2006年7月1日、福岡県書店商業組合が、全国の書店で問題になっている万引きへの対策として、あるものを打ち出しました。それが「まんぼうシール」と呼ばれるもの。
scene from a book store in tokyo, japan.
scene from a book store in tokyo, japan. / torisan3500



万引き防止用だがその運用や実効性への疑問


これは、万引きを防止するための試みとして、書店で正規に購入した書籍(コミック、新書、写真集)にはレジでこのまんぼうシールを裏表紙に貼ることで万引きでないことを示し、ブックオフなどで買い取りの際、貼られていないものは、買い取り拒否をしてもらうことで、結果として万引きをなくそうという試みだった模様です。

しかし、これを運用するにおいて問題となった点があります。それは客に選択の余地なく、そのシールを貼られるということ。つまり、買ったものなのにその時点でシールを貼られるという毀損を受けるわけです。私もたまにコンビニの安いマンガで袋をいらないと言うと、雑誌にシールを貼られてちょっと微妙な思いをしますが、こっちはそれよりも高い本です。ましてや写真集は5000円くらいするものもあるのに、それを勝手に毀損されてはたまりません。

さらに、このシール自体にも実効性が疑われました。というのは、あくまでこれは福岡の、さらに書店組合のみの試みです。となると、まずは拘束力がないため、古書店は従う必要はありません。それでも貼っていないものは確実に万引き、というのならば協力は得られたのかもしれませんが、福岡のみでの試みなので、たとえば、他県で本を買った場合、貼ってなくてもそれは正規のものですから、それとの区別が出来ません。さらに、はがした場合、また、過去の本だった場合など、抜け穴と言うにはあまりにも大きすぎるのです。 ただ、このことは、始まる前から言われていました。

■参考:まんぼうシール問題、自分なりに妥協点とかtipsとか


そして、実際に始まると、同じように問題が起こりました。詳しくはマンガニュースサイト、痕跡症候群さんのレポに詳しいです

■参考:福岡県で始まった「販売証明シール」についてのレポ

正直、こんなの貼られて、しかも綺麗にはがせないんじゃあ、私は買いたくなくなるなあというのが正直なところ。おそらく全国の書店が同時に始めたら、ビジネスモデル上シールの添付が困難なAmazonなど通販業者にしてしまいそうです。


それから1年後


さて、こんな混迷の中で始まった制度、それから1年後の2007年も続いていましたが、ちょっと状況が変わっていたようです。

2006年7月、福岡県で始まった「販売証明シール」は万引き防止として役立ってるのか?
続・まんぼうシールってどうよ!?


上のリンク先は、実際に体験をされた方のレポですが、事実上、本に直接貼る店は見受けられません。無視か、レシートに貼る、というのがほとんどですね。まあ当然でしょう。客がいやがるというほかにも、店としても何十冊もマンガを買われたときに、その分シールを貼るのは作業として圧倒的な手間ですから。 しかし、アンケートを見てみると、万引きに対して「効果がない」という意見がほとんどだった点はなんとも。


そして廃止


そして制度が2周年目を迎える直前の2008年6月、以下のニュースが。

■10月末廃止 無念の撤退 万引防止の「まんぼうシール」 客に不評 実施店激減 ※リンク切れ

公式に、廃止となりました。「(新古書店に)持ち込まれる本のうち、シールがあるのは最近で3割未満」「参加率は組合店の20%を割る」など、実効性がなくなっていれば無理もないでしょう。

たしかに、書店が万引きに対して多大な被害を被っていて、それの対策に苦心していることもわかりますし、一番悪いのは万引きをする人間です。しかしながら、それで罪のない一般ユーザーに対しても、不便をかけ、それで人を離れさせてしまった点が、最大の敗因ではないでしょうか。しかし、本屋なのに、持ち主にとって本は消耗品とは限らず、大切なものとして扱う人も多いということを認識できていなかったのでしょうか、という点は今でも心に残り続けています。


でも、何かこれにデジャ・ヴを感じるなあと思ったら、これか。

CCCDはそれからどうなったのか : Timesteps

こっちも、悪意のコピーを防止するために一般ユーザーを犠牲にして、その挙げ句ユーザー離れを起こして、結局事実上廃止に追い込まれましたね。
あと、最近また似たようなことが起こりそうな気がします。

■「経緯は知らぬ」「言い逃れだ」・コピー補償金問題、10日再開の審議は大荒れ ※リンク切れ

こちらも気づいたら、録画するもの自体がテレビからなくなり、その市場がコピーの反乱とは別の方向で衰退した、ということがなければよいのですが。