ネットをやっている人なら、望んでいない広告メールや詐欺まがいっぽいメール、いわゆる「迷惑メール」が届いたことはほとんどの方にあると思われます。

さて、最近ネットやメールを始められたのではない方なら、一時期それら迷惑メールのタイトルに「未承諾広告※」というものがつけられたのを見たことがあると思います。中には「※未承諾広告」とか「未 承 諾 広 告 ※」みたいな変形もありましたね。そういったものが大量に届いた思い出のある人もわりといるのではないでしょうか。

しかしながら、最近届くメールではそういった「未承諾広告※」のついたメールを見たことのある人はほとんどいないでしょう。これはフィルタリング技術が進んだからなのでしょうか。いいえ、実は全然別の理由があります。
せっかくなので迷惑メールの歴史を振り返りながら、非承諾広告メールはどうなったのかというのを、今日は書いていこうと思います。
spammail


インターネット誕生以前から存在した迷惑メール


迷惑メールの歴史はいつまでさかのぼれるかというと、実はインターネット登場前にまで。というのも、電子メールという存在自体、インターネット登場前から存在したからです(最初の電子メールは1965年と言われています)。

そして、最初に認定されたのは、1978年5月1日に393人のユーザーに送信された広告メールだったそうです。

■参考:スパムメール生誕30周年記念、世界初のスパムメールは一体何だったのか? - GIGAZINE

このようなメールの受け手が意図せず迷惑だと思うメールのことは、「スパムメール」と呼ばれるようになります。『SPAM』というものは肉の缶詰ですが、イギリスのコメディユニット、モンティ・パイソンが、この名前を連呼するというコントをやったため、しつこく送り続けてくるイメージと重なり、そう呼ばれるようになります。

以下はYouTubeにあったもの。
 

ちなみにSPAM自体は、地方(沖縄あたり)によってはわりとメジャーな缶詰で、関東近県でもちょっと大きめのスーパーやAmazonなどで普通に売ってます。パンとかと一緒に食うのが美味。

 ホーメル スパム レギュラーN 340g

■参考:スパム - Wikipedia
■参考:電子メール - Wikipedia


インターネット&携帯電話普及による迷惑メール急増


そして1990年代後半よりインターネットが普及してくると、本格的に迷惑メールの数が増え始めます。特に狙われたのは、HPなどでメールアドレスを公開していた人。それが集められて、迷惑メールの標的になった模様です。あと、当時のYahoo!オークションは出品者、落札者(入札者)のメールアドレスが第三者からも見える状況になっていましたから、そういうところから収集されることもあったようです。

しかもインターネット黎明期はフリーメールアドレスはあまりなく、プロバイダから支給されるメールのみでしたから、一度そこが迷惑メールの巣窟になるとかなりやっかいなことになっていました。

■参考:sendmail開発者Eric Allmanが語る「ネットの夜明けとスパムの歴史」 - ニュース:ITpro

そして2000年代に入るとPCでのメール利用に加えて携帯電話でのメールの利用も盛んになります。そして同時に、迷惑メールの数も増えてきます。特に携帯電話の場合、そういったメールを受信することでもパケット代がかかることから、利用者の間には迷惑メールへの嫌悪感や排除の要望が高まってくることになります。


迷惑メール対策法と「未承諾広告※」の誕生


そこで、2002年に「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」というものが作成、施行されることになります。そして、「特定商取引に関する法律」とセットで、このような広告を目的とした迷惑メールが規制されることになります。
そしてここで不特定の人に送る商用ダイレクトメールには件名にあの有名な「未承諾広告※」と表記することが義務づけられました。

 しかしフィルタリング設定において「未承諾広告※」と表記されているものを捨ててしまうということは出来たのですが、そのうち迷惑メールを送る側は「※未承諾広告」とか、「未承諾 広告※」、「未 承 諾 広 告 ※」とかといったように文字を微妙に変えてフィルタリング逃れをしてくるケースが相次ぎました。
さらに、「未承諾広告※」をつければ、迷惑メールをいくら出してもいいというふうにも受け取られ、結局のところ法律の目的に反して、迷惑メールが減ることはなかったようです。

ちなみに、送られてきた未承諾広告のメールを集めているサイトがあったので、以下に。コレを見ると、2004年くらいまでは少なくとも存在していたようですね。

未承諾広告※マニア


法改正によるさらなる迷惑メール規制


そこで2005年、特定電子メールの送信の適正化等に関する法律の改正が行われます。そこでは送信者情報を偽装した広告・宣伝メールの送信について、罰則が設けられることになります。

第五条  送信者は、電子メールの送受信のために用いられる情報のうち送信者に関するものであって次に掲げるもの(以下「送信者情報」という。)を偽って特定電子メールの送信をしてはならない。
一  当該電子メールの送信に用いた電子メールアドレス
二  当該電子メールの送信に用いた電気通信設備を識別するための文字、番号、記号その他の符号

罰則は「一年以下の懲役又は百万円以下の罰金」と、刑事罰を含むものとなっています。

しかし、日本国外発のメールが規制対象外だったため、今度は国外のサーバから迷惑メールを送り続ける業者が多数発生したとのこと。
あと、当時の方式は拒否された場合は送れなくなる「オプトアウト方式」というものだったのですが、これは逆に拒絶メールを送ることにより、不特定多数に送られたうちメールが生きている(人が見ている)ということを証明してしまうため、かえってほかの迷惑メールが送られているということで、逆効果になっていた面もあるようです。

そこで総務省は、2008年に再度法改正を行いました。

改正された法律では、送信先の同意を得なければ広告・宣伝メールを送ってはならないとする「オプトイン方式」を採用することになります。
同時に法に実効性をもたせるための規制強化を行い、罰金の最高額を100万円から3000万円に引き上げられました。
また、国際的な連携の取り組みをなす事で、海外からの迷惑メールも防止することになります。

そして改正法は、2008年12月1日より施行されます。おそらくここから日本語の迷惑メールの数は激減したと思われます。少なくとも「未承諾広告」というものをつけても、あらかじめ送信元の同意がないと違法となるため、つけるだけ無駄ということで存在しなくなったと思われます。

「未承諾広告※」表示は効果なし? "同意なき"営業メール禁止へ - 総務省検討 | ネット | マイコミジャーナル
迷惑メール規制法 海外発のメールも摘発対象に - CNET Japan
迷惑メール法改正、『未承諾広告※』が消える日:企業のIT・経営・ビジネスをつなぐ情報サイト EnterpriseZine (EZ)
■参考:特定電子メールの送信の適正化等に関する法律
■参考:「未承諾広告※」をみかけなくなりましたが(Excite Bit コネタ) - エキサイトニュース


「未承諾広告※」は消滅しても、迷惑メールは尽きず


その後ですが、迷惑メールは依然として存在しているのは、ご存じの通り。ただ、自分の体感では実際に目にする件数は減っている感じ。それはメールサーバやメールソフト、Webサービス(G-mailなど)のフィルタリングの精度がかなり上がっているというのが大きいかもしれないです。どっちかというと買ったオンラインショッピングのサイトで、自動的に「広告メールを送る」のチェックボックスがチェックされてて送られてくるメールのほうが(以下略)。

ちなみに法律は施行後三年以内の検討が盛り込まれているため、現在も新たな改正などについて総務省で検討されているようです。

少なくとも「未承諾広告※」という表示のメールはなくなってしまったわけで、それについてのかつて行われていたフィルタリングサービスなどには終了するものもあるようです。


でも、たぶんこのテのものはいたちごっこで、どれだけ対策をしても減りはすれど完全な撲滅はあり得ないでしょうね。それが出来たなら、いたずらや広告の迷惑電話やスパム的なダイレクトメールのほうが先になくなっているはずですから(余談ですが、固定電話の衰退はそういった広告勧誘電話などに対する対策の甘さもあると思います)。

でも、いたちごっこは技術全般に言えることですし、その技術が迷惑メールを送る側に追いつき続ければ、法改正もフィルタリング技術も無駄ではないと考えます。

とりあえず迷惑メールで困っている人は、プロバイダやメーラー、セキュリティソフトの設定をちょっといじるだけで、だいぶマシになると思います。



★2014/12/19 少し追記

むしろ現在はフィルター(Gmalなど)が発達しているため、迷惑メールが来てもあまり目に入らないようにすることがわりと出来るようになってますね。
そのかわり、詐欺メール、とりわけ銀行など金融機関絡みを騙ったフィッシングメールが大きな問題となっており、銀行のサイトなどでも大きな文字で注意が呼びかけられています。
ネットが広まり、セキュリティ知識がない人も金融絡みのサイトを使うようになった面が大きいでしょうか。
でも、このあたりもたぶんいたちごっこなのでしょうね。