今でこそマンガやオタク系の商品を専門に扱う店は増えましたし、インターネット通販でもラクに購入出来ます。しかし一昔前、90年代やそれよりも前の時代はインターネットは一般家庭に存在すら見せておらず、オタクグッズどころかマンガをそれなりに揃えている店もほとんど存在しませんでした。

そんな時代、マンガ専門店としてマンガを求める人たちにとって有名だった店があります。その店の名前は『まんがの森』。東京周辺の主要駅付近に存在しており、特に現在の新宿駅南口近くの店舗が有名でした。
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白夜書房系列のマンガ専門店「まんがの森」


「まんがの森」はもともとはセルフ出版社が運営していた書店でした。しかし当時はマンガ専門店ではなく、成人向けの本などを扱うアダルトショップだったようです。
しかし高田馬場の出版社白夜書房がセルフ出版社を吸収。その後1984年に「まんがの森」としてマンガ専門店として生まれ変わります。
店舗は最初新宿の甲州街道ガード下、新宿場外馬券売り場(今で言うWINS新宿)の近くにありました。当時は前身の書店の流れ、そして白夜書房の取り扱っている雑誌の性質より、男性向けの成人向けのコミック(&実写アダルト本)をよく扱っていた模様。

当時はオタク文化が広まりはじめた頃。しかしネットは一般家庭に影も形もない時代であり、それどころかそういったマンガなどオタク向け商品を売っているところでさえほとんどないような状態でした(ちなみにアニメイト第一号店が池袋にオープンしたのが前年の1983年)。故にそういったものを求める層からのコアな人気が集まります。その勢いで新宿のみならず、高田馬場、池袋などの東京の主要駅圏にも支店を展開してゆきました。


有害コミック運動あたりでの変化


しかし、1990年あたりで「有害コミック運動」が発生。この事件の詳細は以下に。

1990年代の有害コミック運動はそれからどうなったのか : Timesteps

そこで性描写のあるコミックは攻撃の的とされ、それらを扱っていた出版社、書店などもその煽りを受けます。その時まではまんがの森も成年向けが多かった(新宿店では3階がまるまる成年向けだった)のですが、その取り扱いが徐々に減ってゆき、一般向け、すなわち成年マークがついていないマンガの取り扱いが多くを占めるようになります。これは運動の影響のみならず、店舗拡大したことで、アダルト向けから一般向けへのイメージ転換を図ったからかもしれませんが。
ただ、いわゆるエロマンガやエロゲー系の雑誌はそのまま販売していましたし、成人向けがまるまるなくなったというわけではありません。あと、各支店によっても取り扱いの方針は違っていたようです。


まんがの森新宿店の個人的思い出


私は1990年代中頃、このまんがの森新宿店によく通っていました。それはちょうど新宿が学校の帰り道で、ここに寄り、同じく新宿南口にあるタイトーインゲームワールドというゲーセンでゲームをしてから帰るというのがパターンとなっていました。ちなみにタイトーインゲームワールドは今でも存在しています(あとスポット21とか新宿スポーツセンターとか一部の人にだけわかる固有名詞も置いておく)。

新宿タイトーインゲームワールド


その当時まんがの森を利用していた理由としては、マンガやアニメ系雑誌の種類が豊富でここに行けばたいていのものが見つかったこと。そしてそれら雑誌や本の入荷が早かったこともあります。当時はネットもない時代で、且つそういったオタク向けの本(ディープなものではなく、角川系列のものであっても)で欲しい本があっても足を使って探し回らないと見つからないということはよくありました。しかしここ(もしくは神保町)に行けばある可能性が高いというところだったので、非常に重宝しました。

私が行っていた1990年代中頃はライトノベルが黎明期から発展期に移り変わるかどうかという時期で、『スレイヤーズ』がアニメ化になる前の頃でしたが、当時ここの地下フロアにはほかではここまで揃ってないというくらいのラノベ(当時は主に富士見ファンタジア文庫。ソードワールドシリーズとか)やTRPGリプレイ、ゲームブック、翻訳SFなどの本がぎっしりと置いてありました。少女マンガもあったかな。あと新宿地下という空調のせいかすごくカビ臭かった。
あと2階は少年マンガと青年マンガ、3階はA5サイズのマンガ、その上の4階でたまにサイン会とかしていていたような記憶があります。

ただ、ここの特徴としては、立ち読みに関して異常に厳しかったこと。当時からシュリンクによる立ち読み防止の為のシステムはありましたが、ここは費用削減のためかそれをかけていませんでした。しかし少しでも(数秒でも)開けて中を読もうものなら、すぐに「立ち読みはご遠慮下さい!」と大きな声で言われました。むしろ立ち読みしてなくて手に取っただけでも言われたこともありましたし。おそらく今同じことをしたら、ネットで炎上するのではないかなと。

それでもマンガ専門店の店舗数が少なかったこと、そしてその中でも品揃えがよかったことで利用者は多かったです。

飯島愛のCM


さて、『まんがの森』といえば、直接行ったことのない人でも有名なものがあります。それはテレビCM。そしてそれに出演していた故飯島愛さん。



このCMはテレビ東京のアニメタイムなどに流れていたのですが、このインパクトのある歌と踊りで話題になっていました。
また、当時の高田馬場駅利用者には、高田馬場店に掲げられていた桜玉吉氏イラスト(ファミ通の前身ファミコン通信で連載していた『しあわせのかたち』のキャラ)のまんがの森看板を目にした人も多いでしょう。
ほかにもマンガ雑誌やラノベ誌、アニメ雑誌にも前述の絵などの広告を出稿していたので、当時の読者はそれを見た人も鋳ると思います。


2000年代に閉店相次ぐ


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90年代末には新宿、高田馬場、池袋のほかに吉祥寺や津田沼、渋谷や上野や町田など10店舗を構えるようになっていたまんがの森でしたが、2000年代に入りそれらに閉店するところが出始めます。

特にインパクトが大きかったのは、2002年、かつて聖地とと言われた新宿店が閉鎖となったことです。ちなみにこの当時の南口甲州街道付近はタカシマヤタイムズスクエアなどが出来て再開発が進んでいました。そしてその一角には紀伊國屋書店も出来ていました(駅からけっこう遠かったけど)。

そしてその後も2000年代半ばにかけて各地の店舗がどんどん閉鎖してゆきます。
2005年8月に吉祥寺店が閉店、高田馬場店も白夜書房の成人向け関連会社として分割されたコアマガジンの直営店「コアブックス」になった後池袋に移転する形で閉店。そして池袋店も2009年4月に閉店(その後高田馬場から移転する形でコアブックスになった後、それも閉店)。町田店も2009年5月に閉店。

その理由としてはいろいろありますが、まんがやオタク向け商品を取り扱う店舗が急激に増えたことがひとつでしょう。この頃には同時期に出来た『アニメイト』のほか、『とらのあな』など同人誌も扱うような書店の台頭、さらに大手書店でも専用コミックフロアを作るんど、マンガに力を入れて取り扱うところが増えてきていた影響はさるでしょう。特に池袋は激戦区になっていましたし。あと白夜書房そのものの経営状態もあったのかもしれません。

そして、最後に残ったまんがの森上野店も、2013年2月28日、閉店。

「まんがの森」、残っていた唯一の店舗である上野店が2月いっぱいで閉店していた | スラド
まんがの森・上野店が閉店してた・・・ ( その他文化活動 ) - 進め!ホワイト・フラッグ隊!!(仮店舗) - Yahoo!ブログ


新宿店のあったところは今どうなっているか


かつて新宿店があった場所ですが建物は実は今でも存在していて、名前は今も「新宿まんがの森ビル」という名前のようです(参考)。
まんがの森閉店後はテナントが何度か変わっているようで、一時期パチンコの景品交換所にもなっていましたが、現在はパソコン系サポートの店舗になっているようでした。ちなみにまんがの森に行く度に肉の焼けるいい匂いが漂ってきた隣のやきとんの店は今でも営業している模様。

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あと、池袋店跡地は同系列のK-BOOKの一店舗(エンタメ館)に、高田馬場店はブックオフになっています。※追記:高田馬場店跡は今(2016年現在)は飲食店になっているようです。


これからマンガ専門店はどうなるのかなあ


こんな感じで一時代を気づいたまんがの森は消滅しました。しかし今はまんがの森がなくても、数え切れないくらいのマンガやオタクグッズなどを扱う店も増えて、ネット通販という手段も出来ました。ここに至るまでにマンガ専門店の草分けとして果たした役割は小さくはなかったでしょう
ただ、現在出版不況と言われていて、マンガのみならずいろいろな本の売り上げが低下していると言われます。それが書店に直撃することにもなっているわけですが、既存のそういった店がまんがの森のように消えないでほしいと思います。

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新・オタク経済 3兆円市場の地殻大変動 (朝日新書)