2003年、日本で話題となっていたロシアのアーティストがいました。その名はt.A.T.u.(タトゥ)。

日本で一般的に知られた話題は、レズビアンの少女デュオ、ミュージックステーションのドタキャン、東京ドームでコンサートを開催したけど、人の入りは半分以下だった、大統領選出馬表明などがあるでしょう。

しかし、今思い返してこれらはどうしてそうなったか、そしていろいろ叫ばれたスキャンダラスなことは何処まで本当だったか、今日はそれについて書いてみようと思います。

※2008年10月29日初稿。2015年1月2日加筆修正。2016年1月12日加筆修正とリンク切れや画像修正。
WP_000526
WP_000526 / ILPlais



t.A.T.u.の騒動はほとんどが演出


まず、t.A.T.u.はあの少女デュオを指すのではなく、本来はバンドやプロデューサーなど、プロジェクト全体を指すのだそうです。そしてあのボーカルの少女はレナ(エレーナ・セルゲーエヴナ・カーチナ)とユーリャ(ユーリヤ・オレーゴヴナ・ヴォルコヴァ)。

ただ、これも後の報道で見たことのある人はいると思いますが、レズビアンのデュオというのも演出で、二人とも恋人がいました。

このことなど、t.A.T.u.について報じられたものの多くは「演出」が含まれていました。そしてそれを演出していたのは、当時のプロデューサーのイワン・ニコラエヴィッチ・シャポヴァロフと言われています。よく起きていたドタキャンなどもそれに含まれます。
つまり、ミュージックステーションのドタキャンもヴォーカル2人の意思ではなく、演出だったということ。

しかし、この「演出」は一時的な注目は集めても、その後テレビ局などの各種関係者だけではなく、視聴者やファンにとっても反感を買うことになりました。結果として東京ドームコンサートは半数以下しか入らず、チケットはヤフオクでたたき売られたようです。まあヤフオク出品のほうは、転売屋がほとんどだと思うので別にいいのですが。


t.A.T.u.路線変更


その後も、シャポヴァロフ路線は続きますが、もう騒動で注目を引く路線は破綻し、それを望んでいないメンバー間の信頼関係も破綻してしました。結果としてシャポヴァロフは解雇、t.A.T.u.は生まれかわることになります。

その後、ユーリャの出産などを経て活動を再開しますが、少なくとも以前のように目立つことはありませんでした。


t.A.T.u.のアニメ


さて、このt.A.T.u.全盛期を過ぎたあたりに、誰が何を思ったかt.A.T.u.のアニメ制作の発表がなされました。コミケ企業ブースで宣伝もされていました。Puffyのアニメがけっこう当たったので、それにあやかったのかもしれませんが、アニメのヘビーユーザーからはネタとして以外は相手にされず、かといって一般層にも「今更t.A.T.u.かよ」的な雰囲気がありました。結局、制作は頓挫したようです。

t.A.T.u.、アニメ化決定! - CDJournal.com ニュース
ぬるヲタが斬る t.A.T.uアニメの顛末


t.A.T.u.解散


2008年には3枚目のアルバムを出しますが、この頃から各メンバーのソロ活動が盛んになってゆき、解散説も流れます。その時は、ソロ活動を行うことは肯定しても、解散は否定していました。2009年以降は各自ソロ活動が主流となります。

そして2011年、正式に解散が発表されました。



t.A.T.u.再結成。しかし……


しかし2013年、意外なところからこのt.A.T.u.の名前が出て来ます。それは日本のCM。内田裕也らと共に、スニッカーズの新CMに出演し、来日もしたのです。

発表会の記者会見では、2人ともすでに子どもがいることも語られました。

ドタキャン騒動から10年! t.A.T.u.が7年ぶりに来日し「悪いことは忘れて」 | マイナビニュース

そして、ロシアで行われるソチオリンピックの開会式直前のショーのために再結成。ニューシングルもリリースすることが発表されました。

しかし2014年2月18日のt.A.T.u.のFacebookにおいて、いきなりの解散を発表。すでに決まっていたt.A.T.u.のコンサートなどもすべてキャンセルとなりました。

そこには「ジュリアと彼女のチームが、レナに圧力を掛けたため」と、不仲による解散だったことが書かれていました。さらにレナは「t.A.T.u.に関するクリエイティブな決定を全てジュリアと彼女のチームに委ねない限り、わたしとはデュオを組まないと最終通告を突き付けた」とも書いてありました(ただしレナサイドのみの書き込みだけで、ジュリアサイドからのものはありませんでした)。

このような形になり、再度の解散。そして再結成の可能性もこの状況から限りなく難しくなってしまったと言えるでしょう。

■参考:t.A.T.u.が再び解散…関係悪化を理由に - シネマトゥデイ


このようにして、日本では一時期奇妙な形で盛り上がった、いや盛り上げさせられたt.A.T.u.は、終わり方もまた奇妙な形となってしまいました。

しかし、日本でこの騒動を知っていても、t.A.T.u.の「音楽」を知っている人はどのくらいいるでしょうか、と気になります。ある意味、アーティストとしてではなく、そういうものとして持ち上げられたグループの悲劇な側面も(それはたとえ内部でそうしようとした人間がいたとしても)かなりあると思います。
あのドタキャン騒動以来、t.A.T.u.がプロデューサーを解雇したのも、そういったものへのアーティストとしての反発だったのかもしれないと、今思います。

今の日本の芸能、音楽分野でも、似たようなことになっている存在がいるのでしょうか。