2001年9月11日、世界中を震撼させた「アメリカ同時多発テロ事件」が起こりました。しかし、その10日前、日本では40人の死者を出すという大きな災害が発生していました。起きた場所は新宿歌舞伎町。

最初にこのエントリーを書いたときからは9年が経っていて、いまや(2014年12月)既に10年以上。今日はその事件を振り返ってみようと思います。

※このエントリーは、2010年09月01日に書いたものを、2016年1月12日に加筆、修正したものです。
Kabukicho, Shinjuku
Kabukicho, Shinjuku / Dick Thomas Johnson



2001年9月1日の大惨事


2001年9月1日午後1時頃、新宿歌舞伎町にある雑居ビル「明星56ビル」で火災が発生します。発生元は3階のゲーム麻雀店「一休」。そこから瞬時に煙が充満してゆき、4階のセクシーパブ「スーパールーズ」にも充満してゆきます。

結果、44人が死亡、3人が重症を負うという大惨事となり、戦後有数の大火災事故となってしまいまいました。
この9月1日は、皮肉にも78年前になる1923年に関東大震災が起こり、その後「防災の日」とされた日でした。

以下は当時のニュースのアーカイブ。

新宿歌舞伎町ビル火災 44人死亡 | みのがし なつかし | NHKアーカイブス


不備と不運が重なって起きた大惨事


ここまでの大惨事となった理由は、まず、火災報知器が悪戯の誤作動が多いためにもともと切られており、作動しなかったこと。そして窓は板が打ち付けられてそこから煙が出ていかず一酸化炭素が充満したこと(死因の多くはその中毒)、そして人間が出ていくことも出来なかったこと、さらに階段ではおしぼりなど荷物やロッカーなどの備品が散乱し、事実上通れないようになっており、それで避難経路が事実上皆無だったことなどがあります。

さらにあとでわかったことでは、防火管理者が置かれておらず、さらに避難誘導訓練も行なわれてなく、提出が義務付けられていた消防計画の届け出もなかったとのことでした。

■参考:平成14年版 消防白書
 ……室内図、火災後の室内写真あり。


謎の多い出火原因


この事件においては、そもそも火災がどのように発生したのかが謎とされてきました。出火元は3階のガスメータ付近がと見られているようですが、電気系統のトラブル、タバコの火、そして故意の放火が推測されました。放火説では、メーターがはずされていたとか、そこから立ち去った人間がいる、などの噂も流れます。

ただ、3階の店舗が違法ギャンブル店で顧客名簿も偽名であり、特定が非常に難しかったなどのこともあり、現在でも真相は不明となっています。ただ、「現場から逃げた人がいる」という話が、真偽がわからず噂のように残っているだけです。


報道・風評被害


また、この事件では直接的な火災被害だけではなく、更なる問題も生まれました。それは火災が起き、多数の被害者が出た店が違法ギャンブル店とセクシーパブであったため、そこにいた客、従業員とも風評の被害に遭ったことです。マスメディアによって名前だけではなく勤務先も暴かれ、女性従業員、客ともにいわれのないものを多く含んだ風評を立てられたケースもありました。

この事件に限りませんが、重大な被害者であるのにそのような風評の被害を受けるという、報道など情報のあり方の問題も同時に浮きだたせたものでもありました。


10日後に起きた世界的事件


この頃には既にインターネットはそれなりに広まりつつあり(2ちゃんねるも開設済み)、このことはあちこちで話題にもなりました。

ただ、その年最大級のニュースとなる大惨事は、その後沈静化してしまいます。その理由は何よりもその10日後に起こった事件があまりにも世界的にインパクトを与えたので。それが最初に語ったアメリカ同時多発テロ事件(911)。

このアメリカ始まって以来の大規模テロは、その後アフガニスタン出兵、そしてイラク戦争にと繋がる一大契機となりました。

余談になりますが、当時私はあの飛行機がリアルタイムでビルに突っ込むテレビの映像を見て、何か映画のように感じてしまいました。あまりにも想像を絶するものを見たときは、即時に認識出来ないのだなあとあとで思った次第です。そしてそれをまた強く思ったのが、約10年後の2011年3月11日、東日本大震災の津波映像でした。


長い間焼け跡のまま残されたビル


このように、911の為にそのインパクトが奪われてしまった事件でしたが、当然その後も捜査が進められます。
その結果、2003年2月18日、ビルの所有会社のオーナーら4人が、防火管理を怠ったとして逮捕されました。

また同時に、遺族による民事訴訟も行なわれます。その間、ビルには東京消防庁使用禁止命令が出され、さらに民事裁判の過程で保全命令が出されたために、そのまま解体されず火事の状態のままにされることとなります。その後保全命令が解かれた2006年に解体されるのですが、それまで5年間近く火災後の状態のまま放置されていたので、私もこの前をたまに通る度にこの火事のことを思い出しました。

下はその当時のビルの写真。

Kabukicho fire-accident-building (1)

その後、2006年4月、民事における和解が成立。和解金は10億くらいになったと言われています。
さらにその後、刑事裁判の判決も下り、3名に執行猶予行きの有罪となりました。

2006年中にそのビルは取り壊され、更地となります。その後近隣の店舗は入れ替わったり改築されたりして変化しておりますが、当該の場所は更地(もしくは駐車場か何か)になっています。ただ、今は通ってももう火災が起きたところとは意識しないとわからないでしょう。


消防法の改正など法的な影響


さて、この事件、法的にも大きな影響を残しました。まずは消防法が2002年10月に大幅に改正されたこと。ビルを管理する人物に防災のための義務が多く与えられることになります。具体的には防火管理の徹底で、自動火災報知設備の設置義務対象も拡大されました。さらにそれに対する行政の権限も強くなり、消防署が事前通告なく立ち入りが可能になりその場で避難障害物の撤去命令が出せるようになるなどの違反是正の徹底、罰則の強化などがなされました。

さらに、新宿、とりわけ歌舞伎町では、石原都知事の指令により、浄化作戦が始まり、防犯カメラ設置、風俗営業法改正などがなされ、違法店舗が多く検挙されることとなります。
ただ、この事件が契機か、というと、もともと当時の都知事、石原都知事の政策に都庁お膝元の歌舞伎町浄化作戦があったこともあり、違うとも言えますが。



事件のその後の情報


そして、事件の真相については今なおはっきりとはしていません。

事件についてはいまだに捜査中らしく、事故の線、そして事件(放火)の線両方からなされていると言われています。一時期、他の事件での犯人が放火と関係があるかという報道もなされましたが、その後ニュースはありません。  

ちなみに事件が放火だったとすると、放火殺人の時効は15年で、成立日は2016年8月31日でしたが、現在はさらに延長されて、少なくとも25年にはなっているようです。


二度と起きて欲しくない大惨事


そういえばこの事件より先、都内の狭いビルではかなり階段とかに気を遣うようになっていますね。昔は火災報知器が事実上隠されていたところも多かったのに、今はちゃんとそのスペースは開いている感じですし(歌舞伎町がどうなのかはよくわかりませんが)。

火事は知らないうちにやってくることが多くあります。今日は前述のように防災の日でもあります。普段気のつかないところでも、万一のことを考えて注意することが必要でしょう。


※2016/1/12追記
しかし、同じような事件は忘れた頃にやってくる、というのを思い知らされるものが。

2015年10月、広島市中区のメイドカフェ、「黒猫メイド魔法カフェ 流川店」において三名の死亡者。
同じく雑居ビルの火災。放火の疑いもあり捜査中の模様。
そしてこちらでも事実とは異なる風評被害のようなものがあった模様。

【黒猫メイド魔法カフェ】広島で全焼、3人死亡 「仲良くしたメイドにこんなことが」
3人死亡の「黒猫メイド魔法カフェ」火災の報道に関係者が激白


さらに2016年1月、歌舞伎町にて連続してホテル火災が起きるという事件も発生しました。

新宿・歌舞伎町、またホテル火災 けが人なし:朝日新聞デジタル


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ほか参考

歌舞伎町・明星56ビル火災
新宿歌舞伎町ビル火災
裏の裏は、表…に出せない! 歌舞伎町ビル火災事件の闇
9月1日、歌舞伎町ビル火災(明星56ビル)から6年目-「天国へ旅立った44人の尊い命を無駄にしないで下さい」-:歌舞伎町るねっさんすBlog by てらたにこういち:So-netブログ
歌舞伎町ビル火災 - Wikipedia