウム幹部が証言に出廷したことが話題となりました(死刑確定した後にそうなるのは異例なので)。

オウム事件についてはもうちょっと後編で書きます(ネタバレだけど、出てこないと思っている人はいないと思うので)。



さて、このまま1位まで書ききってしまおうと思ったのですが、長くなってきたので後編に回します。

警視庁が行った戦前戦後100大事件アンケート(後編) : Timesteps


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その他参考

■警視庁創立140年特別展 警視庁全職員アンケートで選んだ首都140年の十大事件 ※リンク切れ

■参考書籍
文藝春秋 2014年 04月号 [雑誌]文藝春秋 2014年 04月号 [雑誌]

文藝春秋 2014-03-10
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