前回書いた「非実在条例(東京都青少年育成条例改正問題)はそれからどうなったのか【前編】」の続きになります。未読の方は前編からどうぞ。
■非実在条例(東京都青少年育成条例改正問題)はそれからどうなったのか【前編】
ちなみに今回書くところは現在進行形の事案も入るため、追記や変更が加わるかもしれませんのでご了承ください。
※この文章は2010年12月1日の執筆時点のものです。2016年1月10日リンク切れ修正。
東京都庁 - Tokyo Metropolitan Government Office / ヌンヌン
3月の議会で継続審議が決定し、次の議会が開催される6月に改めてこの法案の可否についての決議がとられることになりました。
といっても、それまでの間、何もなかったというわけではありません。いろいろな動きがありました。たとえば4月には、都側の見解をまとめた文書がHPに掲載されました。
しかし、これはかえって基準が曖昧なままであり、極論有名作品や大家の作品ならOKというような恣意的な運用が可能ということになり得るとして、反対の声が消えることはありませんでした。
■都の青少年育成条例、継続審議が決定 6月に先送り - ITmedia News
■「しずかちゃんの入浴」「ワカメちゃんパンチラ」はOK 2次元児童ポルノ規制条例で東京都 - MSN産経ニュース ※リンク切れ
そしてもうひとつ、ここでネットで話題になった事が起こります。
この条例提出の前に、東京都はこの問題についてのパブリックコメントを募集しており、都議会の議員さんがそれの公開を求めたのですが、期限ギリギリ(5月始め)まで出てこなかった挙句、それのあちこちが黒塗りとなって隠されていたということで、都に不利な情報を隠蔽したのではないかということで話題になりました。
■Togetter - 「都条例パブコメが黒塗りだらけだった件」
■ASCII.jp:非実在青少年は、なぜ問題なのか?|ゼロから分かる東京都青少年健全育成条例改正問題
そして3月に反対の声明を出した団体や、それ以外の団体からも反対の生命が出されました。
まずはマンガ家の団体や出版社。さらに法曹分野から東京第二弁護士会、さらに日弁連もこの条例に対しての会長声明を発表しました。
■漫画家1421人、出版社10社“反対” 都の青少年健全育成条例案 - MSN産経ニュース ※リンク切れ
■第二東京弁護士会ひまわり | 「東京都青少年の健全な育成に関する条例」の一部改正案についての会長声明
■日本弁護士連合会│Japan Federation of Bar Associations:「東京都青少年の健全な育成に関する条例」の一部改正に関する会長声明
6月の定例議会が始まると、再度法案が提出されます。
しかし中身はほとんど修正されず、3月時の法案の一部の文字を書き換えるに留まったものでした。
ここでも激しい議論が行われましたが、結果14日に民主党、共産党、生活者ネットワーク、自治市民'93の野党はこの法案の否決を決定。そして14日の総務委員会を経て、16日の本会議で正式に否決されました。都議会で知事提出の条例案が否決されるのは12年ぶりとのこと。
しかし、この当時から石原都知事は再提出の意思を示していました。
■「非実在青少年」条例改正案、都議会本会議で否決へ - ITmedia News ※リンク切れ
■Togetter - 「【非実在少年規制】松下玲子都議の都政報告会【へーそうだったのか】」
東京都の定例議会は9月にも開催されましたが、そこでは法案の再提出は行われませんでした。
しかし、都知事は早期の法案提出を表明し、12月定例と議会へ向けての動向が注目されることになります。
■石原都知事の所信表明「青少年健全育成条例改正案を早期に提出したい」 -INTERNET Watch
その裏側では東京都青少年課から12月の都議会に向けて青少年条例の改正を求める要望書を出して欲しいと、団体に通達があったとか、署名を求められたとの情報があります(ただ、あくまでネットソースなので断言は出来ませんので念のため)。
■参考:Togetter - 「【非実在青少年】東京都がマンガ規制の要望書をあちこちに配布中【マッチポンプ】」
11月22日、東京都青少年健全育成条例改正案の条文が公表されました。議会開会の直前(8日前)のことになります。
■東京都、青少年健全育成条例の改正案を今月末からの都議会に再提出 -INTERNET Watch
そこからは「非実在青少年」の文面は削除されましたが、今回の条例案では、「漫画、アニメーションその他の画像(実写を除く。)」という形で、マンガやアニメといったものが指定されていて、且つ「刑罰法規に触れる性交若しくは性交類似行為」が禁止事項になっています。
つまり、キャラの年齢が関係なくなってしまったため、規制の幅は広がってしまったとも考えられることになります。
さらに、今までにはなかった「婚姻を禁止されている近親者間における性交」つまり近親相姦の描写も対象となっています。近親婚自体は法律により出来ませんが、近親相姦自体は法規制されておりません。しかしこのような、道徳上の観念を法で規制するということの問題も新しく出てきました。おまけに近親相姦自体は歴史ものではよくありますし。
また、否決された前回までの条例と、趣旨的には変わっていないということも言われています。
その他問題点もあるので、以下を参考に。
■青少年課長も「前と言っていることは変わらない」と認める『新・健全育成条例改定案』の中身 - 日刊サイゾー
■参考:「非実在」削除も、規制範囲はさらに拡大! 東京都青少年健全育成条例改正案:PJ NEWS | 909 - ※リンク切れ
■参考:第7条第2号から見える「東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例」の問題点: 弁護士山口貴士大いに語る
これに対し、日本ペンクラブ、東京弁護士会などの各種団体から反対の声明が出されました。
■東京都青少年健全育成条例の修正改定案に反対する:日本ペンクラブ
■「東京都青少年の健全な育成に関する条例」の一部改正案に対する会長声明|東京弁護士会 | お知らせ | 東京弁護士会(法律相談・弁護士相談等)
■私たちは、再提出される「東京都青少年健全育成条例改正案」に反対します!:出版倫理協議会(PDF) ※リンク切れ
■東京都青少年健全育成条例改定案に関する声明:自由人権協会
■東京都青少年育成条例の改定案に反対する声明|こんな本があるんです、いま
■「規制の範囲、むしろ拡大」――漫画家3団体、都条例改正案に反対声明 - ITmedia News
また、11月29日にはちばてつやさんや秋本治さんなどのマンガ家が反対の会見を行いました。
■「漫画から翼を奪う」と秋本治さん 都条例改正案に漫画家、出版社が反対会見 - ITmedia News
そして30日に開催された都議会本会議を経て、今に至ります。そして今、現在進行中の事案となっています
今後のスケジュールですが、12月7日から本会議がはじまり、そこで代表質問が行われ、翌8日に一般質問、議案の常任委員会への付託の決定、請願・陳情(新規分)付託が行われます。与党は賛成の方針ですから、野党の賛否次第で法案の可否が決定します(その後15日の本会議で採決)。
都議会共産党は反対となる見解を出しました。
■日本共産党 東京都議会議員団|申入れ・談話・声明
しかし民主党と生活者ネットワークはまだ方針が未定であり、現在(2010/12/1)時点では、これが可決されるか、否決されるかはわかりません。ただ、前回までと同じように否決されるとは限らないばかりが、動向によっては可決の可能性も高いので、大いに注目する必要があるでしょう。
ここまで長く書いてきましたが、私としては、子供(ここで想定するのは小学生くらいの判断力が未熟な子ども)に悪影響を与えないための取り組みは必要だと思いますし、実際に被害を受けている子供に対しての施策も必要と思います。ただ、現行の法案は表現規制をするばかりで、肝心のそこに対して不十分だと感じます。
また、今まで語ってきたように、プロセスに対しての不信があります。故に、今回の条例案は一度廃止して、最初からやり直すべきではないでしょうか。そうしないと仮にこのまま可決しても、法を行使する側とされる側に信頼関係が気づけていない以上反発は続き、適正な法の施行が行われない状態になると考えるので。どうも反対する側も賛成させたい側もこれの可否で終わりと考えている人が多いような気がしますが、民主主義国家での法というものは多くの人が納得しない限り、その施行はままならないものになるというのは歴史が示していると思うので(実際現在存在する各種法や条例でも死文化しているものはあるし)。
ともかく、話を最初に戻して、賛成する人、反対する人の意見を練り合わせる場を作り、話し合う時間が必要ではないでしょうか。そうしたほうが、後々に禍根を残さず、正当な行政が行えると思うのですが。
ともあれ、12月の法案の成立可否は一つの大きな出来事となるのは確かなので、都議会の動向は注目すべきと考えます。
そして、賛成にせよ反対にせよ、何か思うところのある人は、一過性の騒ぎではなく、常にこういった動向への注目を細く長く注目し続け、そして冷静にどうあるべきかを考える必要があると思います。
■非実在条例(東京都青少年育成条例改正問題)はそれからどうなったのか【前編】
ちなみに今回書くところは現在進行形の事案も入るため、追記や変更が加わるかもしれませんのでご了承ください。
※この文章は2010年12月1日の執筆時点のものです。2016年1月10日リンク切れ修正。
東京都庁 - Tokyo Metropolitan Government Office / ヌンヌン
6月議会までの出来事
3月の議会で継続審議が決定し、次の議会が開催される6月に改めてこの法案の可否についての決議がとられることになりました。
といっても、それまでの間、何もなかったというわけではありません。いろいろな動きがありました。たとえば4月には、都側の見解をまとめた文書がHPに掲載されました。
しかし、これはかえって基準が曖昧なままであり、極論有名作品や大家の作品ならOKというような恣意的な運用が可能ということになり得るとして、反対の声が消えることはありませんでした。
■都の青少年育成条例、継続審議が決定 6月に先送り - ITmedia News
■「しずかちゃんの入浴」「ワカメちゃんパンチラ」はOK 2次元児童ポルノ規制条例で東京都 - MSN産経ニュース ※リンク切れ
そしてもうひとつ、ここでネットで話題になった事が起こります。
この条例提出の前に、東京都はこの問題についてのパブリックコメントを募集しており、都議会の議員さんがそれの公開を求めたのですが、期限ギリギリ(5月始め)まで出てこなかった挙句、それのあちこちが黒塗りとなって隠されていたということで、都に不利な情報を隠蔽したのではないかということで話題になりました。
■Togetter - 「都条例パブコメが黒塗りだらけだった件」
■ASCII.jp:非実在青少年は、なぜ問題なのか?|ゼロから分かる東京都青少年健全育成条例改正問題
そして3月に反対の声明を出した団体や、それ以外の団体からも反対の生命が出されました。
まずはマンガ家の団体や出版社。さらに法曹分野から東京第二弁護士会、さらに日弁連もこの条例に対しての会長声明を発表しました。
■漫画家1421人、出版社10社“反対” 都の青少年健全育成条例案 - MSN産経ニュース ※リンク切れ
■第二東京弁護士会ひまわり | 「東京都青少年の健全な育成に関する条例」の一部改正案についての会長声明
■日本弁護士連合会│Japan Federation of Bar Associations:「東京都青少年の健全な育成に関する条例」の一部改正に関する会長声明
条例改正案否決
6月の定例議会が始まると、再度法案が提出されます。
しかし中身はほとんど修正されず、3月時の法案の一部の文字を書き換えるに留まったものでした。
ここでも激しい議論が行われましたが、結果14日に民主党、共産党、生活者ネットワーク、自治市民'93の野党はこの法案の否決を決定。そして14日の総務委員会を経て、16日の本会議で正式に否決されました。都議会で知事提出の条例案が否決されるのは12年ぶりとのこと。
しかし、この当時から石原都知事は再提出の意思を示していました。
■「非実在青少年」条例改正案、都議会本会議で否決へ - ITmedia News ※リンク切れ
■Togetter - 「【非実在少年規制】松下玲子都議の都政報告会【へーそうだったのか】」
9月議会には提出されず
東京都の定例議会は9月にも開催されましたが、そこでは法案の再提出は行われませんでした。
しかし、都知事は早期の法案提出を表明し、12月定例と議会へ向けての動向が注目されることになります。
■石原都知事の所信表明「青少年健全育成条例改正案を早期に提出したい」 -INTERNET Watch
その裏側では東京都青少年課から12月の都議会に向けて青少年条例の改正を求める要望書を出して欲しいと、団体に通達があったとか、署名を求められたとの情報があります(ただ、あくまでネットソースなので断言は出来ませんので念のため)。
■参考:Togetter - 「【非実在青少年】東京都がマンガ規制の要望書をあちこちに配布中【マッチポンプ】」
12月議会への再々提出
11月22日、東京都青少年健全育成条例改正案の条文が公表されました。議会開会の直前(8日前)のことになります。
■東京都、青少年健全育成条例の改正案を今月末からの都議会に再提出 -INTERNET Watch
そこからは「非実在青少年」の文面は削除されましたが、今回の条例案では、「漫画、アニメーションその他の画像(実写を除く。)」という形で、マンガやアニメといったものが指定されていて、且つ「刑罰法規に触れる性交若しくは性交類似行為」が禁止事項になっています。
つまり、キャラの年齢が関係なくなってしまったため、規制の幅は広がってしまったとも考えられることになります。
さらに、今までにはなかった「婚姻を禁止されている近親者間における性交」つまり近親相姦の描写も対象となっています。近親婚自体は法律により出来ませんが、近親相姦自体は法規制されておりません。しかしこのような、道徳上の観念を法で規制するということの問題も新しく出てきました。おまけに近親相姦自体は歴史ものではよくありますし。
また、否決された前回までの条例と、趣旨的には変わっていないということも言われています。
その他問題点もあるので、以下を参考に。
■青少年課長も「前と言っていることは変わらない」と認める『新・健全育成条例改定案』の中身 - 日刊サイゾー
■参考:「非実在」削除も、規制範囲はさらに拡大! 東京都青少年健全育成条例改正案:PJ NEWS | 909 - ※リンク切れ
■参考:第7条第2号から見える「東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例」の問題点: 弁護士山口貴士大いに語る
これに対し、日本ペンクラブ、東京弁護士会などの各種団体から反対の声明が出されました。
■東京都青少年健全育成条例の修正改定案に反対する:日本ペンクラブ
■「東京都青少年の健全な育成に関する条例」の一部改正案に対する会長声明|東京弁護士会 | お知らせ | 東京弁護士会(法律相談・弁護士相談等)
■私たちは、再提出される「東京都青少年健全育成条例改正案」に反対します!:出版倫理協議会(PDF) ※リンク切れ
■東京都青少年健全育成条例改定案に関する声明:自由人権協会
■東京都青少年育成条例の改定案に反対する声明|こんな本があるんです、いま
■「規制の範囲、むしろ拡大」――漫画家3団体、都条例改正案に反対声明 - ITmedia News
また、11月29日にはちばてつやさんや秋本治さんなどのマンガ家が反対の会見を行いました。
■「漫画から翼を奪う」と秋本治さん 都条例改正案に漫画家、出版社が反対会見 - ITmedia News
そして30日に開催された都議会本会議を経て、今に至ります。そして今、現在進行中の事案となっています
今後どうなるのか
今後のスケジュールですが、12月7日から本会議がはじまり、そこで代表質問が行われ、翌8日に一般質問、議案の常任委員会への付託の決定、請願・陳情(新規分)付託が行われます。与党は賛成の方針ですから、野党の賛否次第で法案の可否が決定します(その後15日の本会議で採決)。
都議会共産党は反対となる見解を出しました。
■日本共産党 東京都議会議員団|申入れ・談話・声明
しかし民主党と生活者ネットワークはまだ方針が未定であり、現在(2010/12/1)時点では、これが可決されるか、否決されるかはわかりません。ただ、前回までと同じように否決されるとは限らないばかりが、動向によっては可決の可能性も高いので、大いに注目する必要があるでしょう。
これから先も続く問題
ここまで長く書いてきましたが、私としては、子供(ここで想定するのは小学生くらいの判断力が未熟な子ども)に悪影響を与えないための取り組みは必要だと思いますし、実際に被害を受けている子供に対しての施策も必要と思います。ただ、現行の法案は表現規制をするばかりで、肝心のそこに対して不十分だと感じます。
また、今まで語ってきたように、プロセスに対しての不信があります。故に、今回の条例案は一度廃止して、最初からやり直すべきではないでしょうか。そうしないと仮にこのまま可決しても、法を行使する側とされる側に信頼関係が気づけていない以上反発は続き、適正な法の施行が行われない状態になると考えるので。どうも反対する側も賛成させたい側もこれの可否で終わりと考えている人が多いような気がしますが、民主主義国家での法というものは多くの人が納得しない限り、その施行はままならないものになるというのは歴史が示していると思うので(実際現在存在する各種法や条例でも死文化しているものはあるし)。
ともかく、話を最初に戻して、賛成する人、反対する人の意見を練り合わせる場を作り、話し合う時間が必要ではないでしょうか。そうしたほうが、後々に禍根を残さず、正当な行政が行えると思うのですが。
ともあれ、12月の法案の成立可否は一つの大きな出来事となるのは確かなので、都議会の動向は注目すべきと考えます。
そして、賛成にせよ反対にせよ、何か思うところのある人は、一過性の騒ぎではなく、常にこういった動向への注目を細く長く注目し続け、そして冷静にどうあるべきかを考える必要があると思います。