オリンピック商戦期間も終わりに近づき、テレビ、そして録画プレイヤーの売れ行きがどうだったのか気になるところです。ただ、Blu-rayとHD DVDで争っていた昨年よりは、幾分買い控えはなくなったかもしれません。

しかし、上記2つ以外にも、次世代DVDとされているものがあったのをご存じでしょうか。その名は「EVD」。
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OpenClipartVectors | Pixabay


「EVD」とは何か


「EVD」とは、中国で独自に開発されたディスクの規格です。つまり、立場的には、Blu-rayやHD DVDと同じ位置づけ、と言えるのかなあ、いや、言えないな(理由は後述)。

スラッシュドット・ジャパン | 北京発、DVD代替規格EVD登場

さて、何で中国はこのような規格を誕生させたのか。
まず、DVDなど海外に規格の特許がある場合、その特許使用料金を渡す必要がありますが、安さで勝負している中国製品にとって、その割合は楽なものではありません。故に、特許料が定額ですすむ、独自規格を自国で制定する必要があったのです。

ただ、スペックは片面1層4.7GB、片面2層8.5GBと、次世代と言うより代替DVDといった感じもの。ただ、MPEG-2を使用していないために、ライセンス料はDVDよりもかなり安かったようです。

EVD - Wikipedia

この無謀にも思える勝負に勝算があったのか。これはまるでなかったとは言えませんでした(あくまで中国からの視点ですが)。

まず、規格が制定された当初、中国は上海株が6000に向けての上り階段という超好景気でした。その状況で、世界最大の人口を持つ中国国民がその独自規格を買えば、かなりのシェアになるはずという読みでした。そうすれば、ハリウッドなどもこれに参入するだろうという読みもあったでしょう。
さらに、この発表がなされた当時、世界ではBlu-rayディスクとHD-DVDの次世代規格争いが加熱していたこともあります(さらにそれも内部で固まらずに混乱気味だった)。つまりここで漁夫の利を狙ってきたということですね。もちろんここでという意味ではなく、先のEVD2的なものを想定してだと思います。


EVDそれから


しかし、早くも大きな山が訪れます。スラドの2004年のコメントにはこのようにあります。
2003年11月に「EVD連盟」を結成した9大メーカー(SVA・新科電子・創維・長虹・夏新・万利達・歩歩高・先科・厦華)のうち、7社は次々と他陣営への鞍替えや投入資金の削減などに向かっており、残っているのは新科電子と上海広電数碼科技(SVA)の2社だけだそうだ。

それでもなんと強気に、2006年末、「中国はDVD単体機の生産を2008年までに中止する」と発表までしてしまいました。

ちなみに途中から、EVD2という規格が流通しましたが、これはHVDという規格をそう勝手に名付けて売っていただけのようです。まあこっちも普及の割合は知名度と同じく。

HVD - Wikipedia


HD DVD生産停止とその影響


しかし、2008年2月19日、東芝がHD DVDの撤退を発表します。これにより、流れは完全にBlu-rayになりました。3月、EVDは名称を「HD-EVD」と変えます。しかしこの当時には、もうすでに店にもほとんど置かれることはなくなっていたようです。

■EVDも危機に直面、業界団体は撤退の可能性示す 2008/03/04(火) 10:45:04 [中国情報局] ※リンク切れ

現在は事実上、EVDという規格の普及は止まっていると考えて良いでしょう。しかしながら、中国の独自規格という面では、ここからまた一波乱が起こります。


中国独自次世代DVD規格「CBHD」


最近、また中国国内で新たにDVDの新規格が発表されました。その名は「CBHD」。

中国版高精細光ディスク「CBHD」が始動 - ビジネススタイル - nikkei BPnet
スラッシュドット・ジャパン | 中国独自の高密度光ディスク「CBHD」、いよいよ製品登場

中国版HD-DVDと言われるこの製品、開発経緯もEVDの時と同じく巨額の特許使用料を払わないですむようにする意図が強いようです、DVD時代を大きく下回る特許料は魅力なのでしょう。

ちなみにこれ、上記スラッシュドットのコメントを見てみると、CBHD自体がHD DVDの中国版らしいのですよね。つまり、中国以外では敗北したHD DVDを中国が引き取ったというところでしょうか。<

それにどうもHD DVDの技術及び技術者がそのまま流れている、という話があるのですよね。

ポケットニュース: 中国独自次世代DVD規格「CBHD」用プレーヤーの正体
山田とリーバファーブが中国企業と手を組んで、東芝からHD DVD関連の部材や金型など一式を安く買いたたき、それを使って作っているようです。 部材だけならいいんですけど東芝で光ディスク関連の仕事をしていた技術者まで大量に中国側に渡っているようで、余った部品だけでなく光ディスク関連の技術までかなり流出している模様。

う~む。なんか複雑な思いです。
ともあれ、HD DVDの技術はこんなところで生きているということになります。せめて今までHD DVDとして出ていたソフトが、これで再生できるようになればいいのですけどね。


また規格争いが始まるのか?


さて、世界中ではBlu-rayがほぼ独占への道を歩み出しましたが、これは新たなBlu-rayのライバルになるのでしょうか、それともEVDのように、なかったこと同然となってしまうのでしょうか。ただ克服しなくてはいけない道があると思います。それはコンテンツの参入だったり、EVD事実上失敗の幻影を払えるかとかいろいろ。まあ、ちょっとは注目してゆきたいと思います。そして一般に知られるようになるか、それともこのブログのネタになるか。

あ、でもコピーワンス問題とかで混乱しているところに、コピーフリーで乱入してくるって可能性は、案外ありえなくはないかもしれませんね。そういう意味ではいい対抗馬なのかも?