最近、音楽CDの売り上げが低下していると言われています。まあそれについてはいろいろ原因が考えられます。それについてはちょっと前に書いたので、よろしければそちらをご一読ください。

音楽CDが売れなくなった原因とテレビの衰退は関係があるのではないか - 空気を読まない中杜カズサ

そこでも書きましたが、音楽CDが売れない原因としては「違法コピー」というものが昔から言われていました。おそらく2000年をちょっと過ぎたあたりのインターネットが普及し始めた時期から言われていたのではないでしょうか。
それに対し、業界はひとつの方法を打ってくることになりました。それが「CCCD」というもの。
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コピーコントロールCD(CCCD)とは何か


CCCDの名前を記憶している人も多いでしょう。これは「コピーコントロールCD」の略称で、PCなどでコピーできない媒体として、一時期各レコード会社が従来の音楽CDに代えて売り出そうとしていたものです。そしてコピーコントロールの名前通り、PCによるコピーやリッピングが従来の音楽CDのように出来なくなるような仕組みが施されています。

しかし、正確にはCCCDはCDではありません。というのは、音楽CDとしての規格を満たしていないからです。ですがレコード会社が各々にコピー防止技術を施したディスクに対して「CCCD」というように呼ばれたためにそう言われていました。しかしCCCDを持っている人はわかると思いますが、「DISC」という文字の入ったマークは使われていません。

■参考:CCCD Channel : CCCD (コピーコントロールCD) FAQ


音楽業界の著作権対策


これが生み出されたのは、メーカー側の言い分としては音楽CDの違法コピーが蔓延してきたたため、それを防ぎ著作権を守る仕組みの構築が急務だったが故、このようなコピーの出来ないCDを売り出すことにしたということのようです。

この時期、インターネットの広まりによりWINMXなどのファイル交換ソフトが登場し、違法なやりとりも行われていたのは事実で、それに対しての対策が必要とされていたのは確かです。
この頃のファイル交換ソフトは個人だけではなく、企業がそれを使ってサービスを行っているところもありました。当時代表的だったのはナップスターですね。
ちなみに日本でも「ファイルローグ」というファイル交換サービスが行われ、それに対して訴訟が起こされていました。

■参考:コピーコントロールCD(CCCD)について/@Victor Entertainment
■参考:Napsterとは - 意味/解説/説明/定義 : IT用語辞典
■参考:ファイルローグ裁判、日本MMO側の敗訴が確定


CCCDのリリースがスタート


まず、エイベックスが2002年3月以降に発売される一部のCDにコピーコントロール機能を付加するという発表がなされます。ちなみにこのときの方式は「CDS(Cactus Data Shield)方式」というものだったようです。ちなみに初のCCCD対象となったのはBoAの『EveryHeart-ミンナノキモチ』とのこと。

その後も東芝、ビクター、ポニーキャニオンなど大手レーベルが歩調をそろえるようにCCCDを出すようになり、数も増加してゆきます。
ちなみにSMEはCDSではなくレーベルゲートCDというCCCDを採用していました。

AVEX、パソコンでリッピングできない音楽CDを国内で発売
東芝EMIもリッピングできない音楽Discを5月29日に発売
ビクターエンタテインメント、11月13日よりCCCDを発売
AVEX、5月発売の40タイトル中31タイトルをコピーコントロールDiscに
SMEのCCCD「レーベルゲートCD」が販売開始


そして2003年4月に入ると、CDS方式における生産枚数が一億枚を超えたとのこと。
ただし、積極的な導入を控えたり、全く導入しなかったメーカーも存在し、この頃は両方が混在している状況でした。

CDS採用音楽CDの生産が1億枚を超える。Macrovision発表


CCCDのデメリット


しかし、このCCCDに対しては、ユーザーの反発がかなりのものになっていました。このへんは記憶に残っている方も多いでしょう。
それの理由は主に以下のものになります

ファイル変換出来ない


この頃になると、iPodなどのデジタル音楽プレイヤーが登場してきます。しかしCCCDではそれらで音楽をリッピングして聴くのが必要なのに、それが出来ないことになります。
自分で買ったCDは自分個人で利用する限りリッピングをして聴こうが、CDをコピーして大本をバックアップとしてとっておいてそっちで聴こうが合法です。にもかかわらず、それらの権利を阻害してユーザーの聴き方や利便性を制限させるものとして、不満が高まりました。

余談ですが、レンタルCDショップでレンタルしたCDをコピー、リッピングして個人利用の範囲内で聴く分には合法です。それはすでにレンタル料の中に著作権料が含まれているので(そのファイルを他人に譲渡、配布したら違法)。

レンタル屋で借りてきたCDをコピーしても、原則違法ではない - ゲームミュージックなブログ

※指摘があったので若干追記。上の見解は保証金がすでに支払われているCDやMDなどに対するものでありますが、HDDなどへのコピーは見解が分かれ、HDDやデジタルプレイヤーへの保証金課金の動きもあります。

■参考:音楽関連7団体がiPodなどへの私的録音補償金適用を要望


PCでの再生時に勝手にインストール


CDSはじめCCCDは前述の通り音楽CDの規格から外れるため、Windowsパソコンで聴くときには専用のプレイヤーが必要となります。しかしこのためのソフトはPCに入れるとAutorunで勝手にインストールされてしまう仕様だったのです。これはセキュリティ的にも危険を生み出す可能性があるもので、これが問題となりました(たぶん今ならセキュリティソフトに弾かれる)。

海外ではCCCDの一種、XCPがもとで訴訟沙汰になった事例があります。詳しくは以下に。

■参考:ソニーBMGのrootkit問題はその後どうなったか

ちなみにMac、Linuxにはソフトが対応していないため、CCCDも聴けなかったらしいです。


再生できない&機器にダメージを与える


PCだけではなく、本来再生をするCDプレイヤーにおいても、無事に再生できる保証がなかったようです。というのは、CDプレイヤーはCCCDを想定していないため、単に読み込みが不良のCDを入れたのと同じようになってしまい、それによる動作が機器にダメージを与える可能性があったからです。とりわけポータブルCDプレイヤーやカーオーディオでその現象が多く出たようです。
機器のハードメーカーでは、それについての注意喚起がなされました。
しかし、本来普通に再生できてしかるべしプレイヤーで再生の保証がないことに、ユーザーの怒りが高まりました。

オンキヨー株式会社:サポート>コピーコントロールCDについて


音質の劣化


CCCDでは、従来の音楽CDで出されたものに比べて、音質が悪いということが噂されました。これは技術的なことを考慮してゆくと、理論的には音質がCDでの収録時に比べて悪くなるからです。ただ、音質は聴き手の主観に大きく左右されますし、実際に比較することも難しいのでどこまで違いがあったのかは不明です。

■参考:こらむCCCD
■参考:コピーコントロールの弊害


穴の多かったコピー対策


このような数々の欠点があったにもかかわらず発売を強行されたことで、ユーザーは非常に不満の声が高くなります。
それは当時発展期にあったインターネットのサイト上でも多く行われ、不買の声を上げる人も出てきました。

CCCDに反対する人たちのためのページ

ただ、肝心のコピー防止ですが、たやすく突破されてしまいます。私の記憶だと、CDが出てから数日で、突破の仕方が出ていたような。それどころか何もしていないPCでも読み出せる場合もあったようです。

結局出来る人にはコピーやリッピングができるわりには、普通に使う分には不自由が多いものとなってしまったように思われます。


アーティストからも反対の声


そしてCCCDはユーザーのみならず、曲を作り出すアーティストからも反対の声があがりました。代表的なところでは佐野元春さん(ちなみに氏は日本でかなり初期にiTunes Storeでリリースをしています)。
 

CCCDの衰退


そして、2003年はだいたいそのままCCCDがリリースされていました。ただし、日本はともかくアメリカではユーザーやアーティストの強い反発もありかなり進まなかったようです。前述のXCPのように裁判になった例もあります。

■参考:米国で導入が進まない「コピー・コントロールCD」 - US NEWSの裏を読む:ITpro

そして、国内でも導入開始から2年程度経った2004年後半に変化が起こります。
まず、CCCDに強い推進であり、ほとんどの作品をCCCDで出していたエイベックスが、2004年9月22日以降発売作品に関して、全体への適用ではなく作品ごとにCCCDを採用するかどうかを決定する形にすることが発表されます。ちなみにエイベックスはこの2004年のこの時期、ちょっとした独立騒動や社長交代劇があったのですが、それが上の方針に影響したのかどうかは不明です。

エイベックス、CCCDの採用を弾力化。現場スタッフが採用決定
RIAJ、エイベックス依田会長の辞任を発表

そしてSMEも9月に撤退を発表。

SME、CCCDの「レーベルゲートCD」を終了へ

その後も明言はしないものの事実上の撤退(CCCDでのリリースをしない)は相次ぎ、2005~6年にはほとんど出なくなっていました。

東芝EMIは2005年に「セキュアCD」というCCCDに変更してリリースを続けていましたが、それも2006年の6月以降はリリースされていません。
余談ですが、東芝EMIのうち東芝はその後音楽事業から撤退します(その後EMIミュージックジャパン→ユニバーサル ミュージックグループに買収→EMI Recordsレーベルとなる)。

東芝EMIから東芝が撤退、英国EMIグループの完全子会社に - CDJournal.com ニュース


撤退の理由は?


CCCD撤退の理由は正確には中の人しかわかりませんが、予想するに要因はいろいろあります。まず前述デメリットによるユーザー、そしてアーティストの反発。おそらく制作現場からの反発の声もあったのではないでしょうか。
そして、それにかかわらず音楽CDの売り上げ増加に貢献しなかったこともあるでしょう。
さらに、この時期になるといよいよiPodなどのデジタル音楽プレイヤーが普及し、それが使えないCCCDのほうが見捨てられることになったというのもあるかもしれません。
あとは、CCCDにこだわるより、音楽配信のほうに力を入れたほうが効率的と考えられた可能性もあります。

しかし、メンツなどで突っ走らないでここで止めていたことに関してはよい判断だったと思います。もしこれ以上続けていたら、おそらく今の音楽CD市場は不況と言われる今よりもっとひどく、壊滅していた可能性もあると思うので。


CCCDの現在


さて、CCCDの現在ですが、前述のように全くリリースされておりません。ただブックオフなどの棚でたまに混じって安値で売っているのを見かけることもあります。

問題は、このCCCD推進時期にリリースされたCCCD音楽ソフトなのですよね。CCCDは規格から外れたものですので、今後の再生機器で再生できる保証はありません。なので10年後には再生できる機器がなくなっている可能性もあります。また、エンコードも出来ないのでMP3プレイヤーにも残せず、ある意味音楽の歴史から浮いてしまった状態になっているのですよね。その後音楽CDとしてリリースされ直したものもありますが、それから漏れているものもあります。CCCDが残した問題ですね。

ソニー、CCCD仕様で発売していた105作を通常CDで再出荷に - CDJournal.com ニュース


CCCDの遺したものとは


CCCDが残したものはいった何なのでしょう。本当に何らかのメリットがあったのでしょうか。

まず、売り上げの向上には全くといっていいほど影響はなかったようです。2003年の年間TOP10のうちCCCDは1枚(浜崎あゆみの『A BALLADS』)のみで、TOP20でも4枚だけだったとのこと。

■参考:2003年 年間CDシングル/アルバム/トータルセールス/DVD/カラオケ/作詞家・作曲家・編曲家 ランキング

コピー対策として成功したかどうかですが、これも確たるデータがあるわけではないのでわかりません。
ただ、個人的なことを言わせてもらえば、私はCCCDは一枚も買いませんでした。よほど強く欲しいものならともかく、どうしようかな、まあ買うか程度のものだと、CCCDというだけで拒絶反応が出て、買わなかったのですよね(運良くどうしてもほしいCDはCCCDで出なかったのですが)。おそらく同じように思った人はいるのではないでしょうか。

CCCDが音楽市場にどのように影響したのかは不明ですし、わかる方法はなかなかありません。ただ、もし習慣的に音楽CDを買っていた人が、これを境に買わないという逆の習慣をつけてしまったとしたら、結果的にCDの売り上げを減らしてしまったことになります。そうなると非常に皮肉な結果だと思うのです。


著作権はたしかに大事ですし、それを守る仕組みも大切でしょう。しかし、そこからユーザーを置き去りにしては成功しないと考えます。一番多いのは音楽を聴くユーザーなのですから。


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参考

コピーコントロールCD - Wikipedia