数年前、イタリアのナポリでゴミの収集が満足に行われず、街中に大量のゴミが積まれていたり散乱しているという話題がありました。日本で話題になっていたのは2011年頃でしたが、実際はそれよりもだいぶ前から続く、ナポリの様々な要素の絡んだ社会体質問題となっているようです。一番酷かった時期は脱した模様ですが、現在でも根本的解決には至らず問題は継続中のようです。

しかしそれとほとんど同じ時期、日本でも「日本のナポリ問題か」という感じで、とある自治体のゴミ処理問題が話題になりました。それは東京都の西部に位置する小金井市やその周辺の自治体。
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東京・日本の街のフリー無料写真素材集【街画ガイド】より




小金井市から消滅しているゴミ処理施設


かつて小金井市のゴミ処理は、二枚橋焼却場というところで行われておりました。しかしここは小金井市だけではなく、近隣の調布市、府中市の三市にまたがっており、この三市が共同で運営してゴミ処理を行ってきました。

21世紀に入ると、1957年設立のこの焼却場は老朽化で継続的使用が難しくなります。しかしゴミ量の増加で、この土地だけでは処分が難しかったことや近隣住民グループの反対もあり、2007年に閉鎖されることが決定しました。結果、それぞれの自治体は他の自治体と連携などをして、新しい処理場でのごみ処理をする方針となります。

しかし、小金井市は住民の反対もあり新処理施設の計画が進みませんでした。そこで国分寺市と事務組合を新たに設置し、2010年に二枚橋焼却場跡地に新しい清掃工場の建設を決定します。
ですがすでに二枚橋の共同運営をしていた調布市と府中市は、すでに跡地を公園や保育園に転用する計画が進んでいたため反発。
そして用地買収は進まず、二枚橋での処理場は断念という事態になります。

この時点ですでに小金井市はごみ焼却施設をもっていなかったわけですが、そのゴミ処理は周辺の自治体が引き受けておりました。引き受けていたのは八王子市、府中市、昭島市。
しかし根本的解決ではなく、受け入れは綱渡り状態で、前述のように建設計画が難航している以上、ゴミ処理は緊急の課題となっておりました。


市長の辞任に発展


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その折、2011年小金井市長選で佐藤和雄市長が新たに誕生し、4月に就任します。
しかしながら佐藤市長は選挙戦の時、周辺自治体にゴミ処理を委託する際の費用4年間で20億円に上っていたことを無駄遣いと批判した発言、さらに他の要因もあり、引受先であった八王子市や昭島市の反発を受け、収集の中断までも噂されるような事態になります。このあたりでニュースで盛んに報じられたので、記憶している方もいらっしゃるかと思います。

その結果、市長は謝罪。引き続きゴミ処理の受け入れ先を模索しますが見つからず、2011年11月15日にゴミ処理枠を使い切る見通しとなり、11月1日に責任を取る形で辞職表明となりました。

2011年12月18日、辞職に伴う市長選が行われ、元小金井市長の稲葉孝彦氏が当選。
方針として、二枚橋新焼却場の建設を進めますが、前述の通り調布市はすでに公園などでの転用計画を進めていたので話が進まず頓挫。
しかし2011年以降も周辺自治体の協力でゴミ処理は行われました。ですがそれも綱渡り状態で、早急に解決を求められる状態となっておりました

ごみ処理問題で 小金井市・佐藤市長が辞任会見 TOKYO MX NEWS
小金井市長に稲葉氏が返り咲き ごみ問題、元市長に託す  :日本経済新聞


日野市のクリーンセンター建替え、広域化計画


その後小金井市、日野市、国分寺市の三市で日野市内にごみ焼却施設を共同整備する計画を発表。これは日野市が市内のクリーンセンターを立て替え、そして広域化することにより、日野市の他両市のごみを処分する場という計画です。

そして2014年9月、「日野市 国分寺市 小金井市 新可燃ごみ処理施設整備事業」を発表。2015年7月には三市の共同運営を目的とした事業組合、浅川清流環境組合が発足。2020年稼働開始に向けて動いているようです。
ちなみに広域化計画の当初、日野市民から反対運動が起こりましたが、現在は調べた限りでは一段落しているようです。

クリーンセンターごみ処理施設の建て替え(広域化)について 日野市
一部事務組合「浅川清流環境組合」が発足されました 日野市
■参考:TBS 噂の東京マガジン 噂の現場 小金井市のゴミ問題が日野市に飛び火 - Togetterまとめ
■参考:他市からのごみ受け入れ広域化に反対する会です


どこでも身近にあるごみ問題


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素材元: フリー写真素材ぱくたそ

とりあえず落ち着くまでに長期の年月、さらに周辺自治体も巻き込んだ大がかりな過程を辿りました。しかしここまで大騒ぎにならなくてもゴミ処理場の問題は全国的に存在します。かつては東京都でも杉並区で持ち上がったことがありますし。
さらに潜在的に似たような問題を抱えているところもあるでしょう。今はなんとかなっていても、人口の増加や老朽化などが起きた場合特に。

普段、あたりまえのように存在するゴミ収集ですが、たまには自分達の自治体がどのようになっているのか、今後も大丈夫なのか、振り返って見る必要があるでしょう。本当に切羽詰まって受け入れ先もなく、収拾されずにゴミが溢れる事態になってからでは遅いので。


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その他参考
小金井市ごみ処理問題 ‐ 通信用語の基礎知識
小金井市 - Wikipedia