一時期、とあるネットのサイトが、ネット上のみならず、世界全体を騒がせ、マスメディアのニュースでもその名前が何度も掲載されました。そのサイトの名前は「ウィキリークス(WikiLeaks)」。

このサイトに、各国の機密とされる情報が次々と掲載されたため、世界中の注目を集め、そして政府までも動揺させることとなります。

日本のメディアでは一時期の波も収まり、東日本大震災など他に大きなニュースもあったせいか、最近はあまりその名前が報道される機会はありませんでした。
では今、そのWikileaksはどうなったのか、今日はそれについて書いてゆこうと思います。

※この記事は2011年8月11日の初稿に、2015年1月11日大幅加筆修正を行いました。
wikileaks
wikileaks / Sean MacEntee



WikiLeaksの設立



Julian Assange, Wikileaks / New Media Days


まずはWikiliaksとは何なのかというところから。

これに関係するニュースを見ていた方は「各国の機密情報をリークするサイト」くらいには知識があると思いますが、だいたいあっています。これは政府、企業、宗教などに関する機密情報を公開することを目的として作られたウェブサイト。

開始は2007年あたり(詳細は不明)。設立したのはジュリアン・アサンジという人物。彼はオーストラリア国籍を持つ人物で、WikiLeaksの設立までは、プログラマ、ハッカーとして行動していたと言われています。

そのジュリアン・アサンジ氏が2007年よりWikileaksを開設。その運営には、本人及び設立の前にジュリアン・アサンジ氏が声をかけた各国のジャーナリストや技術者などが行なっている上、各国にボランティアがいると言われています。

ちなみにアサンジ氏はオーストラリア国籍ですが、自身が狙われるのを防ぐためか居場所を固定せず、世界中を渡り歩いていたとされています(過去形なのは後述)。

内部告発サイト「ウィキリークス」とは?創設者が語る「使命」 国際ニュース : AFPBB News
■参考:WikiLeaks:About - WikiLeaks(英語)


WikiLeaksの特性



wall2 / Nils Geylen


さて、WikiLeaksの大きな特徴としては、もちろん機密情報の公開がありますが、それが匿名性という原則があります。その匿名性により機密情報をリークした人が特定されないように方策が為されており、そのことでWikiLeaksのリークサイトとしての信頼性を増すものとしています。

データセンターの場所はスウェーデン・ストックホルムの地下にあります。これは。PRQという企業のホスティングサービスを利用しているのですが、このデータセンターは冷戦時代に作られた核シェルターを改造したものということ。また、この企業は法的介入にも十分な対策がなされているとのこと。

また、メインのサイトが潰れた時も運営が止まらないように、各国にミラーサイトがいくつもあるようです(当然の如く全容は不明)。

核爆弾が上空で爆発しても耐えられる!?ウィキリークス機密データ格納地下施設(スウェーデン):カラパイア
Wikileaks Mirrors
■参考:技術記者が解説する「ウィキリークスを潰せない理由」(前編):日経ビジネスオンライン

ちなみに、あまりネットのことを知らない人はWiki=Wikiliaksと思っている人がいるでしょうが、全然違います。おおざっぱに説明すると、Wikiはネット上のツールの名称であり、有名なインターネット百科事典Wikipediaもそのひとつ(たまにWikipediaをWikiと勘違いしている人はいますが)。Wikiliaksもそのシステムを利用したひとつのWikiサイトにしかすぎません。よってWikipediaなど、ほかのWikiと名のつくサイトとは基本的に無関係です(似たWiki構築ツールを使っているということくらい)。


Wikileaksでリークされた重大情報


さて、そのようなシステムのもとで運営されたWikiLeaksは、数々の機密情報の公開を行ないます。そしてその中には非常に重大な機密情報も公開され、世界中の一般市民のみならず、報道、そして政府をも震撼させることになります。その中で、特に注目されたものを以下に挙げてゆきます。

イラク戦争の民間人・ロイター記者殺傷動画公開


2010年4月に、2007年7月12日、イラクに駐留しているアメリカ軍のヘリコプターが、ほぼイラク市民やロイターの記者を銃撃し殺傷。ジャーナリストを含め12人が亡くなったと推定されています。

当初、米国は武装兵への攻撃としていましたが、ロイターはこれを否定。情報公開を求めますが拒否。しかし、WikiLeaksにより事件の動画が公表されます。銃撃された人は武装兵ではない一般人と多くの人は認識し、そこから世界中に拡散し、非難が集まります。

 
 ※銃撃映像でもあるので、やや閲覧注意のこと。

その後、情報をリークしたとされる米軍諜報アナリストが同年5月に逮捕されました。

■参考:WikiLeaks(ウィキリークス)が新たな注目の的に -問題の動画と創始者の横顔 - 小林恭子の英国メディア・ウオッチ - BLOGOS(ブロゴス)
■参考:July 12, 2007 Baghdad airstrike - Wikipedia, the free encyclopedia(英語)


アフガン紛争の資料公開


2010年7月、アフガニスタン紛争に関するアメリカ軍の機密資料約75000点が公表されます。内容はパキスタンの情報機関とアフガン武装勢力との関係や、未公表の民間人死傷案件。しかし中でも問題とされたのは、アフガン側のアメリカへの情報提供者の身元情報が含まれていたこと。これにより身元提供者に危険が及ぶという可能性に言及されました。
 

イラク戦争の機密文書公開


2010年10月、イラク戦争に関する米軍の機密文書約40万点が公開されました。その内容として、民間人の殺傷、イラク人拘置者への拷問報告などが挙げられました。
かつてイラクではアブグレイブ刑務所問題が起こったこともあり、この件も注目を集めることになります。

グアンタナモ収容所はその後どうなったのか : Timesteps
■参考:アブグレイブ収容所/新たに女性への性的虐待/上院軍事委が容疑調査


アメリカ外交公電流出


これがWikiLeaks最大の話題となったもの。

2010年11月28日、WikiLeaks上でアメリカ合衆国の機密文書である外交公電がリーク。その内容において多くのことに触れられていました。
その内容は政治的なものから、外交官などが語るその国の人物についての悪評まで様々。例えば在韓国大使が送った公電には、北朝鮮の体制崩壊を想定して韓国側と協議したことが記されていたり、「イランが北朝鮮から核弾頭を搭載できる中距離弾道ミサイル19基を獲得した」というアメリカの情報当局の分析を示す外交公電などがありました。

また、日本関連のものも存在し、去年4月に当時の麻生首相が中国を訪問した際に「胡錦濤国家主席は自信にあふれて落ち着いていたが、温家宝首相はとても疲れていて、経済危機への対応などでプレッシャーがあるようだ」と内部で話していたという情報が、北京のアメリカ大使館からワシントンに送られていたといいます。

ちなみにこの時公開された情報は一部で、その後断続的に残りの外交公電が公開されています。

流出の米外交公電 当時の麻生首相の発言も | 日テレNEWS24
アメリカ外交公電Wikileaks流出事件 | Lei's Free Blog
■参考:アメリカ外交公電ウィキリークス流出事件 - Wikipedia


リークによる影響


これらのリーク、とりわけアメリカ外交公電のリークは世界に激震を起こします。ホワイトハウスはこれらが同盟国や外交官を危機に晒すと強く批判します。
そして、このあと12月からウィキリークス周辺での圧力が強くなります。

まず、Wikileaksはその運営資金獲得方法の大きなものとして、世界中からの支持者からの寄付がありました。しかし外交公電の公開以降、これらと関係するサービスから閉め出されるケースが相次ぎました。まず12月1日には米Amazon.comが同社傘下のホスティングサービスでWikiLeaksのサーバーを停止。続いてDNSサービスプロバイダーEveryDNS.netが、WikiLeaksをターゲットにしたDDoS攻撃によりほかの利用者に支障が出るとしてサービスを停止。

そして世界的に広まっている決済サイトであるPaypalも、利用規約の「不法行為目的にサービスを利用してはならない」にWikiLeaksが違反したとして、WikiLeaksのアカウントを永久停止することになります。
企業は、これらに対して政府の圧力はないとしています。

PayPal、内部告発サイト「WikiLeaks」のアカウントを停止 - ニュース:ITpro

さらに、アメリカの高官は過去の各リークに対して、司法的手続きを行なうことに言及し、FBIに対しての捜査協力要請などを行ないました。


ジュリアン・アサンジ氏逮捕


そんな騒ぎが収まらない12月7日、創設者のジュリアン・アサンジ氏が逮捕されます。これは機密情報のリークに関したものではなく、2010年8月20日にスウェーデンで女性と彼の性的関係に関連(強姦容疑)してすでに逮捕状が請求されていました。そして、11月30日、ICPOはスウェーデンからの要請により、アサンジを国際逮捕手配、その後出頭して、前述のように12月7日の逮捕されることになりました。

その後、保証金240,000ポンド及びパスポートの没収を条件に保釈が許可され、その後ノーフォークの「エリンガム・ホール」で過ごしました。

しかし、逮捕された時が時だったため、支持者からは「でっちあげ」という声が挙がり、各地でデモなどが起こります。そして担当弁護団も見せしめ捜査として争う姿勢をみせています。


Assange becomes a hero - Support Wikileaks - Free Assange / Takver



※2015/1/11追記
しかし、2012年6月、性的暴行容疑でのスウェーデン移送が決定されると、アサンジ氏はロンドンの駐英エクアドル大使館に駆け込み政治亡命を申請。その後エクアドルは亡命を認め、自国への移送を要請しているものの、イギリス政府はアサンジ氏が大使館外に出たら保釈違反で身柄拘束する方針としている為、2年を経過した現在でも大使館に留まっている状態が続いています。今後については様々な予想をしている人がいますが、どうなるかは不明です。

ウィキリークス創設者の運命は? 大使館に2年間こもり続けるジュリアン・アサンジの行く末を占う

また、ウィキリークスとは別に、アメリカ国家安全保障局 (NSA) による個人情報収集の手口を告発し、その後ロシアに逃亡してニュースとなったエドワード・スノーデン氏について、ジュリアン・アサンジ氏は航空機や宿泊先、弁護士の手配、通信の確保などのサポートをしていることを明らかにしています。

さらに、ジュリアン・アサンジ氏はウィキリークス党の結党を宣言し、2013年オーストラリアの選挙に出ましたが、落選しました。


日本に関係する情報のリーク


さて、ここで気になるのはやはりWikiLeaksが日本に関するものでどのようなリークを行なったかということ。
2010年に公開されたものは、アジア外交系のものが多かったみたいです。これらはその後も順次リークされていました。

2011年2月のもの。

ウィキリークスが暴露「日本政府が諜報機関の創設を準備」―韓国(サーチナ) - livedoor ニュース

さらに翌年5月にも注目されるものがリークされました。

ニューヨークタイムズに掲載されたウィキリークス日本発公電について: 極東ブログ

他にも、震災前の原発に関する公電も含まれていた模様。

ウィキリークスが暴露、「日本の原発は安全面で問題」とIAEAが08年に警告―中国紙 - ライブドアニュース

ただ、この時期の報道は、日本で東日本大震災後の報道で埋まり尽くし、このニュースはあまり注目されなかったようにも思えます。

その後も、2006年に日本がアメリカに安保理の2段階拡大を打診したというリークがありました。

■日本が安保理の2段階拡大を打診 06年、米に麻生外相 - 47NEWS(よんななニュース) ※リンク切れ


※2015/1/11追記
その後の大きなリークとしては、TPPに関するものがありました。特に知的財産権分野における部分で、その保護権益を大幅強化するもので(たとえば作者の死後50年を上限に各国が個別に定めている著作権保護期間が、個人の場合作者の死後70年か発表後95年、企業所有の場合制作120年に延長されるなど)、ハリウッドなどの意向を一方的に汲んでいるとの批判が挙がりました。

WikiLeaks - Updated Secret Trans-Pacific Partnership Agreement (TPP) - IP Chapter (second publication)
ウィキリークス、TPP文書暴露 背景にある米国内の混乱とは | ニュースフィア


ハッカー集団AnonymousのPayPal攻撃


タイトルなし
タイトルなし / believekevin


さて、ジュリアン・アサンジ氏の逮捕や各Webサービスからの封鎖など、圧力相次いだことに対し、WikiLeaksの支持者からは反発が相次ぎ、デモも起こったことは先に語りました。

その反発の一つの動きとして、WikiLeaksに対してを遮断したWebサービス等に対しての攻撃が起きます。それを行なったのが、国際的ハッカー集団「Anonymous(アノニマス)」。もしかしたらこの名前を最近ニュースで聞いたという人もいらっしゃるでしょう。そう、ソニーのサーバにハッキングを行ない、個人情報を盗み出したとされるメンバーが所属していた団体です。

■参考:英警察がハッカー集団の中心メンバー逮捕、全容解明へ前進か | ワールド | Reuters

WikiLeaksを支持していたAnonymousのメンバーは、12月6日と10日、PayPalに分散型サービス妨害(DDoS)攻撃を仕掛けることにより、WikiLeaks関連のサービスを停止した他企業のWebサイトも相次いで攻撃しました。

その後2011年7月、この件に携わったとされる14人が米国内において、2010年のPayPalサイト攻撃における共謀罪などで拘束されます。

これらの行為についての議論は、ハッカー達の間でも為され、意見が分かれました。

WikiLeaksの支持派、WebでDDoS攻撃の目的を説明 - ニュース:ITpro
Anonymousメンバー14人をPayPalサイト攻撃容疑でFBIが逮捕 - ニュース:ITpro
■参考:「アノニマス」対「反アノニマス」、ハッカー同士が世界大会で大激論 国際ニュース : AFPBB News
■参考:容疑者逮捕が続くAnonymousとLulzSec、共同でPayPalボイコットを呼びかけ | ネット | マイコミジャーナル


その後のWikiLeaks


Procedencia de los cables desvelados por Wikileaks
Procedencia de los cables desvelados por Wikileaks / otromundoesposible_com


その後ですが、いくつかのサイトがつながらなくなったものの(ここなど)、いくつもあるミラーサイトがそれを補い情報を公開し続けています。下はその一部。

Wikileaks Mirrors

 さっき「日本に関係する情報のリーク」で書いたように、今年の7月でも日本に関する情報が出てきていたりしています。Twitterアカウントも存在して、連日更新が行なわれています。

WikiLeaks (wikileaks)

 ちなみにWikiLeaks そのものではありませんが、英語であるWikiLeaksやそのミラーを翻訳しているサイトも存在します。

Wikileaks翻訳まとめ - We translate Wikileaks thingy. - トップページ

ただ、前から検閲が行われている中国では、WikiLeaksという文字列を含むだけでもリンクできないようになっているそうです。またタイでもアクセス規制が行なわれ(これはタイでおこなれているデモ闘争にも関係があると言われています)、オーストラリアでも検閲の動きがあるらしいです。

反面、WikiLeaksをノーベル賞に推す動きなんていうものもあるようです。

ウィキリークス、ノーベル平和賞候補に推薦=ノルウェー議員 | Reuters


※2015/1/11追記
そして2014年、「ウィキリークス」の日本版を12月に開設する計画を、日本の大学の専任講師が発表した、という報道がなされました。しかしこれは報道の先走り(誤解釈)で、内部告発サイトであるのは確かですが、ウィキリークスとは関係がないもので、仕組みも全く違うもののようです。技術は匿名化ソフト「Tor(トーア)」を使ったものになり、匿名のまま、報道機関など契約した人や組織のうち任意の相手に情報を伝えられる仕組みとされています。

「ウィキリークス日本版開設」 八田氏「ウィキリークスとは違う」 | GoHoo
日本版「告発サイト」、2月に開設 ウィキリークスとの違いは - withnews(ウィズニュース)


WikiLeaksは何をもたらしたか


WikiLeaksの誕生、及び影響は非常に大きかったと思われます。それは既にリークされた情報そのものもそうですが、それよりこの存在が、報道、ひいては情報というものを根本的に考える機会になったということ。

さて、これからWikiLeaksはどうなるのか。このままいろいろあって潰れるのかというと、そうは思いません。それは情報を求める、もしくは発信したい需要がある限り、多くの場合は存在され続けると思うから。これは、ジャーナリズムが弾圧されていた時代でも生き残ったのと似たようなものがあります。

仮にWikiLeaksがなくなったとしても、WikiLeaksほど大規模且つ目立つものではなくても、同じようなことが個人的、ゲリラ的に行なわれる可能性というのはあると思われます。実際、日本でも尖閣諸島沖中国漁船の動画が突発的に公開されたのですし。

ただ、問題はWikiLeaksからのリークやその他告発される情報のそれらの正確性が実証され続けるかです。
近年、ジャーナリズムの腐敗がよく言われますが、そういった告発団体が絶対がそうならないとは限りませんし、たとえその意図を保ち続けられたとしても、間違いを犯さない人間なんているわけはないので、誤情報が出てしまい、それが大きな影響を与えることもあります(まあこれは既存ジャーナリズムも同じですが)。また、晒すことで逆に罪の無い人を陥れる可能性のある情報も存在します。
WikiLeaksの場合、今はまだそのへんは考えられ運営を試みているようですが、誰かのミス、もしくは悪意のある人が入り混んだときの危険性(その予防策)も考慮する必要があるかもしれません。


ともあれ、Wikileaksという存在が、それまでの情報、広報、報道のあり方に対して一石を投じたのは間違いないでしょう。そして世界の人達は、これからどうようにしてこのような過去、機密とされていた情報と向き合ってゆくのでしょうか。


20101210-NodeXL-Twitter-wikileaks
20101210-NodeXL-Twitter-wikileaks / Marc_Smith



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 ■参考:NHK クローズアップ現代 機密告発サイト・ウィキリークスの衝撃
 ■参考:ウィキリークス - Wikipedia
 ■参考:ジュリアン・アサンジ - Wikipedia