2001年あたり、当時の私は都内の会社に通勤していたのですが、まだCRTが主流だったモニタの上にあるものが置かれているのを社内で大量に見ることが出来ました。それはチョコエッグのフィギュア。
チョコエッグはチョコの中に小型の恐竜や動物などのフィギュアが入っていたもので、当時これのコレクションがブームになり、コンプリート目指して買い漁る人が続出しました。

しかし、そのブームの当時はコンビニのお菓子棚の一角を占めるほどに置いてあったチョコエッグも、最近ではあまり見かけません。というよりは類似の食玩が多発して、目立たなくなったというのが正しいのかもしれませんが。
そのチョコエッグについて調べてみると、チョコエッグはもとよりその周辺でいろいろと興味深いことがおこっていました。今日はそれについて書いてゆきましょう。
海洋堂フィギュアワールド/渋谷
海洋堂フィギュアワールド/渋谷 / Tranpan23



チョコエッグ以前からあった卵形チョコ、キンダーサプライズ


まず、卵形のチョコの中にちいさなおもちゃが入っているものは、チョコエッグが元祖ではなく、もともとは1974年からイタリアのフェレロ社が製造を始めたキンダーサプライズというものがあります。これは日本でもグリコから1980年代に『チョコたまご』の名で発売されていたようです。その後1997年にカンロが『キンダーサプライズ』の名でまた売り出しました。おそらくこれは見たことがある人も多いかと。
ちなみに一度グリコに戻った後、現在はまた販売が終了しているようです。

キンダーサプライズ
■参考:キンダーサプライズ - Wikipedia


チョコエッグと海洋堂


さて、そんな中日本の菓子メーカー、フルタ製菓からも、同じようなチョコの中に玩具が入っている商品が発売されました。それの名前が「チョコエッグ」。しかし、当時のこういったものにおける玩具の質は低く、子供向け以上の枠を出ていなかったとされます。

しかし、ある時期からこの中に入れるフィギュアの制作を海洋堂が担当するようになります。海洋堂は1960年代からフィギュア制作、販売を行っていた会社であり、一部では有名な存在でした。しかし2000年あたりまではまだフィギュアは一部のマニアにしか注目を集めていない存在でした。しかし、当時フルタの常務だった古田豊彦氏から別のフィギュアの制作を依頼された際、偶然チョコエッグを見て、そこからチョコエッグの中身を作ることとなります。そして1999年に発売されたのが、「日本の動物コレクション」でした。

それまでの食玩に多かった子供のおもちゃ程度の品質の中、マニアからも評価されるほど質が高い海洋堂のフィギュア(動物シリーズの原型師は松村しのぶ氏)がチョコエッグに使われると、その造形の精巧さから大人にまで人気が高まります。
チョコエッグは一躍人気商品となり、コンビニでも大量に売られるようになります。フィギュアを全部集めるために買い占める人も続出しました。そして、チョコエッグのみならず、食玩全体のブームまで引き起こしました。
そしてチョコエッグは2001年には、日経優秀製品・サービス賞 日経MJ優秀賞を受賞しました。

余談ですがこの当時、他のブームになった食玩で代表的なものに、グリコから発売された「タイムスリップグリコ」もあるのですが、それも中のフィギュアは海洋堂が制作していたとのこと。

■参考:タイムスリップグリコ


海洋堂、チョコエッグと決別


しかしまだチョコエッグの人気が残る2002年冬、海洋堂が主催するガレージキットの祭典、ワンダーフィスティバル(ワンフェス)において、海洋堂から衝撃的なチラシが配布されます。そのタイトルは「さらばチョコエッグ」。

さらばチョコエッグ

つまり、今までフルタ製菓で作ってきたチョコエッグのフィギュアから手を引くというもの。
上の発表から読める海洋堂からの言い分としては、その理由はフルタ製菓の内紛にあるとのこと。
それまで海洋堂はフルタ製菓とのやりとりは、古田豊彦氏を通して行っていたのですが、古田豊彦氏が退社、玩具の企画・製造会社である株式会社エフトイズ・コンフェクトを立ち上げます。ちなみにこの時に共に離脱してエフトイズに参加したのが、玩具プロデューサー安斎レオ氏。

F-TOYS

それからフルタ製菓と海洋堂はそこを通して業務を行う予定だったということですが、フルタからそれをしないで直接取引をするようにとの通告。しかし海洋堂はフィギュアの品質を守るためにそれを断り、解決するように相談。しかし最後までまとまらなかったとのこと。

さらに、それまでに起こっていたこと(引用すると、『海洋堂に無断でディズニーシリーズをチョコエッグに加えたことをはじめとして、パルコ限定ヒメネズミやシークレットアイテムの事前流出、門外不出の生産用原型がフルタ社内より流出しショップで販売されていた件、レッドデータアニマルズフィギュアのバッタもん屋や飲料メーカーへの大量 流出、チョコエッグクラシックの販売方法や時期のなんの説明もないままのたび重なる変更』とのこと)への不信も重なった上、『何人かのフリー原型作家たちから、今だ交渉が続いていた1月初旬の時点で、既にフルタ製菓よりチョコエッグ等の原型製作発注の依頼がなされていたこと』が決め手となり、決別につながったとのことです。


海洋堂、チョコQにフィギュア提供


そして2003年の秋、海洋堂は新しくタカラ(現タカラトミー)と組んで、食玩である「チョコQ」を発売すると発表。最初に発売されたシリーズは、『アニマルテイルズ日本の動物シリーズ第6弾』(全24種)および『アニマルテイルズペット動物シリーズ第3弾』(全30種)とのこと。

ASCII.jp:タカラと海洋堂、フィギュア入り卵型チョコレート『チョコQ』シリーズを発売


海洋堂とフルタ製菓の裁判


ちょっと横にそれますが、その後海洋堂とフルタ製菓の間でロイヤリティを巡る裁判が起こったとのこと。結果、海洋堂がほぼ勝利したようです。

フルタ係争について


それからのチョコエッグと食玩


しかし2000年代の後半に入ると、食玩ブームも落ち着いてきて、多くの製品が販売を取りやめます。
チョコQも、2006年を最後に出されていない模様です。ちなみに海洋堂自体も、2006年より(おそらくチョコQを最後に)食玩のフィギュア制作に携わるのを止めているようです。

■参考:宮脇修一・海洋堂社長インタビュー 「敵はフィギュアの嫌いな日本、 僕らは戦い続けなあかん」 ~|ダイヤモンド・オンライン

さて、チョコエッグのほうですが、その後海洋堂のフィギュアは使われないものの、製品としては出続けています。ただ、最近では動物ものよりも、メカもの、キャラクターものが多い模様。最近では、スーパーマリオのフィギュア入りチョコエッグを発売したようです。

フルタ製菓がスーパーマリオのフィギュア入り『チョコエッグ』を発売 G-Renda

ちなみにコンビニでは夏にチョコエッグを探してもないようです。というのは、チョコが暑さで融解するので、どうしても暑い季節には出せないからとのこと。

■参考:チョコエッグ - Wikipedia


食玩フィギュアの功績


 前述の通り、ブームの時に比べると、チョコエッグ他食玩が置かれていることは少なくなったと思います。しかしそのかわり、お菓子がついていないフィギュアがそのまま売られるようになってきました。これは、フィギュアというものの存在が一般社会において以前よりはるかに認知された結果ではないでしょうか。

このチョコエッグを含めた食玩のブームは、日本においてコアな人の趣味であったフィギュアを広めたという意味で、大きな意義を持つと思います。